朝は4時起床、夜は10時就寝
番組は一部地域を除いて午前10時25分から放送開始だが、大下さんの朝はそれよりはるかに早い。
「朝は4時ごろ起きて、熱めのシャワーでのど元や首のあたりを温めてから、5時過ぎに出社。メイクを半分くらいして、アナウンス部で一般紙とスポーツ紙を10紙ほど、その日扱うであろうニュースを中心にざっと読みます。
6時前にはその日の台本がパソコンに送られてくるので、ニュースで扱う国の場所の確認から始まり、政治情勢、コロナの現況などを調べ、自分の中で何がわからないのか、何がニュースの核心なのかあれこれ考えます。その後スタッフと1時間ほど打ち合わせして、残りのメイクとブロー、衣装に着替えて本番です。
以前はこんなに朝が早くなかったのですが、どんどん準備に時間がかかるようになってしまって…。例えば今日(取材した当日)は英仏のホタテ戦争のニュースを扱ったのですが、英仏の海峡の場所やら、両国の漁の取り決めの歴史やら…。他のニュースもあるので2時間なんてあっという間。そうしていくうちに、もう15分早く出社しようかな、さらにもう15分…となって、どんどん出社時間が早くなりました」
ニュースのスピードはどんどん速くなっている
出社時間が早まる理由の一つに、ニュースのスピードが速くなっていることも関係していると大下さんは言う。
「前日のオンエア後には、翌日扱うであろうニュースを教えてもらうので夜に準備はできます。でもそのニュースが一夜明けると進んでいて、前日の情報はもう更新されていることも多くなったので、当日朝に準備をするようになりました。さらに年齢とともにどんどん早寝早起きになってきて(笑)。
夜は10時には寝たいですね。疲れてくる週半ばには9時頃に寝ちゃうこともあるので、後輩によく驚かれます」
女性として、自分としての視点を大切に
女性である大下さんの名前を冠した番組名とはいえ現場には男性が多い。20年以上前も今も、打ち合わせ時に女性は大下さんただ1人ということも多いという。
「私から投げかける視点に聞く耳を持ってもらえない時期が、長かったです。でもお昼の番組は、視聴者の半分、いやそれ以上が女性ではないかなと。内容があまりに男性的視点に偏っているなと思う時は言いますし、生放送中もそれまで出ていないような見方を少しでも提示したいなと心がけています。それはいまだに難しいことなのですが、挑戦し続けることが大切だと思っています」
50歳を過ぎると、人が喜んでくれることが嬉しい
50代になった自分との仕事の上での向き合い方、そして年を重ねて変わってきたことについて聞いてみると――。
「50歳になった頃から、自分が嬉しいということよりも人が喜んでくれることの方がもっと嬉しくなってきたんです。例えば番組で着る衣装はスタイリストさんが準備してくださるのですが、放送後に、お借りしたメーカーさんのところに視聴者から問い合わせが入って、喜んでいらっしゃいましたなんて話を聞くと。自分がその衣装を着ることで、少しでも誰かの役に立てたのかなと思えてすごく嬉しいんです」
自身の名前が番組名についてから来年で3年目になるが、ここまで続けてこられたのは支えてくれる周囲の人たちの声に応えたいという気持ちがあったからだ。
「スタッフや出演者みんなで協力して最善を尽くしたいです。それでだめならしょうがないと腹をくくって始めて、今は健康第一にできるところまでやっていきたいと思っています」
◆大下容子(おおした・ようこ)
1970年広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。血液型A型。身長:160㎝。1993年テレビ朝日入社、役員待遇 エグゼクティブアナウンサー。『大下容子ワイド!スクランブル』(毎週月~金曜、10時25分~13時/一部地域を除く)でメインキャスターを務める。『ワイド!スクランブル』は1998年から23年間担当。2021年10月、初エッセイ『たたかわない生き方』(CCCメディアハウス)を出版。https://www.tv-asahi.co.jp/scramble/
撮影/吉場正和 取材・文/田名部知子