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夫婦関係を改善させるには猫より犬を飼うべし?幸福度を上げて脳の老化を防ぐ意外な方法

男女のシルエット
夫婦の仲の良さが脳の老化に関係している?(Ph/photoAC)
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忘れっぽくなったり、なんだかやる気がなくなったりといった脳の老化現象は、夫婦仲や人生の幸福度も関係しているーー。そう話すのは、『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)の著者・脳科学者の西剛志さん。脳を活性化し、認知症リスクを下げるための方法を教えてもらいました。

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夫婦関係の改善がなぜ脳によいのか?

夫婦関係は、長年一緒にいるとどうしてもマンネリ化しがち。共通の話題は昔話かテレビの話くらいという夫婦も多いでしょう。

「そんな関係にうんざりとしている人に、夫婦仲をよくする秘訣を、脳の性質に沿った方法でお話しします。実は、夫婦仲がよくなるだけで、脳の認知機能も幸福度も上がるのです」(西さん・以下同)

ハーバード大学の研究では、人間関係での満足度が高いと幸福度が高くなるというデータがあります。夫婦、子供、友人…誰が相手だとしても、自分が仲がいいと思える人がいるだけで、人は幸せを実感できるのです。

「人間は社会的動物なので、一人で生きるよりも周りの人たちと繋がりを感じて生きているほうが幸福度が高くなるようにできています。脳内では繋がりを感じた瞬間にオキシトシンという脳内ホルモンが出て、脳を活性化し、認知機能を高める効果があります。逆に高齢期に感じる孤独感情は認知症の発症リスクを高めます」

老夫婦のイメージ
高齢期に感じる孤独感情は認知症の発症リスクを高める(Ph/photoAC)
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誰かと繋がりを持って幸福を感じることは、脳の視床下部からオキシトシンを出す以外にも脳を活性化する作用があります。脳の前頭前野を活発に利用するので、脳の老化がさらに低下する効果があり、脳の老化を改善してくれるそうです。

脳が若々しくいる人は、肯定的な社会関係のレベルが高いことがわかっているのだとか。だからこそ、身近なパートナーとのつながりから良好にするべきだと、西さんは言います。

マンネリ化した夫婦の関係改善策

夫婦関係の研究は進んでおり、マンネリ化に悩む夫婦は世界的にも多いそうです。西さんがそんな夫婦に提案したい、関係をよくする方法が2つあります。

夫婦で非日常を体験すると幸福感が持続

ひとつ目は、夫婦で新しい何かに一緒に挑戦することです。これは、非日常なことを一緒に体験することが重要なのだそうです。

「ハプニングや不安定なことを一緒に体験することがマンネリ打破になります。一緒に体験することで、記憶に強く残り、そのときのうれしさや幸せな気持ちが持続していきます。一方で、たとえば何かを買うという体験ではうれしさや幸福な気持ちは長続きしないと言われています」

ゴールテープ
非日常の体験が夫婦仲を深める(Ph/photoAC)
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夫婦で枕を互いの体で挟んで障害物競走をするという実験では、仲良くなる効果がかなりあったのだそうです。60秒の制限時間の中で2人が声を掛け合って大盛りあがりでゴールするのは、まさに非日常の体験です。

記念日の特別な食事でもOK

もうひとつは、記念日をきちんと祝うこと。普段はなかなか行かないようなレストランで特別な食事をすることで、新しいことを一緒に体験しているという実感が生まれるからです。

豪華な料理
記念日を一緒に祝うことも夫婦仲を深める方法(Ph/photoAC)
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「夫婦で新しいことに挑戦することと同様に、互いに一体感が生まれます。お取り寄せではなく、一緒に特別な場所に行くことが大切です」

食事だけでなく、ボートを一緒に漕いだり、お化け屋敷、スポーツ観戦、展開が読めないドキドキ感のあるアクションや恋愛映画の鑑賞をしたりといったこともおすすめです。

夫婦関係以外にも!幸福度を高める方法3選

幸福度を高めて認知機能を上げる方法は、夫婦関係の改善だけではありません。3つの方法をお話しします。

幸福度を上げるために犬を飼うのがおすすめの理由

さきほどの通り、孤独感は認知症の発症に大きくかかわっていて、脳の老化を進行させます。ひとり暮らしの人や、夫婦関係が冷めきってしまっていると、なかなか日常の中で人とのつながりを感じるのは難しいかもしれません。

「そんな人におすすめなのが、ペットを飼うこと。ペットがいると、動物に話しかけることで幸福ホルモンであるオキシトシンが出ることがわかっています。また、動物と共に行動すると血圧が下がったり、認知機能の低下を防いだりしてくれるので、孤独感だけでなく、脳の老化そのものを予防する効果も期待できます」

猫と犬
ペットを飼うことで幸福ホルモンが出ることもわかっている(Ph/photoAC)
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特におすすめなのは犬を飼うこと。犬を飼うと認知症のリスクが減り、さらに介護リスクや死亡リスクまで減ることがわかっています。この効果は、猫を飼う人には見られなかったそうです。

「ほかにも犬の世話をすることは高度な脳の機能を使うので、認知機能の向上につながります。さらに、散歩をすることで自動的に運動習慣がつき、外に出て日光を浴びる量が増えればセロトニンが出やすくなって、幸福度も高まります。犬の散歩は人のつながりも生まれやすいので、メリットが多いのです」

感謝の手紙を書く習慣も幸福度アップ

手書きをすることも、脳の認知機能へのプラス効果があるといいます。手で書くことは、特に記憶の定着に効果があります。体を動かすだけでなく、視覚、筆記の音、感触など、五感から刺激が入るために記憶に残りやすいそうです。

特に文通は、手書きの効能に加えて、人とのコミュニケーションとダブルの効果があるのでおすすめ。感謝の手紙を書くと人生の満足度が高まるという研究結果もあると西さんは言います。

「感謝の手紙は、自分の想像以上に相手が喜んでくれることがあるからです。そうして心の距離が近づき、信頼関係が生まれることがあるので、何かをしてもらったときは感謝の手紙を書くことを習慣化していくのもいいと思います。幸せも実感できる、とてもよい習慣です」

お茶とレターセット
手紙を書いたり、文通をしたりすることも脳の老化予防におすすめ(Ph/photoAC)
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昔のよかったことを思い出すことは脳の栄養

幸福度が高い人を調べると、過去の楽しい思い出を振り返る頻度が高いことがわかっているそうです。

「幸せは、過去の楽しかった記憶の数に比例すると言われています。現在幸せを感じられなかったとしても、過去に楽しい記憶を持っていれば幸福度は高まります。それを思い出す頻度が高いほど幸福度が上がりやすいのです。ものを買っただけでの幸せは長く続きませんが、幸せの思い出は長続きします」

過去の楽しい思い出を振り返るだけでなく、人は24歳前後に流行っていた曲を最も好むという調査結果があるので、そのころの曲を聴いたり、カラオケで歌ったりするのもおすすめ。ほかにも同窓会に行く、写真を見返すこともよいそうです。

脳に限らず、楽しいことを振り返ったほうが病気の回復率が高まるという研究結果も。楽しい思い出には、よいことがつまっています。

◆教えてくれたのは:脳科学者(工学博士)、分子生物学者・西剛志さん

西剛志さん
脳科学者(工学博士)、分子生物学者の西剛志さん
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東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポートしている。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)をはじめとして累計17万部を突破。http://www.trdesign.jp/designer.html

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