「食事中にお茶を飲むことが増えた」「口臭がキツくなった気がする」といったことが気になり始めたら、それは秋冬に増加するドライマウスの影響かもしれません。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、暮らしの中や食事で唾液の分泌を促す工夫をすることで、ドライマウスを和らげることができるそうです。そこで、ドライマウスを防ぐ生活習慣やおすすめの食材、効果があるとされている漢方薬を教えてもらいました。
* * *
ドライマウスとは?症状と原因
ドライマウスとは、唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥している状態を指します。緊張などで口が乾燥することはあるかもしれませんが、一時的であれば問題はありません。しかし、慢性化すると口臭をはじめとするさまざまな症状があらわれてくるため、注意が必要です。
ドライマウスによる症状
ドライマウスでよく見みられる症状は以下のとおりです。
・口内がネバネバする
・口臭が強くなる
・食べ物が飲み込みづらい
・むせやすい
・滑舌が悪くなる
さらに、ドライマウスの症状が慢性化した場合には、虫歯や歯周病、舌のひび割れや痛み、味覚障害、発音障害などがあらわれるケースもあります。
ドライマウスの原因
ドライマウスの原因はさまざまですが、主な原因は以下の7つです。
・脱水
・咀嚼(そしゃく)不足
・ストレス
・更年期障害
・老化
・薬の副作用
・糖尿病など他の病気の影響
秋に症状が出るドライマウスは、花粉症や風邪で鼻がつまることや、空気の乾燥が原因の場合もあります。さらに、マスク生活により増えがちな口呼吸も口の乾燥につながります。症状が長く続くようであればドライマウスを疑ってみましょう。
ドライマウスを改善する生活のポイント
ドライマウスを改善するには、唾液の量を増やすことが必要になります。そのためのポイントが「咀嚼」と「リラックス」です。
咀嚼を意識する
咀嚼で舌やあごの筋肉をよく動かすと唾液の分泌が促され、ドライマウスの改善に役立ちます。咀嚼を意識して食事することはもちろん、「噛める食事」を用意することも重要です。
パンよりもご飯、ポタージュより具だくさん味噌汁、ハンバーグよりも生姜焼き、というように、食材の形が残った料理を選ぶと、咀嚼の回数を増やすことができます。
リラックスする
イライラ、緊張、興奮、不安などのストレスは唾液の分泌を抑え、ドライマウスを深刻化させるといわれています。ストレスは回避するのが一番ですが、それが難しい場合はできるだけため込まないようにしましょう。
例えば、没頭できる趣味を持つ、ゆっくり入浴する、お気に入りの音楽やアロマを楽しむ、散歩や軽い運動をするなど、自分に合った方法を見つけてみてください。
ドライマウスの改善を期待できる栄養素・食べ物は?
ドライマウスで意識したい「唾液の分泌」と「ストレスの緩和」は、普段の食事からもアプローチできます。これらの効果が期待できる食材はいくつかありますが、特におすすめの3つを紹介します。
レモン
レモンの酸味は唾液の分泌を促します。これは体のシステムが、腐敗しているなどの危険な食べ物に多く含まれる強い「酸」を唾液で洗い流すようにできているためです。
また、レモンの香り成分にはリラックス効果があることが知られています。レモンに含まれるリモネンという香り成分には気持ちを落ち着かせる鎮静作用があるため、ストレス緩和にも役立ちます。
意外と知られていないのが、レモンは冬が旬だということです。国産レモンの収穫時期は9月~3月のため、この時期には国産の新鮮なレモンを購入できますよ。料理に添えてもいいですし、塩レモンなどに加工して常備してもいいですね。
昆布
昆布は、唾液分泌を促す効果とストレス緩和の両方が期待できる食材です。昆布には、カルシウムがたっぷり含まれています。カルシウムにはストレスを抑え、精神を安定させる作用があるといわれるため、イライラの解消、ストレス緩和の効果が期待できます。
加えて、昆布に含まれるうま味成分のグルタミン酸は、唾液の分泌を増やす働きがあることで知られています。
昆布には加工品が多いので、工夫次第で簡単に食卓に取り入れられます。みそ汁や鍋を作るときに昆布でだしをとったり、切り昆布を煮物にしたり、とろろ昆布をふりかけのように使ったりなど、ぜひ工夫しながら取り入れてみてくださいね。
雑穀
白米などの歯ごたえが均一なものは、咀嚼が少なくなりがちです。白米に雑穀を混ぜることで歯ごたえが増し、咀嚼回数を増やすことができます。
雑穀が混ざっていると、プチプチ、モチモチとひと口でさまざまな食感を楽しめます。雑穀にはたくさんの種類があるので、いくつか試して好みのものを見つけるのもおすすめです。
ドライマウスにお悩みの方には漢方薬もおすすめ
食事や生活習慣に気をつけているのにドライマウスが気になるときには、漢方薬をのむという方法も選択肢の1つです。漢方薬は体の中の水分代謝を整えることで唾液の分泌を正常にし、ドライマウスを改善していきます。漢方薬は、口腔外科や歯科でもドライマウス治療のために用いられています。
さらに、ドライマウスによる口臭や味覚障害などの症状を抑えるだけではなく、自然治癒力を高めることで心と体の理想の健康を目指せます。
ドライマウスにお悩みの方におすすめの漢方薬2つ
・五苓散
五苓散(ごれいさん)は水分代謝異常によって起こるドライマウスやむくみに用いられる漢方薬です。また乗り物酔いや二日酔いなどにも応用されます。
・猪苓湯
猪苓湯(ちょれいとう)は口の渇きがあり、排尿がしづらいときに用いられる漢方薬です。膀胱炎や尿道炎などにも応用されます。
漢方薬を取り入れるときに気を付けたいこと
漢方薬は、繰り返す不調に対して根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。自然由来の生薬を組み合わせて作られているため、西洋薬に比べて副作用が少なく、体に優しく働くといわれています。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることも。服用の際は自分に合う漢方薬を見つけるために、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
自分にあった方法を取り入れ、ドライマウスの症状を改善して、毎日を快適に過ごしましょう!
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん
おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。現在は「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。