
ダイエット=食事制限と考える人は多いのではないでしょうか。ところが、過度な制限こそがダイエット失敗の原因にもなると言えます。食事内容や運動以上に重要な「メンタル」に焦点を当て、独自の「食欲コントロール法」によるダイエットを提唱した著書『101の科学的根拠と92%の成功率からわかった 満腹食べても太らない体』(SBクリエイティブ)が話題の富永康太さん(食欲コントロールダイエット協会代表理事・理学療法士)に、「食べ過ぎないための心を整える」食事術について聞きました。
食べたいものを食べて心を満たすほうが太りにくい
「メンタルが安定すると自律神経とホルモンのバランスも整って食欲も落ち着き、やせやすくなります」と富永さんは指摘します。よく、「ストレス太り」や「ストレスやせ」と言いますが、これはストレスが食欲を抑えるほうにも強めるほうにも作用するということ。
「ストレスは自律神経とホルモンのバランスに影響して食欲のコントロールを悪くします。つまり、ダイエットは基本的にストレスゼロが正解なのです」(富永さん・以下同)
食事制限などによるストレスをかけずにダイエットを成功させるには、どんな食事術があるでしょうか。
太りにくい「焼肉食べ放題」の極意
SNSを通じてダイエット相談に乗っている富永さんのもとには、「明日、焼肉食べ放題に行くんですがどうしたらいいですか?」「ケーキ食べ放題に行くのですが、太らない方法ありますか?」など、「食べ放題」についての質問が多く寄せられるそうです。
「はっきり言いますが、焼肉食べ放題に行く=太る、わけではありません。それで太るとしたら、問題は食べ方です。『食べ放題で太りにくい食べ方』を意識して、焼肉を楽しみましょう」

ご飯ものを最初に食べる
では、どのようなポイントを心掛けたらよいのでしょうか。
「焼肉での食べ過ぎを防ぐには、ビビンバなどのご飯ものを最初に食べ、そのあとに『サラダ』、そして『お肉』の順番で食べるのが正解です。ご飯を先に食べることで血糖値を上げ、サラダを食べて胃の満足感を高めておけば、お肉を必要以上に食べたくなくなります。『せっかくの焼肉なのにもったいない』と感じるかもしれませんが、焼肉食べ放題を楽しみながらやせるために、実践する価値はあるはずです」
反対に、富永さんが「やってはいけない」と言うのが、食べ放題へ行く前の食事量の調整です。
「夜は焼肉食べ放題だからと、朝昼の食事を抜いたりしてしまうと、エネルギー不足の状態に反応した自律神経とホルモンが食欲を強め、食べ放題で普段よりも食べ過ぎてしまいます。食べ放題だからといって気合を入れて食べ過ぎる必要はありません。適量もしくは少し多いくらいで自然と終われるのが、太りにくい食べ方になります」
「食事制限」をしてはいけない理由
ダイエットにおける食事制限が逆効果となるケースについて、富永さんが解説します。
「禁止されたことで逆に食べたくなる心理状況を、心理学用語で『心理的リアクタンス』と呼びます。普段は我慢できていたとしても、寝不足やストレスなどの要因によって食欲が爆発し、反動で食べ過ぎて太ってしまうことがあるのです。しかも、食べ過ぎた経験がその禁止にした食べ物への苦手意識を高めて、さらに禁止を強めてしまう、という悪循環に陥ることもあります」

食事制限の反動で過食になることも
ダイエットで食事制限を行わず、禁止した食品を食べてみるとどんな心理になるでしょうか。
「食事制限をやめて食べてみると、『禁止にしていたときはめちゃくちゃ食べたいと思っていたけど、実はそこまで好きではなかった』となるケースがほとんどです。食事制限は反動による過食と、ジャンクな食べ物に対する不必要な抵抗感を作って、結局やせにくい要因になってしまうのです」
こんな人は間食するとやせる
食事と食事の間にとるおやつは太る原因になると思いがちですが、富永さんは「間食をしたほうがやせやすい人もいる」と指摘します。
「たとえば、1回の食事量が多い人です。昼食から晩ご飯まで時間があると、お腹が空き過ぎて急いで食べてしまい、腹八分目を通り越して食べ過ぎてしまうことがあるでしょう。
このとき、体内は『低血糖』になっている可能性が考えられます。こうした人は、15時〜16時に間食することで血糖値を安定させ、過剰な空腹やイライラを避けることができるので、夕食の食べ過ぎを防ぐことができます」

15〜16時におにぎりや果物を
注意が必要なのは、食べ方と食べ物です。
「1日中ダラダラとスナック菓子やケーキを食べ続けることは間食とは言えません。血糖値が高い状態が続き、脂肪蓄積を促すインスリンが慢性的に作られ続けてやせにくくなります。
間食は、15時〜16時の夕飯前におにぎりや果物でとるようにし、それが難しければ血糖値を保つためのラムネなどを食べるのがよいでしょう」
1日の食事の1割は「心を満たす甘いもの」に
「ダイエット中に甘いものを食べるなんて……」と思う人は多いかもしれません。しかし、富永さんは「1日のトータルカロリーの1割程度のカロリーであれば問題ありません。甘いものを食べることで食事に対する満足感が高くなり、食べ過ぎを防ぐことができます」と言います。

甘いものを食べるとセロトニンが分泌
「無理に甘いものを制限してしまうと、先ほど説明した『心理的リアクタンス』による食べ過ぎが起こります。禁止にするのではなく、食事の一品に甘いものを加えると反動による食べ過ぎもなくなります。例えば、1日に2000kcal食べているのであれば、200kcalくらいなら甘いものを食べてもよいでしょう。
甘いものを食べると脳内に『セロトニン』というホルモンが分泌され、私たちの心を満たしてくれる効果があります。セロトニンは食欲を抑える働きもあるため、食べ過ぎを防ぐことにもつながります」
ダイエットを成功させるためには心のバランスを整えることが大切です。過度な制限を加えずに、甘いものと上手に付き合っていきましょう。
◆教えてくれたのは:食欲コントロールダイエット協会代表理事・富永康太さん

西日本リハビリテーション学院卒業後、理学療法士として複数の医療機関に勤務。生理学や解剖学の知見に基づき、延べ3万人以上の治療に携わる。2016年、体質改善サロン「Leaf」開業。2019年、一般社団法人「食欲コントロールダイエット協会」設立。現在はサロンだけでなく、電話相談やオンラインダイエットなども行っている。インスタグラムのフォロワー5.5万人、YouTubeチャンネル登録者数7.3万人など、SNSでも積極的にダイエットに関する情報を発信中。https://shokuyoku-diet.com/