
奈良といえば1300年の歴史を背景に、神社仏閣、仏像巡りなどをテーマに旅するのが定番でした。ただ「ここ数年で変わってきた」というのは、奈良に縁のある旅行ジャーナリストの村田和子さん。今回は村田さんに、歴史にプラスして楽しみたい、奈良の「食」×「体験」を紹介してもらいます。
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奈良といえば、何もないのんびりとしたときの流れを感じるよさがある一方で、京都のように食や街歩きを楽しむというイメージはありませんでした。ところが、ここ最近、街の様子が大きく変化。古民家を活用したスポットが増え、落ち着いた中にも洗練されたお店も登場しています。「奈良にうまいものなし」といったのは昔の話。散策の合間に立ち寄りたい食のスポットや、体験などをご紹介します。
新しい奈良の象徴「鹿猿狐ビルヂング」
猿沢の池の近く、路地を少し入ったところにあるのが複合商業施設「鹿猿狐(しかさるきつね)ビルヂング」。全国の百貨店などにも進出をしている創業300余年の中川政七商店が、創業の地に2021年にオープンしたものです。

中庭を挟み隣接する築130年の町屋と共に、歴史をベースにした体験、おいしいもの、洗練された空間でのショッピングなど、新しい奈良の旅の象徴的な存在で、ぜひ立ち寄りたいところです。




ちょっと変わったビルの名前は、中川政七商店のシンボルである「鹿」、テナントとして入る、猿田彦珈琲の「猿」、東京・代々木上原にあるミシュラン一つ星レストランが手掛ける㐂つねの「狐」。3匹が集うということで、命名されたそう。


休憩はかき氷?それとも隠れ家バー?
歴史散策の休憩スポットも、ユニークなところが増えています。夏に向かってのおすすめは、「かき氷」。奈良に訪れたら手に入れたいのが無料の「奈良かき氷ガイド2022」。2015年から始まり8年目を迎えた今年は60軒ものお店が参加し、かき氷がずらり! 中でもブームの立役者といえば「ほうせき箱」です。

2日前開始のネット予約もすぐに埋まるという「ほうせき箱」ですが、実はちょっと裏技もあるんです。記事の後半でご紹介しましょう。
そして、もう1つ。奈良町の一角にあるのが「Bar Savant」。オープンは昼の2時で、明るい時間から乾杯もOK。町屋を改装した店内は、坪庭を眺める落ち着いた和の雰囲気。夜もいいですが明るい時間にいただくお酒も格別です。


休憩といえば、やはりお茶。そんなときは「CAFE & BAR MIROKU TERRACE」はいかが? 築31年のビルを改装した館内には、コンテンポラリーなアートが置かれ、ユニークで心地いい空間が広がります。テラス席もあり、目の前の芝には、鹿がふらっと散歩にやってきて、見ているだけで癒されます。


実はこのカフェは、「共生の奈良」をテーマとしたホテル「MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS」の1階にあります。
https://www.thesharehotels.com/miroku/
宿泊部にも、いたるところにアートがあり、7タイプある客室は一人旅から家族までシーンに合わせて選べます。一人旅にもおすすめです。


宿泊して楽しみたい。夕食の奈良野菜、涼しい朝時間を活用
令和2年の調査では、都道府県別の延べ宿泊者数で、全47中46位という奈良。大阪や京都に滞在して、日帰り利用が多いのですが、やはり泊まらないと経験できないことも多いもの。
例えば、清酒発祥の地といわれる奈良では、奈良の地酒を使った「奈良しゅわボール」を推進。日本酒離れが進んでいますが、ハイボールにすることで、気軽にお洒落に飲めると人気です。

大人女子が訪れたい、上質で寛げておいしいお店もたくさんできていて夕食の楽しみも増えました。「粟 ならまち店」(https://www.kiyosumi.jp/naramachiten)は古民家を使った歴史感じる佇まい。奈良の伝統野菜を中心に、奈良の食材を味わってほしいという店主の思いを感じる料理は、どれもヘルシーで美味。見た目も美しく女性好みです。


そして奈良は、夏場は涼しい朝に観光して、日中は食事やお茶、屋内施設などでゆっくりするのがおすすめです。早朝の神社仏閣は人が少なく神秘的。また、朝体験で特におすすめなのが「鹿寄せ」。

ナチュラルホルンの調べに、さまざまな方向から集まってくる姿は壮観です。鹿寄せは毎日実施するものではなく、特定日の無料実施日(夏は10日ほど)を狙うか、1回2万1000円でお願いをするか(希望日の1か月前までに予約を)。団体旅行ならいいのですが、個人だとなかなか高額。

裏技利用でレア体験もスムーズに
そこで裏ワザの登場です。「いざいざ奈良キャンペーン」を始めたJR東海では、新幹線がお得になるEXサービス、J-WEST会員向けに、さまざまな体験プランを発売しています。
例えば今回ご紹介したものだと、鹿寄せと、見学後に「㐂つね」の朝ごはんをセットにしたプラン(かや織ふきんのお土産付き)を4000円(日にち限定)で発売。

人気かき氷店「ほうせき箱」もこのプランの専用枠があり、「記念品付 お席確約プラン」が1400円で発売されています。記念品は非売品のデザートスプーン、かき氷も1500円の予算で選べるというからお得。予算内なら西吉野のはちみつ(100円)ヨーグルトエスプーマ(150円)などのトッピングも利用できるそう。
他にもJR東海のホームページ「いざいざ奈良」(https://nara.jr-central.co.jp/index.html)は、ガイドブックにない旬の情報や新しいスポットも多いので、参考にされるといいですよ。実家が奈良にある私も知らないことがたくさん! お出かけ時に重宝しています。

いかがでしたか? 1300年の歴史、神社仏閣の魅力はもちろんですが、やはりワクワクとした体験や食も旅の重要な要素です。久しぶりのかたも、リピーターのかたも、新しい大人の奈良旅をぜひ楽しんでみてくださいね。

◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年よりNHKラジオ『Nらじ』月一レギュラー。トラベルナレッジ代表(https://www.travel-k.com/)。旅ブログも行っている(http://www.murata-kazuko.com/)。
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