
歳を取るほど、物が捨てられなくなり溜まっていく…そんな悩みを抱えていないでしょうか? 幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザーで、20年以上にわたり片付けに悩む家庭の現場を見てきた古堅純子さんによれば、ただ捨てようとすると、片付けも整理もなかなかできない人が多いのだとか。捨てられない悩みはどうすれば解決できるのか、お話をうかがいました。
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なぜ物が捨てられなくなるのか
たくさんのお客さまの家へ行くうちに、歳を取るほどに物が捨てられなくなったというお話をよく聞きます。そこで感じた、物を捨てられない理由からお話しします。
思い出が詰まった物は生きてきた歴史そのもの
歳を取るほどに物を捨てられなくなる理由は、第一に、生きてきた年数のぶん、過去が多いということです。物はその人自身の歴史を表していて、思い出が詰まっていますよね。希望がある若者は未来に意識が向きますが、それなりに生きていると過去の物に思い入れが強くなるので、捨てられないんです。
捨てられない理由はさみしい気持ちや不安
特に、家に物が増えていく一方だと話す人の深層心理には、やりきっていないという思いがあるように思います。巣立った子供の物を捨てられない人は、まだ子離れができず、子育ての思い出を捨てきれないのでしょうし、料理をしなくなったのに鍋がたくさんあるのは、「いつかまた家族に料理を作ってたくさん食べさせてあげたい」という思いがあるからなのでしょう。

そういったさみしい気持ちを、物で埋めようとしている人もいます。心配性で未来の不安が多い人も、物を増やして溜めがちですね。つまり、気持ちと現実がマッチしていないんです。
家の整理をするときはメンタル面から整える
そういうかたには、思い出と現実を比べてみることをおすすめしています。捨てることを目的にしてしまうと、気持ちの整理がつかないために片付けられないという人が多いからです。
たくさんある物には、まず「なぜ?」と問う
例えば、キッチンにあふれている物を減らして片付けたいというお客さまに「鍋がいっぱいあるのは、毎日料理をするからですか?」と聞きます。すると、「今は宅配で弁当が届くから、あまり料理はしないの」と言われたとします。
それなら、生活に必要な鍋を残して、同じような鍋は数を減らしてもいいですよねと、取捨選択ができます。まだ使える物だと余計に手放す理由に納得できないと、捨てられないし、捨ててもまた同じような物を買ってきたりするんです。

納得する答えが出てから捨ててみる
先ほどのお客さまを例に挙げてみれば、「料理が好きだった」「子供に栄養のある食事を与えたかった」という思い出だけが残っているから捨てられない、という現実を見つめることが必要だったんです。座布団がたくさんある家庭だったら、以前は親戚が大勢来ていたから、人数分と予備も含めていっぱいあった、など物を多く持っていた理由があるはずです。
けれど、今は当時ほどの来客がなくなったなと現実を見つめてみれば、古くなった座布団は捨ててもいいかも…と納得がいきますよね。一見まだ使えそうな物を整理するときは、いったん納得する答えを出してみるといいんです。

20枚もの座布団はいらない、と考えるのではなく、お客さんには使わないような古い10枚を一度捨ててみて、きれいな10枚の座布団は残しておく。過ごしているうちに、10枚も一気に使うこともないから、5枚もあれば…とだんだんと整理ができて、いつのまにか押し入れがスッキリしたというお客さまがたくさんいらっしゃいました。
整理をするときは物ではなく気持ちから
思い出が詰まった物を一気にすべて捨てるには決断が必要ですし、悲しい気持ちにもなるので、おすすめしません。一気に片付けができる人がえらいとか、できない人がダメだとか、そんなことはまったくないんです。
少しずつ気持ちの整理をしていくことが、結果的に必要なものだけを残すことにつながります。
◆教えてくれたのは:幸せ住空間セラピスト・古堅純子さん

幸せ住空間セラピスト、家事効率化支援アドバイザー。整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、企業内整理収納マネージャーの資格を所持。1998年、老舗の整理収納サービス会社に入社。20年以上現場第一主義を貫き、クライアントのもとへ通う。5000軒以上の家でサービスを重ね、古堅式メソッドを確立。オンラインを含むコンサルティングやメディア出演や講演も行う。著書は累計60万部で、最新著は『「シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新聞出版)。YouTubeチャンネル「週末ビフォーアフター」は、1000万回再生を突破。チャンネル登録者数9万1000人(2022年4月現在)。https://s-d-m.jp/talents/jyunko-furukata/
構成/イワイユウ