
コロナ禍3年目、長引くマスク生活で肌トラブルに悩む声があちこちから聞こえます。夏本番を迎える前に、マスクの下の肌トラブルは解決しておきたいところ。『「コロナ老け知らず」女医の美肌習慣』(双葉社)の著者で「美肌女医」としても注目の形成外科医・皮膚科医、石井美夏さん(63歳)に、「マスクニキビ」や「マスク蒸れ」の正しい対処法について聞きました。
マスクニキビを消すには「やりすぎない」
そもそも、マスクニキビは何が原因で生じるのでしょうか。
「マスクによる蒸れや乾燥によって肌のターンオーバーが乱れ、正常に剥がれ落ちなかった角質層、いわゆる私たちが“肌”と認識している皮膚の一番外側の部分が、毛穴をふさいで炎症を起こすのが主な原因とみられています」(石井さん・以下同)
「洗顔は朝晩2回、短時間で」
肌の炎症を起こさないための対策として、「こまめな洗顔」と「タップリ保湿」がよく知られています。しかし、石井さんは「どちらもやりすぎは危険」と指摘します。
「皮膚科医であると同時に、傷痕をできるだけ元の美しい肌に戻すような治療に長年取り組んできた形成外科医でもある私からすると、洗顔と保湿のやりすぎは危険な気がします。マスクニキビをできるだけ早く撃退するために私がおすすめするのは、『洗顔は朝晩2回、短時間で』『保湿剤は規定量の半分』です」

適度な洗顔と保湿には、実行する際のポイントがあるそうです。
「泡で顔を包み込むように洗顔しましょう。自分のお肌が作ってくれるフレッシュな皮脂膜には大切なバリア機能がありますが、これを壊さないように、ぬるま湯でサーッと30秒間すすぐのがポイントです。
保湿剤は規定量の半分を目安に。使用方法に『500円玉1個分』と書いてある場合は、1円玉くらいを肌にそっとなじませます。塗ったあと、手のひらにヌルっとした触感が残っているのは、明らかにつけすぎ。くすみの元になってしまします」
カサカサ肌の心配は無用
「規定量の半分」と聞くと、お肌がカサカサになるのではと心配する人もいるのではないでしょうか。
「まずは半量を塗って30分待ってみましょう。肌の表面に粉が吹き、カサカサしてくるようならば、もう少しだけ足して様子を見る。これで十分です」
肌を保湿しすぎないことのメリットについて、石井さんはこう指摘します。
「肌は潤いすぎてしまうと、『なあんだ、このままで問題ないよね』と甘えてしまい、新陳代謝を促すサインを皮膚の奥に送らなくなる性質があります。
しかし、プチ緊急事態である『適度な乾燥』にさらされると、がぜん目覚め、自分から綺麗になろうとする力を取り戻します。奥に眠っている新しい肌、基底細胞が古いニキビ肌を押し上げて追い出すべく、せっせと張り切ってくれるのです」
ニキビ隠しに「パウダー」がおすすめの理由
ニキビ肌をカバーするために、リキッドやクリームタイプのこってりしたファンデーションをつけている人も多いのではないでしょうか。石井さんは、そうした人は「今すぐに薄づきのパウダータイプに切り替えを」と推奨します。

「女優肌」のデメリット
「パウダーより粒子が細かく、毛穴をみっちり埋められるこってりファンデは、いわゆる『女優肌』になれるメリットと引き換えに、毛穴落ち現象を引き起こしてしまいます」
毛穴落ち現象とは、ファンデーションの粒子で毛穴が詰まってしまうこと。
「一度毛穴落ちした粒子は、普通のクレンジング程度では完全に取り去ることはできません。その影響で肌のターンオーバーが遅れてしまい、顔色がくすんできます。詰まった毛穴自体が黒い影になるのです。当然、ニキビも増えてしまいます」
毛穴詰まりを取り除くために、焦ってクレンジングやスクラブ洗顔に励むと、毛穴はベタつくのに、肌は乾燥に傾くという、悪循環に陥ってしまいます。そのうえに、長引くマスク生活がトラブルに拍車をかけます。
「蒸れたマスク内部はファンデーションの油分・皮脂・雑菌が反応して、さらなるニキビを呼び起こすことになります。
この悪循環を断ち切るためにも、こってりファンデーションと決別するのが一番です。できればBBクリームも控えめにしたほうがいいですね。
メイクするうえでは少々物足りないパウダータイプですが、肌にとっては、それが逆に強み。粒子が大きいので毛穴落ちの心配もなく、くすみやニキビのリスクも避けられます」
ニキビ予防に「マスク蒸れ」対策を
気温が上がって、汗ばむことの多いこれからの季節に気になるのが「マスク蒸れ」。マスクによる「蒸れ」や「摩擦」もニキビの原因です。
「マスクニキビ対策に『蒸れ』『摩擦』を少しでも避けることは必須。おすすめは、立体的なマスクの着用です。蒸れやすい口周りに密着することもなく、ニキビができにくくなり、こすれも軽減できます」

亜鉛華軟膏で肌を守る
さらに石井さんは、マスク蒸れ対策として薬局などで購入できる第三類医薬品の「亜鉛華軟膏」をおすすめしています。
「亜鉛華軟膏は、赤ちゃんのおしりかぶれの薬として有名で、マスク蒸れにも効果を発揮します。マスク内部は、赤ちゃんのおむつの中のお尻と同じ状態です。おむつかぶれならぬ、マスクかぶれのときには、ハンカチやタオルでそっと汗などの水分を拭い、亜鉛華軟膏を塗ると、肌を蒸れから守ってくれます。
塗る際は、少量のワセリンを混ぜ、肌にチョンチョンと15か所ほど置いてから、そっと塗り広げてみてください」
石井さんがおすすめする「マスクニキビ」対策は、どれも簡単で始めやすいものばかり。マスクによる肌トラブルを抱えている人は、ぜひ実践してみてください。
◆教えてくれたのは:形成外科・皮膚科医・石井美夏さん

1959年生まれ。愛知県名古屋市出身。1984年、信州大学医学部卒業後、国立小児病院、昭和大学医学部形成外科教室およびその関連病院、亀田総合病院・形成外科、皮膚科などでキャリアを積み、2001年、東京・吉祥寺に「美夏クリニック」開院。形成外科・皮膚科・美容外科の3つのアプローチで「患者さんの個性に合った最適な治療法」を提案し、乳児から90代まで幅広い女性たちから信頼を得ている。https://www.mika-clinic.com/doctor/