
50歳を過ぎたら、やりがいのある好きなことを見つけること。すると力を入れなくても自然と成長していく――。50歳から自分の可能性を伸ばすコツを教えてくれる『50歳から花開く人、50歳で止まる人』(PHP研究所)を上梓した作家の有川真由美さんに、50歳から「上っていく人」と「下ってしまう人」の違いを聞きました。
50歳から自分の道を進む人の3条件
「50歳から花開く人は、自分と他人の人生を比較したり競争したりせず、自分の道を進んでいる人です。自分がワクワクしたり、夢中になれることを見つけて生きている人は、前に進む力が自然に湧いてくるので成長します」(有川さん・以下同)
「50歳から仕事で自分の道を見つけている人の条件」は3つ。
・自分のやりたいことをやっている
・得意なこと、強みを生かしている
・社会から求められることで貢献している

「やりたいこと、得意なこと、求められることの3条件が重なると相乗効果で、“得意なことだから求められる”“求められるからやりたくなり、得意になる”というように、どんどん伸びていきます。私のまわりでも、50歳以上で輝きを放つ人たちはこの3条件を満たしています。初めからすごい才能があったわけではありません。これまでに身につけていたスキルを生かせる“自分の役割” を見つけた人たちなのです」
50歳だからこそ大志を抱く
50代になると守りに入り、夢や目標をあきらめて、身の回りで小さな幸せを求めがちになります。しかし、50代だからこそ抱ける大志もあると有川さんは言います。
「自分のできること、できないことを理解している年齢だからこそ、若いころのようにガムシャラな努力や遠回りをせずに、省エネで大きなことも叶えていけるはずです。だから“もう年だから”と夢を葬り去らないでほしい。目的というのは、未来にそれを達成するためのものではなく、夢中で生きるいまを生み出すためにあるのだと思います」

店を出すならまず自宅で
ただし、大きな夢も小さく始めることが肝心です。退職金をすべて使って新ビジネスを始めたもののうまくいかず損失を抱えてしまうケースも少なくありません。
「一時期、リタイア後にそば打ちをはじめることが流行し、やけに蕎麦屋さんが増えたと感じる時期がありました。やりたいと思っていたものも、やってみたら“イメージと違った、自分には向いてない”ということもあります。
だから“やりたいこと”は 1年ごとに更新してもいいんです。お試しのように1年間続けてみれば、答えも出るはずです。合わなければやめて、別のことに挑戦すればいいだけです。大切なのは、自分が楽しめてやれるかどうか。そして、大きなリスクを取らないこと。
店を出すなら自宅で始めてもいいですね。利益が出たら大きくすればいいんです。やりたいこと、興味のあることを、遊び感覚で小さく始める。気負いすぎず、失敗してもやりたいことをやって気が済んだ、と思うくらいの感覚で」
自分の持っている価値をもとにする「わらしべ長者戦略」
『わらしべ長者』とは、ある貧乏人がわらしべを拾い、それにアブを結び付けたものを、子供をあやしていた母親に渡す代わりにミカンをもらう、というように物々交換を繰り返して、最終的に大金持ちになるというおとぎばなしです。その『わらしべ長者』になぞらえたビジネス法を「わらしべ長者戦略」といいます。仕事を次々に変えてもうまくいく人は、この「わらしべ長者戦略」を使っているといいます。

「たとえば、ある60代の女性は旅館で働いているときに“館内にギャラリーを作ってみては”と提案し、そのコーナーを任されたことからアートの造詣が深まって、自分のギャラリーを経営するまでになりました。
私も、着付け講師→ブライダルコーディネーター→カメラマン→フリー情報誌編集者→フリーライター→本の著者、となにかのスキルを元に別のスキルを身につけながら渡り歩いてきました。仕事のなかで経験を積んでいるうちに、自然に求めてくれる人が出てくる。その相手の期待を1%でも超え続けることで、また声をかけてもらえます」
わらしべ長者になるには?
わらしべ長者になる人は、常にニーズに応える人、そして柔軟性がある人です。
「本家の『わらしべ長者』も、わらにアブを結びつけておもちゃにするというアイディアが光っています。その場所で求められるものを提供していたら富豪になったという物語なので、柔軟性は重要です。キャリアを積んだ人ほど頑固になって、プライドが邪魔をして人に頼れず、孤独になりがちです。それでは世界は広がりません。歳を重ねても若い人にも教えてもらう柔軟な姿勢が必要だと感じます」
「嫌なこと」「苦手なこと」を手放す勇気
50歳から伸び伸びと生きるために「やりたいこと」「得意なこと」をすることも大事ですが、もっと大切なことは「嫌なこと」「苦手なこと」を手放していくことです。
「真面目な人ほど、“仕事は好き嫌いせず一生懸命やるものだ”と思い込んでいます。50歳を過ぎたら、そんな呪縛は捨てませんか?そのままでは、やりたいことが見つかっても“時間がない”“余裕ができてから”と、実現できないのがオチです。
嫌なことや苦手なことをやっているのは、お給料がいいから、体裁がいいから、など“外側”ばかり気にしているからかもしれません。それでは自分の内面に目が向けられませんね。“この仕事は本当にやりたいのか”“この付き合いを心から喜んでいるのか”と、いましていることに対して、自分に問いかけてみてください。すると自然にすることが制限され、無駄なものを手放せます。心や時間に余裕ができると、本当にやりたいことが芽生えます」

“大きな石”を見つける
有川さんも「仕事は嫌なこともするべきだ」と突っ走ってきたこともありましたが、いまは人生のすべてをやりたいことで満たし、嫌なことは一切しないと決めているそうです。
「旅をしたい、ボランティアをしたい、なんでもいいんです。それをすぐにスケジュール帳に記入しましょう。壺の中に最初に大きな石を入れるとほかの石が入らなくなるように、あなたの“大きな石”を見つけて、それを最優先してください」
◆教えてくれたのは:作家・有川真由美さん

化粧品会社事務、塾講師、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの転職経験を生かし、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで執筆。内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室「暮しの質」向上検討会委員(2014年・2015年)。今年5月、50歳からの生き方について指南した『50歳から花開く人、50歳で止まる人』(PHP研究所)を出版。
取材・文/小山内麗香