バツイチ独身のライター・オバ記者(64歳)が、趣味から仕事、食べ物、健康、美容のことまで“アラ還”で感じたリアルな日常を綴る人気連載。250回目となる今回は、2年前に亡くなった愛猫・三四郎について。
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2年前に亡くなった愛猫「三四郎」が恋しい
いきなり泣き言言ってもいいですか。このところ、2年前に19歳で亡くなった愛猫、三四郎が恋しくてたまらなくなるんです。ヤツと15年間住んだ文京区のアパートはエレベーターのない4階建ての4階。いつでも出入りできるようにドアを薄く開けているのに、それでもドアの前まで上がってくると「にゃ~っ」と鳴くの。そうすると私はお風呂場に飛んでいって濡れ雑巾を用意して、奴をむんずと抱き上げ、肉球をひとつひとつ拭いていく。
その時の奴を抱えたときの体の感触や、肉球の手触りがよみがえってきて、もう、たまらんのですよ。
今のマンションに帰ってくると、とっさに奴がいた時のように「三四郎く~ん」と声をかけようとして、「さ」で引っ込めたりして。奴はもうこの世にいないという現実。これが今ごろになって私に迫ってきて、どうにもこうにも。28歳で離婚して、その後、ちょっとだけ暮らした男がいたけど、30歳の前にきれいさっぱりのひとり暮らし。それを特に寂しいと思わなかったんだけどね。
画家の個展で「三四郎」の絵を発注
そんな気持ちでいたときに、日本橋丸善で、画家・松沢真紀さんの個展が開かれ、3階のギャラリーに入って数分後には三四郎の絵を発注しちゃった。絵はヤフオクで買ったことはあるけど、注文したのは初めてよ。てか、絵を描いてもらうなんて、直前までまったく頭の片隅にもなかったもんね。
「真紀ちゃんの個展あるけど、行く?」と幼なじみのF子に誘われて、「丸善で? 大したもんじゃない。行こ行こ」って、軽いノリだったの。
そもそもF子は私の中では“美術部の女”なのよ。海外も含めていちばん一緒に絵画展に行っている友だちで、絵や彫刻、陶芸の面白がり方が似ているんだよね。
そのF子が数年前に、池袋の東武百貨店でグループ展をしていた松沢さんのバラの絵を、いきなり2枚買ったと聞いたときはビックリした。その後、会社員だったF子は退職記念に肖像画を描いてもらったとか。
目の玉が飛び出るほどじゃないけれど、金の指輪くらいは買える値段だ。身近に置く絵は、どちらかというと具象より抽象が好きな私は、正直、「買うほど?」と思ったけど、画廊で会う松沢さんの佇まいはものすごく気になったのよね。
松沢さんは女子美大で賞をとった賞金がパリ留学だったと言うから、「パリで何してたの?」と聞いたら、「毎日、ルーブルが開くと同時に行ってずっと模写していましたね」って、地味な顔で地道な答えが返ってきたの。
そういえばルーブルって行くたび、世界の名画の前にイーゼルを立てて模写している人がいるのよね。日本の西洋美術館とか近代美術館では、ありえないから印象に残っていたけど、そうか、あれをしていたのね。しかし彼女の話し方から着ている服から、ここまで画家気取り、アーティスト気取りがない絵描きさんに会ったことがないわ。
で、三四郎の絵だけどギャラリーで出来上がりを見たとたん、込み上げてきちゃった。奴の凶暴な性格や、終生、奴に張り付いていた孤独感まで滲み出ていて。そうか、画家ってその姿形から魂を描くんだねと思ったら、鼻の奥が痛くてたまらなくなくなっちゃった。
お裁縫熱が復活してバッグ&巻きスカートが完成
F子が“美術部の女”なら、“家庭科の女”の友だちもいる。料理とお裁縫の話をする9歳年上のK子さんだ。かつては一緒に布の街、日暮里へ行って、出来あがると自慢メールを送り付け合ったりしていたっけ。
でも、しばらくお裁縫熱は冷めていたのに、先週末うっかりバッグを作ったら、勢いづいてこんな巻きスカートまで完成!
“家庭科の女”はさらにヒートアップして、YouTubeを見ながら野菜料理のレパートリーが増えること、増えること。おすすめはきゅうりに味ぼん、潰しニンニクを混ぜてビニール袋でひと晩の、きゅうりの漬け物よ。
で、遠くから「いつ“国語の女”になるんだ?」と声が聞こえてきたような…。さあ〜て、今夜は何ができるかな。
オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。一昨年、7か月で11kgの減量を達成。
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