女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第15回は、寧々さんが家族と過ごしたクリスマスの思い出について。
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子供が小さい時、夫がサンタクロースをしてくれた。
夫と相談して、子供がすぐにサンタを追って来られないように、私が子供とお風呂に入っているときに訪ねて来ることにした。
湯船に息子と入っていたら、赤い服に白いひげをたくわえたサンタさんがやってきた!
子供は大喜びだ! 私が見ても夫には見えず、声も変えていたので(さすがです!)、子供は気がつかない様子で大興奮している。
サンタさんが去ると、子供は大急ぎでサンタさんを追いかけたがり、お風呂からあがった。何とか時間稼ぎをしようと思いながら「ちゃんと拭かないと風邪ひくから」と言いながら、必死で止める。心の中では、夫に、早く着替えて~と思いながら。
しかし夫はあっという間にお風呂場に戻ってきて、「今サンタさんが来た~?」と涼しい顔をしている。
ああ~良かったと思っていると、子供が突然大きな声をあげた。
「サンタさんのベルトが落ちている~! これサンタさんのベルトだよね!? 忘れたのかな~?」とまた大興奮。
夫は「あちゃ~」という顔をしている。私は笑いを堪えるのに必死だ。
次の日もサンタさんが訪れる事に
その夜夫婦で話しながら、結局次の日もサンタさんが訪れる事にした。子供にはサンタさんがベルト取りにくるかもしれないねと話していた。またサンタさんに会えるかもと、子供は嬉しそうだ。
子供とお風呂に入っていると、またサンタさんがやってきた!
「やあ、やあベルトを忘れちゃって!」とか話している。サンタさんが去ると、昨日にもまして、子供がお風呂からあがるのが早い! 今度はベルトを忘れないで~と思いながら、笑いを堪えていた。
良い思い出だ。子供もすっかり大きくなり、今ではクリスマスプレゼントをくれたりする。クリスマスツリーを出すのを手伝ってくれたり、一緒に飾り付けしたり。月日が経つのは本当に早い。一日一日を大切にしなきゃと思う。
クリスマスはなるべく家にいるようにしている。コロナ禍の前は、だいたい幼なじみが家に来てくれたり、子供の友達が来たりと、みんなでワイワイ飲みながらご飯を一緒に食べている。あれからサンタさんがわが家にやってくることはないけれど、家族や友人と過ごすことができればそれだけで幸せな気持ちになれる。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。現在、出演映画『軍艦少年』が公開中。