
初対面の人との雑談で、とっさに出てくるネタといえば、「今日の天気」という人も多いでしょう。では、天気の話が終わったら次は何を話せばいい? 会話ネタに窮する人に、ヒントをくれるのは、聞き方や話し方に関する著書が多い雑談コミュニケーション専門家・松橋良紀さん。著書『すごい雑談力』(秀和システム)には、雑談のノウハウが網羅されています。その中から、会話ネタとなる11個キーワードを教えてもらいました。
銀座のホステスも使ってる?11のキーワード
松橋さんが教えてくれた11個のキーワードは、トークもヒアリングも超一流の銀座のホステスがよく使うとされる「木戸に立ち掛けし衣食住」というキーワード。これは、次の話題のテーマを頭文字にしてつなぎ合わせた言葉です。
キ=気候、天気
ド=道楽、趣味
ニ=ニュース
タ=旅、旅行
チ=知人、友人
カ=家族
ケ=健康
シ=仕事
衣=衣類、ファッション
食=食べ物
住=住まい
雑談の入り口には、誰に対しても使える天気の話を
まず、挨拶とセットで話題にしやすいのが、天気。古今東西、雑務の入り口に使うには鉄板ネタだと言われています。
「今一緒に見ている風景、感じている気候は、相手も共感しやすいからでしょう。さらに天気予報をチェックして、『明日も暑くなりそうです』『台風が近づいてきているようですね』と、気候情報を加えると、会話もより弾むかもしれません」(松橋さん・以下同)
これは相手を選ばず使える、もっとも無難な話題といえるでしょう。

親密度を上げたいなら、趣味や家族のネタを
そこから一歩踏み込み、親密度を上げるには、趣味などプライベートな情報を雑談で伝え合うことが有効です。
「ただし、例えば『休日は何をしていますか?』と聞かれて『1日中寝ています』と答える人がいたとしたら、それはプライベートに立ち入られたくない可能性があります。それ以上は深入りしないほうが賢明です。
一方、『お菓子作り』や『低山に登っている』など、具体的な行動を教えてくれたら、その答えによって、家族やパートナーの有無、インドア派かアウトドア派か、人付き合いが多い人かどうか、内向的か外向的か、などなどいろいろなことが判断できますし、『いいわね、どんなお菓子?』『どこの山へ行っているの?』などと会話のネタが広がります。
私の経験では、コロナ流行以降、『休日はサブスクの動画配信サービスを見て過ごしている』といった、映画やアニメに関する話題も増えてきました。そんな時は、順に『どんなものを見ているの?』『どんなところが魅力?』という質問をすることをおすすめします。特に、どんな部分に魅力を感じているのか、感動ポイントは何かを聞くことで、相手の価値観を知るきっかけに。相手の価値観が分かると距離がグッと縮まるはずです」

では、よりプライベート度が高い知人や友人ネタ、家族のネタはどのように使うといいでしょうか。
「共通の知人の中で、ぜひ相手に紹介したい人が思い浮かべば、その人のいいところや普段自分がお世話になっていることを話し、相手が興味を持った様子であれば『今度ご紹介しますね』と締めるといいでしょう。
家族ネタは、親密度を高めたい時に有効です。相手にもお子さんがいるようなら、『子供が〇才なんですが、やんちゃで苦労しています(苦笑)。〇〇さんのお子さんはおいくつ?』など。相手にお子さんがいない場合は、自分の親の話を。ただし、相手が親との関係で問題を抱えている場合、表情が曇ったり口が重くなったりするので、そのサインが出たら素早く話題を切り替えましょう」
相手がペットを飼っているならペットの話題も
なお、相手がペットを飼っていれば、家族の一員としてペットの写真を見せてもらったりして、ペットの話をするのもいいでしょう。人は、自分が大事にしている対象を褒めてもらうととても気持ちよくなり、自然と顔がほころんでいくものです。

男女で使い分けたほうがいいのはニュースネタ
中には、男女でネタを使い分けたほうがいい場合もあります。その一つが、ニュースに関するネタ。
「一般的には、男性ならスポーツ関連、女性なら芸能関連のニュースが雑談ネタとして重宝されます。また、自分たちが仕事などで関わる業界ニュースは、情報としても非常に価値が高いので、喜ばれます。普段からアンテナを高くして、情報を取り入れましょう」
男女問わず楽しい気分を引き出しやすい旅行ネタ
一方、男女問わず楽しい気分を引き出しやすいのが、旅行ネタ。

「『今まで行った旅行先ではどこが一番良かった?』と話を振り、相手が旅行先を話し始めたら、観光ガイドをお願いしたつもりでいろいろな情報を教えてもらいましょう。相手は楽しい気分に浸れて上機嫌になり、こちらの質問に対して喜んで話を広げてくれます。
さらにワクワクした気分を引き出したいなら、今後行きたい旅行先を語ってもらうこと。もし相手が海外経験の多い人なら、知らない情報をいろいろと教えてくれるでしょう。相手は話せて気分がいいですし、こちらも知らない情報をたくさん得ることができ、楽しい雑談になります」
健康ネタと仕事ネタは注意が必要
さて、振られて困るのが「私、いくつに見える?」という質問。会話の達人は、どのように答えているのでしょうか。
「思い切って、自分が推定する年齢より10才以上低めに『23才くらいしにか見えませんけど?』とあえて外し、笑いを取ることもあります。そしてそのあとは、『すごくお若いんですね。どんなことに気をつけているんですか?』などと、健康ネタにつなぎます。
このとき、お互いに知っている民間療法を情報交換することもありますが、雑談で正確性にこだわり正しいだとか間違いだとか論争するのは野暮の骨頂。あくまでも親密度を上げるための雑談だと割り切り、“怪しげな健康法”トークを楽しむのもアリです」

同じくプライベートな集まりで仕事について深堀りするのも注意が必要です。
「初対面の雑談で、仕事イコール自分のアイデンティティーというタイプの人が相手なら仕事の話もアリですが、ママ友同士や子供を通じた集まり、趣味のサークルで仕事の話をすると、野暮に思われがち。相手に応じてネタを変えていくのは、雑談の大原則です」
衣食住ネタは、相手を褒めながら質問を
相手の背景が分からない場合は、見た目からネタを探すのも一つの方法です。例えば、ファッション。
「『その組み合わせはとても素敵ですね。どうしたらそんなにおしゃれに組み合わせられるんですか?』などと褒めながら、相手のこだわりを聞いていき、人間関係を築いていく方法もあります。これならあまりファッションに興味や関心がない人でも、できる質問でしょう。
褒められることが苦手そうな相手でも、質問形式であれば何かしら答えてくれ、雑談は続くと思います」
ただし、褒める場所が見つからなければ、無理に褒める必要はないと言います。特におしゃれに気を使っていなさそうな相手であれば、逆効果になりかねません。
食べ物の話は話が広がりやすい
その場合は、食べ物の好みを押さえるのも一つの方法。趣味が少ない人でも、食べ物の好みならあるはず。
「仮に自分が相手の好みの食べ物でおいしいお店を知っていれば、相手にとっては有益な情報になりそうですし、もし相手と将来的に親しい関係になれば、会食をセッティングする時に食べ物の好みは重要な情報になります」

また、住まいの話題も選択肢に。
「男性が女性に対して唐突に『どこに住んでいるの?』と聞く場合は警戒されがちですが、女性同士、あるいは女性が男性に対して、住んでいる地域や出身地を、ごく自然な会話の流れで聞く分には構わないでしょう」
こうした「木戸に立ち掛けし衣食住」の11のネタを頭に入れておき、相手を見ながらネタを選んでいくことが大切です。雑談に花が咲くのは、相手が喜ぶ話。表情や声色を見ながら、ボールを入れ替えして投げていきましょう。
◆教えてくれたのは:雑談コミュニケーション専門家・松橋良紀さん

雑談コミュニケーション専門家、コミュニケーション総合研究所代表理事。営業マン時代、強度の人見知りで、コミュニケーション、特に雑談が大の苦手だったが、心理学を学び一転、全国450人中1位のセールスマンとして活躍。学んだ心理学の手法をもとに、聞き上手・話し上手な営業マンとしてトップセールスを誇る。現在は独立し、聞き方、話し方の専門家としてメディアや講演会などで活動。『すごい雑談力 25万人が自信をつけた話し方・聞き方のルール』(秀和システム)など著書は20冊以上。https://www.nlp-oneness.com/