50代前後になると、老後資金のことを考えながら豊かなセカンドライフを送るための準備にとりかかる人もいるのではないでしょうか。今回紹介するのは、56歳から始めた「趣味」で、毎日生き生きと生活しながら老後資金も増やすことができた主婦のエピソードです。
専業主婦が投資を始めて3年半で約2億円を運用
「老後資金に不安を抱いているかたは少なくありません。セカンドライフはただのんびり過ごすのではなく、報酬は少額だとしても好きな仕事をして生きていく方法を模索されるかたが多いです」
そう話すのは、40代以降女性のセカンドライフを充実させる活動である「セカ活」を支援するサービスを提供している「セカミ―」代表の増田早希さん。
「資格を取って鍼灸師になる人、キャリアスクールで知識をつけてセミナー講師や着付け講師になる人などさまざまです。まだ少ないのですが、中にはマネーの分野に挑戦されるかたもいます」(増田さん)
専業主婦を30年続けたあと、専業投資家に転身したナスダッ子さん(60歳)も、そのひとり。
「本格的な投資を始めて、3年半で約2億円を運用するようになりました。世界が広がり、毎日が充実して楽しいです」(ナスダッ子さん・以下同)
企業の成長に参加しているワクワク感。気づけばお金も増えている
投資を始めるきっかけは、夫の退職と次男の自立でした。
「新卒で出版社に就職、26歳で寿退社して専業主婦になりました。証券会社にすすめられるままに投資信託だけは始めましたが、“放置”しているだけ。それでも少しずつ株に興味を持ち始め、4年前に主人が定年退職したのを機に、初めて個別株を購入しました。
実は、20代後半の次男が自閉症なんです。次男になにかがあったら飛んでいく生活で、専業主婦にならざるを得ませんでした。その息子が家を出てグループホームで雇用訓練を受けられるようになったんです。夫の退職と息子の自立によって時間ができたので、やっと自分がやりたいことをできるようになりました」
まず買ったのはAmazon株
2017年、証券会社の知人にすすめられてアメリカ株である「Amazon」の株を購入しました。
「なじみのある企業だし、チャートでこれまで株価が何十倍になっていることも見て今後の成長を考えAmazonに決めました。証券会社のかたは初心者の私に、専門用語や銘柄を選ぶ基準などを繰り返し教えてくれました。例えば、他の企業が同じような商品を作っていないことで価格競争がないものや、一度使ったら続けたくなるサービスを提供している企業など。そういう選ぶ基準がわかってくると、どんどん面白くなっていきました」
ナスダッ子さんは投資初心者がつまずきやすい金融業界の専門用語を、ラジオやインターネットで学びました。
「それまで専業主婦でこんなに集中して勉強することがなかったので、新鮮で楽しかった。株の勉強をすると経済がわかり、社会の仕組みが理解できます。視野が広がるんです」
初期の投資資金は、漫然と選んでいた投資信託で増えたお金と夫の退職金などで6000万円ほど。勉強するようになってからは基本的に米ハイテク個別株を選んでいました。
「2017年に約6000万円からスタートして、3年半で約2億円になりました。投資に不安がなかったわけではありません。でも、アメリカの企業には世界中の人が投資していて、世界中で利用されているサービスを展開する企業が多いので、アメリカの企業に投資することは世界中に投資しているとも言えます。その企業の成長に参加しているワクワク感があるし、気づけばお金も増えている。こんな楽しいことをしないのはもったいないと思います」
普段の生活では知り合えなかったはずの仲間ができた
しっかり分析していても、常に利益を上げられるわけではありません。
「もちろん、マイナスも味わいました。初心者がやりがちなのが、“狼狽売り”。株価が急落すると、もっと下がるのが怖くて株を売ってしまう。売ってもいいのですが、買い戻せないんです。私もそれで失敗しました。悔しい思いをしたので、次は下落しても企業に問題がなければ元の値になるまで待てる、買い戻せるなど、過去の経験がいきる世界です」
その判断は、自分だけでしているわけではありません。ナスダッ子さんには、株を学び合う仲間ができました。
「TwitterやコミュニケーションアプリDiscordなどで、同じように投資をしている友達ができました。普段の生活では知り合えなかったはずの専門職の人や、息子くらいの若い人たちに刺激をもらえます。学びの多い魅力的な人たちばかりでびっくりしました。この歳で、ずっと付き合いたいと思える出会いがあるとは思いませんでした」
投資のプロからも声がかかるように
ナスダッ子さんは専業主婦時代、自己肯定感が低かったと振り返ります。
「“専業主婦は結婚して子供ができたら当たり前の役割で、私が名乗るべき肩書はなにもない”と引け目を感じていたんです。でも、投資仲間に、家族のために毎朝5時半に起きてお弁当を作る生活を20年も続けてきたのは立派なキャリアだから、そのまま肩書に書けばいいと言われたんです。
プロフィールに書くようになってから、主婦仲間が増えて、投資のプロのかたにも話を聞きたいと言われるようになりました。私は情報をもらうだけじゃなくて、発信できるようになったんだと、自信がつきました」