話しかけても反応の鈍い夫…。そんな彼の対応に、一緒に生活していても孤独を感じることはありませんか?
そんな夫と良好な夫婦関係を作っていく方法を、ベストセラー『夫のトリセツ』(講談社)の著者で脳科学・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんに教えてもらいました。
【相談】
「夫は仕事が忙しく、休日出勤もたびたびあり、その状況はコロナ禍でも変わりません。そのため家事や育児はほとんど私ひとりで行い、夫とゆっくり過ごしたことはありません。夫は自営業で定年がなく、子供の手が離れてもずっとこのような状況が続くと考えると、夫と一緒に暮らす意味があるのかわかりません」(51才・会社員)
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離婚を切り出す言葉1位は「一緒にいる意味が見い出せない」
以前、ある雑誌で、離婚した女性たちに、「夫に離婚を切り出すときの“最初のセリフ”を教えてください」というアンケートをとったことがありました。このときの第1位は、「意味がわからない」でした。
「一緒にいる意味がわからない」「あなたと暮らしていく意味がない」「2人でいる意味がなくなった」などと、結婚の意味を見失ったことを訴えるケース。あるいは、「私たちの結婚って、意味があるの?」「あなたにとって、私(この家)は何?」などと意味を問うもの。この2つを合わせると、ダントツだったのです。
私は、このご相談を読んで、胸が痛くなりました。
冷静な文章をお書きですが、相談者の絶望は、ご本人の自覚以上に深く、きっとご本人が想像するよりずっと離婚に近い場所にいます。今手を打たなければ、ある日ふと、取り返しがつかない場所に来ていることに気づくことになるはず。
なのに、きっと夫は、全然気づいてもいないから。ぜひとも、夫にこの記事を読んでもらってください。
「共感」がなければ1人でいるより孤独と感じる
相談者のかたは、「夫とゆっくり過ごす時間」がないとおっしゃっていますが、寂しさの本当の原因は「共感」がないことなのではないでしょうか。
ひとりぼっちで家事をして、ひとりぼっちで子育てもしてきた。「今日は天気がよかったからシーツがパリッと乾いたね」とか「この味噌汁は格別だね」とか「あの子は作文のセンスがいいよね」なんて言い合ったことがない。それが寂しいのでは?
でもね、長い時間を共にしたって、たいていの夫は、そんな会話が交わせやしません。
出かけようとすれば「どこに行くんだ?」、家事をする手を見て「そんなに水を出したら勿体ないだろう」なんて言うのが関の山。置きっぱなし、脱ぎっぱなしを注意しても、うるさがるだけ。世間話をしてあげても上の空。あげく、「きみも悪いよ。こうすればよかったんだよ」なんてアドバイスをかましてくる。
口を開けば、腹が立つことばかり。共感してくれない夫なら、いないほうがマシ。2人でいるのに、1人でいるより孤独、と感じる妻もたくさんいます。
一緒にいる時間が少なくても、日々のなんでもない話を温かく交わせる夫、悲しみや喜びに深い共感をくれる夫なら、女性はけっして手放すことはありません。なぜなら、女性は、「共感しあうことこそが、人と一緒に生きる意味」だと知っているからです。
実は、「時間」じゃなくて、「共感」が足りない。
まずは、そのことの気づきから、はじめましょう。
そして、共感対話ができる夫婦になることです。夫に時間がなくても、夫婦の対話は成熟させることができます。そうしたら、きっと、かけがえのない夫になっていくはず。