
部屋を見渡すとあちこちに服があって、そのせいでいつも空間が雑然としている、なんてことはありませんか? 20年以上片付けに悩む家庭の現場を見てきた、幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザーの古堅純子さんが衣類の片付けのヒントとして提唱するのは、“たんす文化”の卒業。その理由を聞きました。
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“たんす文化”を卒業するべき理由とは?
婚礼家具のひとつにたんすがあったことから、日本には“たんす文化”が根付いています。けれど、それが服を片付けられない原因になっているお宅も多いのです。
部屋のあちこちに衣類がぶら下がったり、散乱しがちだったりする家庭でよく見かける問題は、洗濯をする場所と衣類をしまう場所に距離があるということです。特に洗濯物を取り込む場所からたんすが遠いと、通過地点に服を置いてしまうケースが多いように思います。
たんすがあることで部屋が機能しなくなる
和室が主流だった時代と違い、現代の住宅事情では部屋ごとに収納スペースが確保されていたり、ウォークインクローゼットがあったりする家が増えています。その上でたんすを置くと部屋が狭くなりますし、ウォークインクローゼットにたんすを入れてしまい、せっかくのスペースが無駄になっているお宅も見受けられます。

そういう家では、たんすが長年着ていない衣類を溜め込む場所になっていることが多いです。とくに、体力が低下していく60代以降の世代は、大きなたんすの重い引き出しを日々開け閉めすることが億劫になったり、今ではほとんど着なくなった衣類や着物など入っていたりすることが多く、たんすが稼働せず、肥やしになってしまうのです。
物はしまい込まず、使える動線にチェンジ
物はしまうためにあるのではなく、使うためにあります。なので、これからは物をしまう片付けではなく、物を使う片付けを目指すべきです。
しまうことが片付けだとしつけられて、巨大な婚礼家具を嫁ぎ先に持たされた女性は、生涯しまうことをやめない傾向にあります。そういった人は、物が増えるたびに入れ物を買って、しまうための場所を増やし続けています。
こうして余計な収納グッズを買えばそれだけ物が増えて、入れる場所が増えるほど、物が増えるという悪循環が生まれてしまいます。収納グッズに頼っているから物が増えるのであれば、収納グッズを手放す覚悟も必要です。
たんすを手放した後のおすすめ収納法
そこで、たんすをはじめとした物のための収納から卒業して、人のための使いやすい動線を意識した生活空間にリニューアルすることをおすすめします。
まずはウォークインクローゼット部屋をつくる
たんすのある部屋が収納場所というこれまでの固定観念から離れて、例えば洗濯機置き場から一番近い部屋をウォークインクローゼットとして使うなど、動線が楽になるように変えてみましょう。

その部屋にハンガーラックを持ち込み、洗濯した衣類をそこですべて干すようにします。干した服はそのままラックに引っ掛けておけばOK。服を選んで着替えるスペースにしましょう。
歳を取り、足腰が弱ってくると、たんすを開けるためにしゃがんだり、引き出しの開け閉めをしたりという動作がしんどくなることもあります。将来のためにも、ラクチンに衣類を管理できる部屋をひとつ作るのがおすすめです。
“ざっくりボックス”でこまごまとした衣類をラクに管理
たんすの引き出しの中に入れていた下着や靴下などこまごまとしたものは、“ざっくりボックス”を棚に並べて管理するとラクです。“ざっくりボックス”とは、文字通りとりあえず放り込める箱のことです。肌着、靴下、パンツなど箱を分けてもOKですし、スペースがなければひとつの箱にポイポイと入れてもいいでしょう。
この“ざっくりボックス”は、たんすのように毎回引き出しを開閉する手間が省けるので、身につけるときにすぐ手に取れます。また、これじゃないなと思ったときに戻すのも手間いらずなので、あとでしまおう、と思った物で部屋が散らかるのを防ぐこともできます。

片付け=しまう、と教えられた世代のかたこそ、この方法には驚くかもしれません。けれど片付けるのが面倒で散らかるストレスを抱えるくらいならば、しまう片付けはせずに、かけるだけ、入れるだけ、置くだけの“しまわない暮らし”で体に負担の少ない散らからない暮らしにシフトすることをおすすめします。
◆教えてくれたのは:幸せ住空間セラピスト・古堅純子さん

幸せ住空間セラピスト、家事効率化支援アドバイザー。整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、企業内整理収納マネージャーの資格を所持。1998年、老舗の整理収納サービス会社に入社。20年以上現場第一主義を貫き、クライアントのもとへ通う。5000軒以上の家でサービスを重ね、古堅式メソッドを確立。オンラインを含むコンサルティングやメディア出演や講演も行う。著書は累計60万部で、最新著は『「シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新聞出版)。YouTubeチャンネル「週末ビフォーアフター」は、1000万回再生を突破。チャンネル登録者数9万1000人(2022年4月現在)。https://s-d-m.jp/talents/jyunko-furukata/
構成/イワイユウ