いつも変わらない穏やかで落ち着いた物腰が印象的な、テレビ朝日アナウンサー・大下容子さん(51歳)。『大下容子ワイド!スクランブル』でメインキャスターを務める“お昼の顔”だ。昨年、役員待遇エグゼクティブアナウンサーに昇進したことでも注目を集めた大下さんに、長年週に5日(15年間は6日)の生放送をこなす毎日の苦労や喜び、そして50代になった自分との、仕事の上での向き合い方について語ってもらいました。
1日1日最善を尽くすことを重ねていく
「人生100年時代といわれて久しいですが、中長期的な視点などは全然ないんです。先のことを考える余裕がなくて。今日や明日の仕事のことなど、とにかく1日1日、最善を尽くすことを重ねていくしかないと思っています」(大下さん・以下同)
画面を通して伝わる、穏やかで淡々とした印象は、実際にインタビューで対面しても同じだ。
大下さんは、1998年からお昼の情報番組『ワイド!スクランブル』を担当。俳優の大和田獏さんら3人のアシスタントを務めてきた。2018年10月からはメインキャスターに、さらにその半年後の2019年4月1日からは自身の名前を冠した『大下容子ワイド!スクランブル』を切り盛りしている。華やかだけど”短命”と言われてきた女性アナウンサーの中で、23年間も同じ情報番組でキャスターを続けられるのは異例と言える。
「ラッキーだったというか、同時間帯に『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ系)や『午後は○○おもいッきりテレビ』(日本テレビ系)という人気番組があったので、会社からそこまで期待されてなかったと思うんです(笑)。私自身、結婚や出産などもなく、ずっとフラットに働いてきたこともあったかもしれませんね」
「さりげなく働くほうが性に合っている」
局アナでありながら冠番組を持つのは、華々しいキャリアップに写るが、大下さんは当初、戸惑いしかなかったという。メインキャスターになって3か月が経った2019年初頭のことだ。プロデューサーから4月の改編時から番組名に大下さんの名前がつくことを“決定事項”として伝えられた。
「ありがたい話ではあるのですが、メインを任されて重圧を感じていたので、『これ以上一会社員に重荷を背負わせるんでしょうか。それは勘弁してください。番組を辞めさせてください』と、普段は“たたかわない”私にしてはかなり強く意思を伝えました。『私はさりげなく働くほうが性に合ってるんです』とも言ったのですが、『さりげなくやるような時間帯じゃないんだ』と返されて今に至ります。
確かに同時間帯の他局では、南原(南原清隆)さんや恵(俊彰)さん、坂上(忍)さんら百戦錬磨の才能あふれる司会者が活躍する中で、会社としても、違いを出すための策だったのかなと、今は思っています」
プレッシャーを感じて悩む本人に対して、周囲は意外な反応を見せた。
「女性たちが喜んでくださったんです。コツコツやってきた人がそういうふうに評価されることは嬉しい、という同世代の視聴者からのおはがきや、アナウンス部の後輩、別の仕事をしている女性などが励みになると言って下さったので、これは意義あることなのかなと思いました」
「役員待遇 エグゼクティブアナウンサー」をスマホ検索!?
そんなふうに始まった冠番組での活躍は社内外で高く評価され、1年ほどたったのち、大下アナは「役員待遇 エグゼクティブアナウンサー」という肩書きを得た。
「会社からはアナウンサーの手本になってほしいというようなことを言われました。早い段階でフリーになったり、転職をしたり、結婚、出産、育休を取って復帰するアナウンサー、最近では男性アナウンサーも育休を取るなどアナウンサーの生き方も多様化している中で、こういうのもいるよということを、会社は示したかったのかなと捉えています。
最初は役員待遇って何?と思って、スマートフォンで調べてみたのですがよくわからなくて(笑)。現場の声を上に伝えることだと解釈して、それは意識するようにしています。この役職になったからといって、何か新しい会議に出ないといけなくなった、ということもありません。お給料ですか? 上がりましたが少しだけです(笑)」