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有村架純×森田剛の話題作『前科者』が突きつけた問い「あなたたならどうする?」

「前科者」劇中カット
(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
写真10枚

現在公開中の有村架純(29歳)主演の映画『前科者』。本作は、WOWOWにて放送されたドラマ『前科者 −新米保護司・阿川佳代−』の劇場版。有村が若手の保護司に扮し、森田剛(42歳)らが演じる保護観察対象者たちとの交流を描いています。劇場版とあって、ドラマ版以上に、保護司と保護観察対象者の双方の内情に肉薄するものとなっています。本作の見どころについて、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。

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「保護司」の実態を見つめたヒューマンドラマ

本作は、原作・香川まさひと、作画・月島冬二による同名コミックを実写化したドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』(WOWOW)の劇場版で、続編に当たるもの。ドラマ版では、主人公である新人保護司の奮闘記が描かれましたが、本作が描くのはその数年後の物語で、完全オリジナルストーリーとなっています。

メガホンを取ったのは、映画『二重生活』や『あゝ、荒野』などを手掛けた岸善幸監督(58歳)。主演の有村とともにドラマ版から続投し、重厚な映画作品を生み出しています。

「前科者」劇中カット
(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
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殺人罪で服役していた男を担当することになり…

物語のあらすじはこうです。コンビニでのアルバイトで生計を立てながら、保護司の職に従事する主人公・阿川佳代(有村架純)。彼女は“保護観察対象者=前科者”たちに真正面から向き合い、ときに厳しく、ときに優しく接し日々奮闘します。ある日、殺人の罪で服役していた工藤誠(森田剛)を彼女が担当することに。

「前科者」劇中カット
(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
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工藤は物静かで真面目な人物で、阿川は懸命に彼の社会復帰への道を支えます。ところが、工藤は保護観察終了前の最後の面接に現れず、社員登用が決まっていた自動車修理工場からも姿を消してしまう。そんな折、連続殺傷事件が発生し、工藤がその容疑者として捜査線上に挙がることに。それでも彼を信じる阿川は、やがて自身が保護司の道を選ぶことになった暗い過去にも向き合うことになるのです。

保護司と前科者の関係にフォーカス

物語に登場する「保護司」という職業。その名を耳にしたことはあるものの、実際にどんなものかよく分からない人も多いのではないかと思います。保護司とは、犯罪者や非行少年が更生し、社会復帰するためのサポートを務める存在。非常勤の国家公務員でありながら報酬は一切なく、民間の奉仕精神だけで成り立っている職業です。本作の主人公・阿川はアルバイトで生計を立て、自分のことはそっちのけで保護司の職務を全うしようと必死です。

「前科者」劇中カット
(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
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筆者の身内にもかつて保護司をやっていた者がいますが、よほど器が大きく、懐が深い人でなければ務まらない職業だと思います。本作は、そんな保護司の活躍を描いただけでなく、“保護司と前科者の関係”にフォーカスしています。保護司の職務の実態を見つめた作品だと言えるでしょう。

森田剛、磯村勇斗、マキタスポーツらによるスリリングな展開

ドラマ版に登場する前科者たちは、恐喝罪、傷害罪や殺人罪で服役していた者、そして覚醒剤取締法違反容疑で執行猶予となった薬物中毒者などでした。どこか少し抜けたところのある阿川の成長譚ともあって、最初こそコミカルな空気感もありましたが、次第に重苦しい展開へと進んでいきます。

視聴した人の中には、途中から観るのが辛くなった人もいるのではないかと思います。劇場版も同様、連続殺傷事件が絡んでくることもあって、途中から重苦しい空気が漂います。

「前科者」劇中カット
(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
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森田剛が物静かで脆さを感じさせる男を好演

物語に主として登場するのが、森田剛、若葉竜也(32歳)、磯村勇斗(29歳)、マキタスポーツ(52歳)ら。彼らは劇場版からの参戦組です。森田演じる工藤は物語の軸となる“前科者”なので、本作のタイトルロールと言えるものです。

工藤は殺人罪で服役していた男ではありますが、それは職場の上司からの酷いいじめに耐えかねた末に起こってしまった悲劇。普段は物静かで、どこか脆さを感じさせる人間です。これを森田は非常に抑制の効いた演技で表現しています。伏し目がちな視線はおぼつかず、声にも力がない。聞き取りづらいセリフも多々あります。筆者は観ていて、「これは本当に弱っている人の姿だ…」と驚きました。

「前科者」劇中カット
(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
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そして、工藤を容疑者だと睨み、追いかけるのが磯村とマキタ演じる刑事コンビです。彼らの登場が本作をスリリングなものにし、物語の展開に大きな動きを与えます。特に、磯村演じる滝本真司は阿川の幼馴染みであり、一方は犯罪者を追い、一方は犯罪者を更生させるという因縁の関係にあります。

このある種の対立関係が本作のテーマに膨らみを持たせていますし、それぞれの正義や価値観を体現する俳優同士の演技のぶつかり合いにも魅せられます。

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