太りにくく体にいい、良質な脂肪酸
チョコレートは太るという誤解の原因の1つは、カロリーが高いこと。カカオ72%の高カカオチョコレートで100gあたり560kcalもあります。チョコレートの原料であるカカオ豆に最も多く含まれる栄養素が脂肪なので、どうしてもカロリーは高くなります。
でも、カカオ豆に含まれる脂肪は他の脂肪と比べて「体内に吸収されにくい」性質のものです。
体脂肪になりづらいステアリン酸
カカオ豆に含まれる脂肪は、おもに「パルミチン酸」「ステアリン酸」「オレイン酸」の3つの脂肪酸で構成されています。カカオ豆はとくに、ステアリン酸が他の食品より多く含まれています。ステアリン酸は体内に吸収されにくく、体脂肪になりづらい性質があります。
酸化しにくいパルミチン酸、ステアリン酸
またステアリン酸、パルミチン酸は、変質しにくく、酸化しにくい飽和脂肪酸です。つまり、カカオ豆に含まれる脂肪は体脂肪になりにくい=太りにくいうえ、酸化による悪影響を与えない、体にとって質のよい脂肪といえます。
食物繊維は血管や腸の健康に効果的
高カカオチョコレートには、食物繊維が豊富なさつまいもと比べても約4倍、ごぼうの約2.6倍もの食物繊維が含まれています(カカオ成分86%の場合/出典:日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉)。
食物繊維は1日に成人女性で18g、成人男性で20g以上を摂ることを推奨されていますが(18から64歳の場合。厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準」2020年版より)、現代の日本人は1日平均6g程度足りていないといわれます。
私が推奨している、1日25g分の72%の高カカオチョコレートから摂れる食物繊維は約3g(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉などをもとに算出)。1日の不足分の半分もの量を補えるのです。
血糖値の上昇を防ぎ、血中コレステロール濃度も下げる
カカオの食物繊維として多く含まれている「リグニン」は不溶性食物繊維の一種。糖質の吸収をゆるやかにする作用があるので、食後血糖値が上昇しづらくなります。また、食物繊維は胃や腸内をゆっくり移動しながら、コレステロールや中性脂肪を包み込んで体外へ排出するので、血中のコレステロール濃度を下げる効果もあります。
整腸作用で腸内環境が良好に
食物繊維には整腸作用があり、便通もよくします。腸内には6000兆個以上もの腸内細菌が住みつき、「腸内フローラ」という集団を形成しています。この中で善玉菌は胃で消化されず腸まで届く食物繊維をエサにして発酵・分解しながら生きています。
その時に作られる「短鎖脂肪酸」などの酸が悪玉菌の増殖を抑制したり、腸のぜん動運動をうながして便通を助けたりします。えさを与えられた善玉菌はどんどん増えて悪玉菌を減らすので、腸内環境が整っていくというわけです。
また脂肪の蓄積を抑制する、脂肪の燃焼を助ける、小腸からインクレチンと言う食欲を抑制するホルモンを出すなど、短鎖脂肪酸にはダイエットにうれしい効果も期待できます。