
子育てなどで忙しかった日々から解放され、一息つく時間が増えるであろう50代。著書『だから、50歳から片づける:「思い出のもの」は捨てなくていい』(CCCメディアハウス)が話題の整理収納アドバイザー・阿部静子さんは、「自分を見つめ直す年代でもある50 代は、片づけ適齢期」と指摘します。5年間で6000人以上に「ハッピーになれる」片づけ指導を行ってきた阿部さんに話を聞きました。
「1日5分」リバウンドしない片づけ術
「片づけを始める前に、『片づけたら、どんな暮らしがしたいか』について考えてみましょう。そうすることで、モチベーションが上がります。50代は人生の新しいスタート。私の講座の受講生には、片づけにより理想の暮らしを手に入れただけでなく、自分に自信がもてるようになったり、ポジティブになったり、『何ごとにも執着しなくなった』というかた、再就職したかたもいます」(阿部さん・以下同)
片づけと聞くと、多くの人が一気にやらなくてはいけないと思いがちですが、実際にやっても「すぐに散らかる」という人が多いのも事実です。リバウンドしない片づけ術として阿部さんが推奨するのは、「1日5分のスモールステップ」。その具体的な方法を聞きました。

「捨てることができる自分」に出合う
「少しずつ片づけることで、不要なものをたくさん持っていたことに気づくことができ、今度は『増やさないように気をつけなくては』という新たな気づきが生まれます。この気づきこそが大切。少しずつ片づけることで、ものと向き合うことができるのです。これは、自分と向き合うことにもつながります」
最初に手をつけるものとして阿部さんが受講生に推奨するのは、「ペン立て」や「化粧ポーチ」です。
「みなさん、『そんな小さなことからでいいんですか?』と目を丸くされ、『それならできそう!』と安堵の表情を浮かべます。大切なのは、やる気に火をつけること。それによって『捨てることができる自分』に出会い、1日5分続けることで『捨てグセ』をつけ、やがて『捨て体質』に変わっていきます」
ペン立て、化粧ポーチで第1歩を
「片づけなければ」と思いながら、忙しさに追われて時間がなく、家にものがあふれた状態のまま「何から始めたらいいかわからない」というのが、多くの人のパターン。阿部さんは、ペン立てや化粧ポーチの整理から「まず第一歩をスタートさせること」が大切だと言います。
「片づけをすると、書けないペンや使わない化粧品と出合うでしょう。それらを手放すのが楽しくなっていくと、次のステップへ進むことができます。最初はひとつ手放すのにも苦労するかもしれませんが、『訓練』すれば選別も早くなります。
どんどん片づくに連れて、5分が10分、30分、1時間と、息切れすることなく増やしていくことができるようになります。いつもは5分で、休みの日だけちょっと長めにするのもいいですね。完璧を求めるのではなく、心地いい暮らしを目指しましょう」
捨てるのは「自分のもの」と決める
一方、自分は気をつけているのに「家族が協力してくれない」「家族のものが多くて片づかない」との悩みを持つ人も多いようです。そのようなケースに対し、阿部さんはこう助言します。

家族のものは捨てない
「家族にものを『捨てさせたい』と思っている人は、逆の立場だったらどうでしょうか。人は、自分のものには思い入れがありますが、他人のものは邪魔に感じてしまうものです。捨てるのは、人のものでなく『自分のもの』、と決めることが大事です。
自分の片づけに集中していると、家族のものは気にならなくなります。片づけをしている姿を見た家族がものを手放してくれたというケースも多く、家族にもよい連鎖が生まれることもしばしばです。楽しく片づけているのが伝わるのかもしれません」
片づけの意外な落とし穴
いざ、本格的に片づけを始めようというとき、多くの人はものを整理するための「収納品」を取り揃えがちですが、阿部さんは「片づけを始めるとき、収納品を買わないでください」と言います。なぜでしょうか?

初めに収納品は買わない
「これまで見てきたお宅では、『押し入れがいっぱいになり、棚を設置したら扉が開かなくなってしまった』、『キッチンに引き出しを設置したら床の空間が狭くなり料理しにくくなった』、『玄関に棚を設置したら物置状態になってしまった』といったケースがありました。いずれも、不要なものを処分したら収納品自体がいらなくなり、手放すことで解決しました。
このように、収納を増やすことが、実は片づけの逆効果になることもあるのです。邪魔になるだけでなく、余計なものを増やすことになってしまう。最初に収納品は買わず、まず不要なものを手放しましょう。
ものを減らせば、高度な収納の技術がなくても片づけがうまくいきます。ものを減らした上で簡単な収納を組み合わせれば、『片づけても、また散らかる』ことはありません」
◆教えてくれたのは:整理収納アドバイザー、フリーアナウンサー・阿部静子さん

宮城県仙台市生まれ。旅行会社の添乗員、航空会社地上職を経てフリーアナウンサーに。28歳の時にミヤギテレビ『OH!バンデス』初代リポーターになり、結婚・出産を経験しながら16年務めた。49歳で体調不良により休養したのを機に整理収納アドバイザーの資格を取得し、講演・講座を中心に活動を始める。「すぐ片づけたくなる」「ラクにできる」「ハッピーになれる」片づけメソッドが人気で、5年間で6000人以上の指導を行う。今年5月、『だから、50歳から片づける:「思い出のもの」は捨てなくていい』(CCCメディアハウス)を出版。https://ameblo.jp/shizuko-happylife/