たたみかけるようなクライマックスの演技合戦
ドラマ版は半年間かけて放送されましたが、本作は142分という映画の尺にまとめられているため、伏線の回収が強引であったり、ノリと勢いで押し切っている箇所も多々あります。とはいえ、本作そのものが、「まさか」や「そんな」な展開が連続する作品です。この点においては、劇場版の方がドラマ版よりも大胆不敵であり、ひるがえってそれが作品の大きな魅力となっているように思います。
手の込んだ見せ方で意外な真実が次々と暴かれる
そして、大きな見どころとして挙げたいのが、クライマックスに向けてたたみかけるようなキャスト陣の演技合戦です。ネタバレにならない程度で触れますが、クライマックスでは、クルーズ船の甲板上に「キウンクエ蔵前」の住人や刑事たちが大集結し、演技合戦を繰り広げます。ミステリーものの定番とも言える、登場人物が勢揃いした中での真相究明の時間。
実に手の込んだ見せ方で意外な真実が次々と暴かれ、驚きの展開に感情的になったり、やぶれかぶれになるキャラクターも多数。オールスタキャストによる饗宴は、やがて狂宴へと雪崩れ込んでいくのです。この瞬間こそ、劇場版ならではの面白みが詰まっているのではないかと思います。
最後には、ドラマ版とは異なるラストが待ち受けています。それは恐らく、観る者誰しもにとって希望的で明るいもの。1人で観るも良し。家族で観るも良し。新しい年を迎えようというこの時期に観るのに最適な作品と言えるでしょう。
◆文筆家・折田侑駿
1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。http://twitter.com/cinema_walk