本作が訴える“負の感情”の存在を知る重要性
本シリーズだけでなく、多くのホラー作品で共通して描かれるのが、恐ろしい心霊現象が起きる背景や根源にあるものが、怒りや悲しみ、つまり“負の感情”とされるもの。この感情が強ければ強いほど大きな力を生み出し、それが悲劇を呼びます。ネガティブなエネルギーは、他に影響を与えずにはいられないのです。私たち自身、心当たりがないでしょうか。
”ただ怖いだけ”ではない作品の魅力
本作『牛首村』にも強烈な“負の感情”が充満しています。かつて存在した「牛首村」には恐ろしい風習があり、その風習によって犠牲となり苦しんだ者たちのネガティブなエネルギーが、時を超えて現代へと影響を与えているのです。この風習は本作のために創作されたものですが、日本には実際に、生活を守るため“口減らし”などの悲しき風習が数多く存在しました。犠牲となった人々の想いがその土地にとどまることは当然だと思います。
犠牲になってしまった人々の想いは、いったいどこへ行くのかーー。本作は実在する場所を舞台としたフィクションですが、埋もれてしまった、あるいは隠されてしまった過去を知ることの重要性を描いているようにも思いました。本作を見た後は、“ただ怖いだけ” ではない作品の魅力を感じられることでしょう。
◆文筆家・折田侑駿
1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。http://twitter.com/cinema_walk