健康・医療

将来のお金の不安を解消するために、まずすべきシンプルな考え方

終わりが見えないコロナ禍、先行きが見えない現代。「もしボーナスがなくなったら?」「さらなる不況に備えて支出をセーブすべきでは…」などと、お金の不安を漠然と抱えている人も多いでしょう。

食卓でノートをつけながら困った顔の女性
お金の不安を解消する方法とは?(Ph/Getty Images)
写真4枚

ただ、不安が強いあまり、不必要に食費を削りすぎたり、楽しみを制限したりしていては、ストレスが溜まって、ますます暗い気持ちになりそうです。

では、お金の不安や悩み、ストレスを和らげるためには、どうしたらよいのでしょうか。

『あれこれ気にしすぎて疲れてしまう人へ 精神科医30年のドクターが教える傷ついた心の完全リセット術』(徳間書店)で、お金の不安などを解消する方法について解説した精神科医の清水栄司さんにアドバイスをいただきました。

最悪のパターンと最良のパターンを考える

清水さんは、こう話します。

「不安を一掃しようと思っても、不安をゼロにするのは、非常に難しいですし、不安は誰でもあるものなので、ゼロにする必要もありません。また、不安はなくそうとすると、かえって大きくなる性質もあります。それよりは、不安とうまく付き合ってみるほうが現実的です」(清水さん・以下同)

その方法の一つは、まずお金に関する“最悪のパターン”と“最良のパターン”を考えることだと言います。

「借金を重ねる」「宝くじで1億円」

「あなたにとって最悪の状況は、どんなことですか? ここでは仮に、『夫婦ともに勤務先が倒産して次の仕事も見つからない。家のローンを払えなくなり、貯蓄も底を尽き、借金を重ねるようになり、1億円まで負債が膨らんだ』という事態を最悪のパターンとしましょう。本当に悪夢のような出来事ですね。

次は頭を切り替えて、その真逆である“最良のパターン”を想像してみてください。仮に、『1億円の宝くじに当選して、あくせく働かなくても生きていけるようになった』としましょう。夢のような出来事ですね」

最悪と最良の間にあることはすべて想定内と考える

こうして、最悪のパターンと最良のパターンをイメージしたうえで、こう考えるのです。

「『ワーストより悪い状態にはならない。つまり、ワーストとベストの間に起こりうることは、すべて想定の範囲内である』と。想定内の出来事は、それが起こった時に対処すればよいのだから、今は心配しなくても大丈夫なわけです」

預金通帳を開いて眺める女性
心配してもしょうがないこともある?(Ph/Getty Images)
写真4枚

心配することをやめる

「不安というのは、『ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう」と、毎日あれこれ心配し続けることで、余計に強くなってしまう性質があります。ワーストとベストの間にも、もちろん100とか200とか、それこそ何通りものパターンがあるわけですが、そのすべての場合に応じた対処策を今から考えると、不安は強くなるうえ、肝心の脳が疲れ切ってしまいます」

そのため、不安とつきあいやすくするには「心配することをやめること」だと、清水さんは結論づけます。最悪と最良の間にある起こりうるゾーンについてあれこれ心配するより、今は放っておくこと。それによって、不安を和らげることが十分に可能なのです。

「お金に関する不安はみな抱えている」と知る

また、「自分だけが不安な思いをしている」と考えないことも、大事だといいます。

「人間の本能」と割り切るのも手

「お金に関する不安は、預貯金が多い人や世帯年収が高い人でも持っているものです。ここで参考になるのが、アメリカの行動経済学者であるダニエル・カーネマン博士らによる『プロスペクト理論』。ざっくりいえば、『私たちは、手に入れることより失うことを過大に評価し、損失を回避しようとする傾向がある』という理論です。

要するに、私たちはどんな経済状況であろうと、生来、損することに対して異様な恐怖心があるのです。ならばいっそ、お金に関する不安を持つのは人間の本能だと考えて、割り切るのも手です」

マグカップ片手に、ソファに座ってノートパソコンを眺める女性
解消できない不安は手放して今楽しめることに打ち込むと気持ちはラクに(Ph/Getty Images)
写真4枚

お金で損することを不安に感じるのは、自分の気持ちが弱いからでもないし、特別なことではない。そう思えば、少しはラクになるはず。クヨクヨと悩む時間を取るより、今の自分自身が楽しめることをしたり、考えたりした方がよほど健康的です。

お金のことを心配するのをやめる。そのうえで、今を楽しみましょう。

教えてくれたのは:精神科医・清水栄司さん

精神科医・清水栄司さん
清水栄司さん
写真4枚

千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学教授、医学部附属病院認知行動療法センター長、子どものこころの発達教育研究センター長も務める。千葉大学医学部卒業。千葉大学医学部附属病院精神神経科、プリンストン大学留学等を経て、現職。著書に『自分でできる認知行動療法 うつと不安の克服法』(星和書店)などがある。

●片付け上手になればお金が貯まる!? 片付けのプロが実践するスーパーでの買い物術

●意外と知らない「年金制度」を解説。老後に備えるiDeCoや個人年金保険などのキホン

関連キーワード