美容医療というと、手術をして切開をして…など、少し怖い、またそこまではしなくても…と思っている人もいるかもしれません。
けれど今は、入院せずに外来で十分な効果を得られ、メスを入れなくてもいい治療で悩みを解決している人も多いそうです。そこで、医学博士で銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子先生に、日帰りの施術ではどんなことをするのか詳しく教えてもらいました。
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手術不要。日帰り治療でたるみをリフトアップ
美容医療と聞くと、女優さんやモデルさんなどが行うもので、一般人にとってはハードルが高いなんてイメージを持っているかたもいるかと思いますが、実は今かなり身近なものになっています。
早めにアンチエイジングをスタートしてメンテナンスをすれば、肌をきれいに保つことができますよ。まずは顔をリフトアップする、針を使った系治療をご紹介します。
手術をしなくても、レーザーと注射で肌にハリが出る!
顔のたるみに悩むかたは、「ウルセラ」などのリフトアップ効果の高い照射機器でハリを取り戻し、リフトアップさせるテクニックとしてボトックスを真皮に浅く注射し、リフトアップポイントやへこみにヒアルロン酸を入れるという施術で、輪郭を美しく整えます。
さらに効果を高めたいかたは、ほほの頬部じん帯に溶ける糸(生体吸収糸)を入れて、じん帯を支えることでリフトアップ効果を高めることもできます。
針の治療ってどんなもの?
針を使い糸を入れる、というと想像がつきにくいかもしれませんが、例えば当院の「カニューレスレッドリフト」という施術は、こめかみの下あたりに小さな針穴を開けて、先端が丸く長い針を挿入します。針にはとげのある溶ける糸が入っているので、針を抜くと糸だけが残ります。局所麻酔と痛み止めをしてから行うので、施術中の痛みは我慢できる程度です。
糸は医療用の溶ける糸なので、約10か月で体内に吸収されますが、糸の周辺はコラーゲン密度が高まるので、リフトアップ効果やハリが持続します。固定力を高めるために、左右に4~6本ずつ入れます。
針の先端が丸くほとんど内出血も起こりづらいです。施術後の1週間は顔の中で少し糸が動くこともありますが、皮膚の深いところに入って安定するので、中に入った糸によって見た目に違和感が出る心配もありません。費用は片側4本ずつで当院では17万円ほどかかります。
レーザーと針を組み合わせる理由
50代以降のかたには、ウルセラなどのリフトアップ照射やヒアルロン酸の注入をしてからスレッド治療をすることをすすめています。特に痩せ型で皮膚が薄い人に針を使って糸を入れるのは、かなりリスクがあるんです。
それは、皮膚が薄くたるんでドレープ状になっているところに糸を入れ引き上げると、ギャザーが寄ったようになり、不自然なシワができてしまうことがあるからです。そういったことを避けるために、当院では、まず伸びたコラーゲン線維を照射治療で縮め、たるみを改善してからでないとスレッド治療は行っていません。
また、たるみの施術に欠かせないのは萎縮したボリュームを補うヒアルロン酸を注入です。ヒアルロン酸を入れると皮膚にコラーゲンが増えて肌の厚みがだんだんと増し、肌の調子もよくなるので、ここで満足される患者さんも多いです。それでもさらに気になるたるみが残っていれば、スレッド治療にステップアップします。
“顔の脂肪”は手術ナシでも改善できる!
ぷっくりとした頬に悩む人も、治療なしで改善できることが多いです。
メスを入れる治療は必要?
「バッカルファット」(ブルドッグ顔・頬のたるみ・ほうれい線の原因である脂肪の塊)の除去手術や脂肪吸引を検討されるかもしれません。
脂肪溶解注射とリフトアップマシンならメスいらず
私はまず、脂肪溶解注射から始めることをすすめています。これならダウンタイム(術後から普段通りの生活に戻るまでの期間)もほとんどないですし、1~2週間ごとに3回の施術でフェイスラインがかなりコンパクトになります。それからリフトアップマシンで引き締めれば、さらにシルエットがよくなります。
メスを入れる必要があるお悩み「眼瞼下垂」
逆に、手術をしなければならない症状もあります。どんなものか、一例をご紹介します。
眼瞼下垂は手術が必要なケースが多い
メスを入れなければならない、という症状で最初に浮かぶのは、眼瞼下垂ですね。上まぶたがたるんで下がり、瞳が半分くらいまぶたに隠れてしまっている状態を指します。黒目の瞳の中ほどまでかぶさっていたら、手術が必要になります。
二重整形の手術と同じようにまぶたを切開し、さらに眼瞼を挙上させる処置を行うので、医師の腕によっては仕上がりが不自然になってしまうことがあります。そのため、形成外科の専門医で、かつ美容の経験もある医療機関に相談するのが安心ですね。自費治療になるか保険適応になるかは、症状によります。
重症化する前に気づけば手術は不要?
眼瞼下垂は切らずに「ウルセラリフト」や「サーマクールFLX」といったレーザー治療や、額にヒアルロン酸を注入して引っ張り上げることでも改善が期待できます。
→「ウルセラリフト」「サーマクールFLX」について詳しく知る
けれど、重症化しているかたには、手術をおすすめしています。実際に、手術を受けて結果に満足しているかたも多いですよ。
眼瞼下垂のリスク因子の一つはコンタクトレンズ(ソフト・ハード)の長期使用です。さらに、自まつげより重い、まつ毛エクステやつけまつ毛はもリスクになります。眼瞼下垂の徴候があるかも…と思う人は、マスカラのみに切り替えるなど対策をしましょう。まつげ育毛剤を取り入れれば、ボリュームを増やすこともできます。
美容手術のデメリットについて
手術と聞くと、照射や注入と比べて、より高い効果を得られるというイメージを持つかたも多いかもしれません。けれど、ダウンタイムも大きくなります。
フルフェイスリフトでまとめて手術はアリ?
一部分だけでなく、顔全体の衰えをまとめて解消する「フルフェイスリフト」の手術を希望するかたもいますが、想像しているよりも大工事なんです。
フルフェイスリフトの懸念点
ほうれい線のすぐ横くらいまで剥離するので、血腫がたまらないように固定が必要です。腕の良い美容外科医がどんなに気をつけて手術しても剥離する過程で神経が傷つき、感覚鈍麻が生じることはありえます。1~2週間のダウンタイムも必要です。特に技術による仕上がりの差が大きいので、手術の決断をした場合は、経験豊富な医師に任せましょう。
最初から手術に踏み切らず、医師に相談を
始めからいきなり手術に踏み切るのではなく、いったん注入や注射、照射を試してみるのもおすすめです。切るべきお悩みはしっかり手術をすすめ、不要な手術はすすめない信頼できる医師に相談してみましょう。
50代からはとくに結果が分かりやすいので、美肌治療のはじめどきです。もしお悩みがあれば、一度美容クリニックでカウンセリングを受けてみることをおすすめします。
教えてくれたのは:皮膚科医・慶田朋子さん
銀座ケイスキンクリニック院長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医で医学博士。東京女子医科大学医学部医学科卒業。同大にて皮膚科助手、美容クリニック勤務などを経て、銀座ケイスキンクリニックを開設。メスを使わないエイジングケアをモットーに医療機器や注射によるナチュラルな若返りに定評あり。食と美容、健康など幅広い知識を持ち、現在は雑誌やテレビでも活躍。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)、『365日のスキンケア』(池田書店)などがある。銀座ケイスキンクリニック
構成/イワイユウ