ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(64歳)が、今年8月から茨城の実家で始めた93歳「母ちゃん」の介護について綴る。ほとんど寝たきり状態だった要介護5の母ちゃんは、今では歩行器を使って外を歩けるまでに回復。しかし、3か月続いた介護生活でオバ記者のストレスは限界に。そんなときにとった行動とは?
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あごに白いひげが!
なんでもそうだけどやってみないとわからないもんね。93歳の母親の介護を始めて私の”評判”がすこぶる悪くなるとはゆめゆめ思わなかったわ。
幼なじみのT子は、待ち合わせ場所で私の顔を見るなりぷいと横を向くから何かと思えば、「やだ、顔が険しい!」と言うの。地元の友だちにその話をすると、「介護している人はみんなそうだよ」と、否定しないんだわ。きっとずっとそう思っていたんだよね。
自分の顔が険しいかどうか、まったく鏡を見ていないからわからない、ってか、64歳の女が鏡を見なくなったらどうなるか。先日、夜中にふとあごをなでてたら、指先に長いヒゲが1本からむんだわ。気になって鏡をのぞいたら、な、なんと1cm以上! しかも見事な白髪なの。
これに気づかない暮らしってどんなよ? わがことながら恐ろしくなってしみじみ考えちゃった。そりゃあ、トゲトゲしい顔になるわよね。
食事中でも「トイレ!」
朝のルーティーンワークはというと、朝7時前に起きたら、まずカーテンとガラス戸を開けて、部屋の空気を入れ替え、母親にホットタオルと白湯を渡す。それから食事と薬の用意をして、お膳を出して、母親ひとりで食事。
最近は「ヒロコも一緒に食っちめ」と言うから、同じテーブルで朝食を食べていたけど、実はこれが間違いのモトだったんだよね。
食事の途中で、「トイレ!」と”鶴のひと声”がかかったら万事休す。何はさておき、母親をポータブルトイレの前に連れていってパジャマとオムツパンツを同時に引き下げると、その後はごく普通の用足しだ。
で、終わると速やかに事後処理をして、トイレの中をなるべく見ないようにフタをして、母親を再びテーブルにつかせる。私も何ごとも見なかったことにして、食事を……ってできるかって!