「ドライアイ」というと、「目が乾く」イメージがあり、目薬で潤いをプラスする人も多いでしょう。実はドライアイの正確な定義は、「目を保護している涙が乾きやすい状態」のこと。ドライアイを放置しておくと、視力が低下することもあるため、対策をした方がいいと言われています。話題を呼んでいる新書『眼科医だけが知っている 一生視力を失わない50の習慣』(SB新書)の著者で眼科医・平松類さんに、ドライアイの症状と対策について解説してもらいました。
ドライアイを見分ける方法とは?
そもそも、自分がドライアイかどうか、自覚する方法はあるのでしょうか。
「もちろん眼科医の診断が一番正確ですが、もし自分で簡単に見分けるなら、まばたきを12.4秒間、我慢してみてください。途中でまばたきをしてしまったら、82.5%の確率でドライアイといえます。ドライアイの人ほど涙を作るためにまばたきをしようとするからです。まばたきによって上まぶたと下まぶたが重なり、眼球の一番外側にある角膜が刺激され涙が分泌されるのです」(平松さん・以下同)
ドライアイは目が疲れやすく見えづらい
ドライアイの人は、目が乾きやすいというつらさだけでなく、健康な目の人に比べて目が疲れやすく、見えづらくなるのも問題です。
「ドライアイの人は視力が低下します。ここでいう視力とは、視力検査で瞬間的に測る視力ではなく、1日の時間帯や目の使い方で変動する視力を継続的に測る『実用視力』です。例えば、1日中パソコンに向かったあと、目が見えづらくなると感じたら、危険信号。ドライアイの人は、涙の質が良くないため、少し目を使うとすぐに疲れてしまい、見えづらくなるのです」
ドライアイの対策は、目を温めること
では、どう対策をしたらよいのか。その前に、ドライアイはどのようにして起こるのか、メカニズムを知っておきましょう。
「私たちの目を乾燥などから守るのは、涙。まるで透明な皮膚のように、目を保護する涙の質が、ドライアイかそうでないかを左右します。
涙の成分は、水と油の他、さまざまな物質で構成されていますが、ポイントは油。ドライアイは、目の水分不足と思われがちですが、実は水分量ではなく油分量、つまり水と油の配分が問題なのです。
涙の油分は、上下まぶたに無数にある『マイボーム腺』から分泌されています。ところが目が冷えると、分泌された油分が固まり、マイボーム腺をふさいでしまい、油が十分に供給されなくなります。その結果、涙の成分がほぼ水だけとなり、目から潤いが失われやすくなるのです。油は温まると溶け、冷えると固まる性質や、油は乾きにくく水は乾きやすい性質を考えると、納得がいくでしょう」
「目を温める習慣」がおすすめの理由
そこで、“涙”の代わりとなりうる目薬で対処するわけですが、他にも自宅でできる対策はあります。「目を温める習慣」です。
「前述のように、目を温めるとマイボーム腺に詰まった油を溶かし、新たな油も分泌されます。その結果、涙の成分である水分と油分のバランスがよくなり、目を保護する涙の質がよくなるのです」
目を温めることは“いい涙”を作るだけでなく、眼精疲労や視力低下を防ぐ役割も。
「目を温めると血行がよくなり、眼精疲労が軽減します。実際、目を温める方法を試した人は、かなりの確率で『見えやすくなった』と感じています。それは、目の構造が変わったり機能が上がったりしわけではなく、眼精疲労による一時的な視力低下が回復したからです」
外出先やお風呂の中で簡単に目を温める方法
目を温めるためのグッズとして、「ホットアイマスク」などはドラッグストアでも見かけますね。でも、わざわざ買わなくても目を温める方法はあります。まず、外出先でもメイク崩れを気にせずできるのが、手で目を優しく覆う「パームアイ」という方法です。
「気温が低い時期、両手を10回程度こすり合わせて温めたら、その手を、水をすくう時のようにカップ状にします。そして、閉じた目を優しく包み込むように30秒から1分間ほど覆います。まぶたが、ほんのりと手の温かみを感じるくらいがちょうどいい加減です」
ホットタオルで目を覆うやり方
一方、自宅で過ごしている時、夜のくつろぎタイムに行いたいのが、ホットタオルで目を覆う方法。
「タオルを軽く濡らして、水がしたたり落ちない程度に絞ります。そのタオルを、電子レンジに入れ、600Wで40秒ほど、温めます。それから両目を覆うことができるくらいの大きさに折り畳みビニール袋に入れて、目を閉じてまぶたに乗せ、1~5分程度、じっと過ごします。
あるいは、入浴の際、お風呂場にタオルを持ち込み、湯船に張った40~43℃のお湯に浸して絞る方法も。タオルが冷めてきたら、また湯船に浸して絞ればいいので、繰り返しホットタオルで温め続けることができます。
なお、ホットタオルもパームアイも、結膜炎や目のアレルギー症状、充血、腫れ、かゆみなどが見られる時、目をぶつけたあとなどは行わないようにしましょう」
ドライアイの救世主となる涙は、目薬で“足す”だけではなく、温めて“作る”ことも可能。早速今日から始めてみましょう。
◆教えてくれたのは:眼科医・平松類さん
医師、医学博士、昭和大学兼任講師。現在、二本松眼科病院で副院長専門知識がなくても分かる歯切れのいいコメントが好評で、メディア出演多数。目の健康情報を無料配信しているYouTube「眼科平松類チャンネル」は登録者7万人以上と高い支持を得ている。http://www.nihonmatsu.net/drhiramatsu/