自分の持っている価値をもとにする「わらしべ長者戦略」
『わらしべ長者』とは、ある貧乏人がわらしべを拾い、それにアブを結び付けたものを、子供をあやしていた母親に渡す代わりにミカンをもらう、というように物々交換を繰り返して、最終的に大金持ちになるというおとぎばなしです。その『わらしべ長者』になぞらえたビジネス法を「わらしべ長者戦略」といいます。仕事を次々に変えてもうまくいく人は、この「わらしべ長者戦略」を使っているといいます。
「たとえば、ある60代の女性は旅館で働いているときに“館内にギャラリーを作ってみては”と提案し、そのコーナーを任されたことからアートの造詣が深まって、自分のギャラリーを経営するまでになりました。
私も、着付け講師→ブライダルコーディネーター→カメラマン→フリー情報誌編集者→フリーライター→本の著者、となにかのスキルを元に別のスキルを身につけながら渡り歩いてきました。仕事のなかで経験を積んでいるうちに、自然に求めてくれる人が出てくる。その相手の期待を1%でも超え続けることで、また声をかけてもらえます」
わらしべ長者になるには?
わらしべ長者になる人は、常にニーズに応える人、そして柔軟性がある人です。
「本家の『わらしべ長者』も、わらにアブを結びつけておもちゃにするというアイディアが光っています。その場所で求められるものを提供していたら富豪になったという物語なので、柔軟性は重要です。キャリアを積んだ人ほど頑固になって、プライドが邪魔をして人に頼れず、孤独になりがちです。それでは世界は広がりません。歳を重ねても若い人にも教えてもらう柔軟な姿勢が必要だと感じます」
「嫌なこと」「苦手なこと」を手放す勇気
50歳から伸び伸びと生きるために「やりたいこと」「得意なこと」をすることも大事ですが、もっと大切なことは「嫌なこと」「苦手なこと」を手放していくことです。
「真面目な人ほど、“仕事は好き嫌いせず一生懸命やるものだ”と思い込んでいます。50歳を過ぎたら、そんな呪縛は捨てませんか?そのままでは、やりたいことが見つかっても“時間がない”“余裕ができてから”と、実現できないのがオチです。
嫌なことや苦手なことをやっているのは、お給料がいいから、体裁がいいから、など“外側”ばかり気にしているからかもしれません。それでは自分の内面に目が向けられませんね。“この仕事は本当にやりたいのか”“この付き合いを心から喜んでいるのか”と、いましていることに対して、自分に問いかけてみてください。すると自然にすることが制限され、無駄なものを手放せます。心や時間に余裕ができると、本当にやりたいことが芽生えます」
“大きな石”を見つける
有川さんも「仕事は嫌なこともするべきだ」と突っ走ってきたこともありましたが、いまは人生のすべてをやりたいことで満たし、嫌なことは一切しないと決めているそうです。
「旅をしたい、ボランティアをしたい、なんでもいいんです。それをすぐにスケジュール帳に記入しましょう。壺の中に最初に大きな石を入れるとほかの石が入らなくなるように、あなたの“大きな石”を見つけて、それを最優先してください」
◆教えてくれたのは:作家・有川真由美さん
化粧品会社事務、塾講師、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの転職経験を生かし、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで執筆。内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室「暮しの質」向上検討会委員(2014年・2015年)。今年5月、50歳からの生き方について指南した『50歳から花開く人、50歳で止まる人』(PHP研究所)を出版。
取材・文/小山内麗香