言葉をひとつプラスして気持ちを届けるコツを教えてくれたのは、『感じのいい人は、この「ひと言」で好かれる』(三笠書房)の著者で、コミュニケーションアドバイザーの森優子さん。人に質問するときや、ネガティブなことを伝えるときに好感を持たれる言葉術を教えてもらいました。
「聞きたいことがある」にプラスしたほうがいい「ひと言」
なにか質問をしたいとき、「聞きたいことがあるんだけど」「教えていただきたいことがあるのですが」と切り出すことが多いと思いますが、ここでひと言プラスすると聞かれた相手の対応も変わってくると森さんは言います。
「特に相手が忙しくしている場面において、質問をひとつに絞ってくる人に、相手は安心して答えてくれます。『教えていただきたいことがあるのですが』『聞きたいことがあるんだけど』だけだと、質問の数が曖昧です。この場合は、忙しい最中だと特に、質問を3つも4つもされるのではないかと不安になります。
もしくは、それほど重要な質問ではないかと思い、なにか作業をしていたらその手を止めずに話を聞く『ながら聞き』をせざるを得なくなる場合もあります」(森さん・以下同)
「1点、教えていただきたいことがあるのですが」で手を止められる
実際に、仕事の場面で1点に質問を絞ることが有効だと確信したそうです。
「パソコンとにらめっこしている上司に『教えていただきたいことがあるのですが』と、かくかくしかじか話している同僚が『結局何が聞きたいの?』と、上司に逆質問されている姿を見たことがあります。ところが同じ上司に『1点、教えていただきたいことがあるのですが』と声をかけている仲間には、仕事の手を止めて顔を上げ、質問に耳を傾けているのです。
これは、仕事の場面でなくても有効です。『○点』と数を添えると相手は安心して答えてくれるでしょう」
ネガティブな言葉はポジティブワードへの変換で好かれる人に
神経質な人に「神経質?」と聞いたり、のんびりやさんに「どんくさいね」と言うのは、なかなか相手にとってダメージが大きいもの。相手にダメージを与えることなくネガティブなことを確認するときはポジティブワードへ変換してみましょう。
「神経質という言葉の響きがネガティブなので、神経質な人に『神経質?』という質問は相手を傷つけてしまう場合も。人によっては、『ちょっとのことでも気にする面倒くさい人』と言われているようでショックを受けてしまうかもしれません。そもそも相手のネガティブな面を確認すること自体、本来は避けたいことです。ですが、ときと場合によっては会話の中で十分に起こりうること。
相手の気持に寄り添った心遣いのできる人は、ネガティブなことを確認するときもネガティブな響きの言葉をポジティブなイメージの言葉に変換して聞きます。どこかイライラしているような神経質な人には『どちらかというと、繊細なほう?』と聞きます。
すると『繊細で神経質なほうだと思う』とやんわり認める返事がきます。何度も汗を拭いている人には『どちらかというと寒いほうが好き?』と聞くと、『汗っかきだから冬のほうが好き』と笑顔で答えてくれます。
誰だって、ポジティブな言葉で言われたほうが、嫌な気持ちになりませんよね。自分でもわかっているネガティブな要素だからこそ、ポジティブな言葉で聞いてくれる人には、心を許すようにホッとして、素直に自分を認めたくなるものなのです」
◆教えてくれたのは:コミュニケーションアドバイザー・森優子さん
短大卒業後、西武ライオンズ・西武鉄道のチアリーダーに従事。その後転職し、求人広告の企業営業を担当。入社2年目に「売上、新規売上、新規社数」の目標を完全に達成し、表彰される。退職後、マリアージュコンサルタント事務所を開業。クライアントのコミュニケーション力を向上させ、支持を得ている。メディア出演、企業研修でも活躍中。今年5月、『感じのいい人は、この「ひと言」で好かれる』を出版。https://www.mariage-communication.jp