人に巻き込まれない術がすごい?
コロナ禍の2020年6月、大下さん自身にも変化があった。役員待遇エグゼクティブアナウンサーという役職に昇進したのだ。しかし局関係者からは今までと違う大下さんの姿は伝わってこない。同僚、後輩アナウンサーにも出演番組を見たときには気さくに声をかけ、誰にでも分け隔てなく接する“良き先輩”というのが変わらぬ大下さんのイメージだ。
誰とでもほどほどの距離感を
番組で長年コメンテーターとして登場している脳科学者の中野信子さんからは、「人に巻き込まれない術(すべ)がすごい」といわれたことがあると言う。
「まったくかけられたことのない言葉でしたのでびっくりしたし、意識してそうしているわけでもないのですが、確かに昔から“ソーシャルディスタンス”を取っているなあと。だいたい誰とでも同じぐらいの距離なんですよね。余計なことを言わない。だから余計なことも耳に入ってこない。そうやって自分を守っているのかもしれません」
特に意識してなくても、誰とでも適度な距離感を保つのが大下さん流の人付き合い術ということなのだろうか。
「もちろん人としっかり関係を結ぶことが好きで得意な方もいて、それは素晴らしいことだと思うし、そういう人は近い関係だからこそキツイことを言われても平気かもしれないし、むしろそれをありがたいと思うこともあるかもしれません。でも私はすぐ気にするし落ち込んでしまうほうなので、ハッキリ言うのも言われるのもあまり得意ではないんです。
そんな性格もあって、誰とでもほどほどの距離を保ちたいと考えています。ただ人との距離感は本当に人それぞれ。それでいいんだと思います」
“同期”丸川元大臣とはどんな関係?
人との距離感という意味では、テレビ朝日アナウンサーの同期とのそれも気になるところだ。元テレビ朝日アナウンサーで、環境大臣、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣などを歴任した自民党参議院議員の丸川珠代氏とは同期入社。積み重ねてきたキャリアは異なり、現在の活躍の場は違えども、お互い第一線で働く女性同士。現在、どのような距離感で付き合っているのか聞いてみると――。
「これもまさにソーシャルディスタンスです(笑)。情報番組の司会という立場上、どの政党とも一定の距離を保つことを心がけているので、頻繁に連絡を取るということはしていないです。安倍政権時代、丸川さんが最初のオリンピック・パラリンピック大臣に就任した時にインタビューしました。SPや多くのスタッフが見守る中での取材で『大臣として重責を背負っているんだな』と改めて実感しました。
東京オリンピック・パラリンピックを終えた今、じっくり話を聞きたいという思いもあります。これからもニュースがあれば取材したいですし、それはもちろん彼女もわかっているはずなので、お互いより良い仕事をしていきたいです」
◆大下容子(おおした・ようこ)
1970年広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。血液型A型。身長:160㎝。1993年テレビ朝日入社、役員待遇 エグゼクティブアナウンサー。『大下容子ワイド!スクランブル』(毎週月~金曜、10時25分~13時/一部地域を除く)でメインキャスターを務める。『ワイド!スクランブル』は1998年から23年間担当。2021年10月、初エッセイ『たたかわない生き方』(CCCメディアハウス)を出版。https://www.tv-asahi.co.jp/scramble/
撮影/吉場正和 取材・文/田名部知子