
小泉進次郎農水大臣が就任してから、圧倒的なスピード感でスーパーやコンビニに備蓄米が並び始めた。お米の価格高騰が続いたこの数か月間、店頭に並ぶお米にも少し変化があるようだ。オバ記者(68歳)が”米騒動”の現場について綴る。
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カリフォルニア米、韓国米も!
秋葉原のうちの近所にはスーパーが3軒あっていちばん近いのが『M』。そして方向違いで『L』と『N』がある。で、ある時から肉を買いに行っても野菜や調味料を買っても必ず立ち寄るのが米売り場よ。スーパーの米対策がそれぞれだから目が離せないんだわ。たとえば値段をボンと上げたのが『L』で、今3500円前後だった国産米が4700円になっていて腰を抜かした!
が、別の意味で腰にきたのが『N』だね。ここにカルフォルニア米が並んだのを見つけたのが3月。そしてその3か月後に見ると10kgの韓国米が積み上がっていたの。

米不足で大量にタイ米を輸入したのは何、1993年? あれから30年もたつの? あの時30代後半だった私がいまや68歳のアラコキ女って、いやもう米不足以上のショックよ。ま、それはともかく、あの時はタイ米をバサバサだの、米の味がしないだのとさんざん悪態をついたっけ。だけどタイ米は細長くて明らかに私たちの知っている“お米”とは違う顔つきをしていたから心理的な打撃は少なかったんだよね。
“似て非なる米”への違和感
今回のカルフォルニア米も、「日系人が作って広めたジャパニーズライス」と思って見るからか、まぁ、アリか、と思える。だけどなぁ。韓国米は違和感しかないんだよ。米の顔つきもコシヒカリと変わらないし、そのうち中国米も入ってきて、「上海米より杭州米がうまい」なんて言うようになるのかしら、と、思っただけで口の中が苦くなる。決定的に違うものより似て非なるもののほうが、大事な何かを踏みにじられるような気がするのかしら。韓国で食べた水キムチや冷麺、焼き肉の旨さといったらないし、上海の鶏の丸焼きも明日にでも食べに行きたいくらいうまかったのよ。でも米の味は、ダメだ、思い出せない。
それにしても政府の力ってすごいよね。小泉進次郎農水大臣が、「備蓄米を放出する!」と言ったら、数日後にはスーパーに白米がドーンと積み上がったもんね。どこかの誰かが夜を徹して精米機をフル回転させたに違いないと気になって仕方がなかった。

これもあれも、とどのつまりは国の舵取り、政治なんだよね。米不足も米あまりも農政の悪手のせいよ。それとは直接関係ないけど今まさに東京都議会選挙の真っ只中、ちょっと時間があると街頭演説を聞きに行っているの。
『再生の道』の当選者予想人数はゼロ?
「お調子者」と笑いたければ笑え。実は私、2016年の小池百合子都知事の初当選の時も街頭演説の追っかけをしていたの。「緑の物をなにか身につけて来てくださ〜い」という彼女の声が今も耳の奥に残っているよ。続く彼女がつくった『都民ファーストの会』の候補者の演説も聞きに行っている。そしてあれから9年。今、吸い寄せられているのは産声をあげたばかりの『再生の道』なんだよね。
『再生の道』は昨年の都知事選で165万票を集めた石丸伸二氏がつくった政党で、ここから42名の新人が都議会議員に名乗りをあげたのよ。しかし、これぞ令和だなと思うのは、石丸氏を知らない人はまったく知らない。でもネットの中では超有名人。その落差の激しさが私の何かを刺激するわけよ。何かとは何か。ああ、わかった! とうに卒業したはずのギャンブラー魂だ。

小池百合子さんの時は、最初は不安があったけれど、途中から聴衆の集まりを見て、「これは勝つな」と思ったの。おかしなものでギャンブラーってこうなると興味を失うのよ。だけどマスコミが発表する『再生の道』の当選予想人数はなんとゼロ! なのに心配して街頭演説を聞きに行くと「えっ?」というほどの大観衆。これがたまらんのですわ。
「ずっと変わらないもの」とは?
とはいえ私だっていつも心で半丁博打をしているわけではないのよ。変わらない趣味と人付き合いも大事にしている。そのひとつが鉄仲間よ。20年前から某大会社の鉄道愛好会の隅っこに混ぜてもらっていて、この日は都電を貸し切りするイベントだったの。あいにく都電には乗れなかったけど、午後からの飲み会には顔を出して、相変わらずの「乗り」だの「撮り」だのマニアックな話を聞く。これが新鮮なんだよね。上京してからほぼフリーランスで過ごしてきた私は、大会社で生きる人々がまぶしくてたまらないの。
ずっと変わらないものといえば、ダンス教師のM美がそう。彼女は10日年下の従姉妹で、私の実父の弟の娘なのよ。実父も伯父もとうの昔に亡くなっているけど、ある事情からM美とは学齢前の1年近く、うちで同居していたんだよね。その時、忘れられないのは駅の階段なの。M美は当たり前のように右、左と一歩ずつ足を伸ばしてスタスタと階段を降りて行く。それに続いて私も、と思うんだけど、階段から転がり落ちそうで足が前に進まないのよ。とうとう階段の手すりにしがみついてひと足ずつ降りて行った時の屈辱といったらない。

「へぇ、ぜんぜん覚えてないわ。ヒロコはそんなこと思ってたのね」とM美。のちに社交ダンスの競技会で名を馳せる人は幼少期から違うんだね、なんて昔話をできる人は今やM美ひとりだけだ。
そうなんだよね。動かない関係の人がいるから、後先わからない今を楽しめるんだね。そんな当たり前のことをあらためて感じた1週間でした。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【365】石丸伸二氏の街頭演説に多くの人が集結!国会を間近で見てきたオバ記者が綴る“政治の面白さ”「政治家は“一線を超えた”人たち」