寒さが厳しいこの時期は、ストーブによる着火事故、漏電火災、エアコン不調など家電製品まわりに思わぬトラブルが発生することがあります。こうしたリスクに備えて今からできることは? 家電ライターの田中真紀子さんに解説してもらいます。
建物火災は2月がいちばん多い!
総務省消防庁の統計によると、2021年の火災発生状況は12月から4月が多く、冬期、寒さが厳しくなるほど火災が増える傾向にあります。中でも2月は建物火災が2140件と最多。また、1月26日、NITE(製品評価技術基盤機構)も、寒い時期に被害が増えることから、ガスコンロや、ストーブなどの暖房器具の火が服について燃え上がる事故に注意するよう呼びかけています。
実は石油ストーブより電気ストーブの方が危険?
田中さんも、電気ストーブの火災事故について注意を呼びかけます。
「冬は空気が乾燥するため、火災の件数が増えてきます。その火災の一因となるのが暖房家電。中でも、電気ストーブの使い方には注意が必要です。
火災の危険が高いと思うものについて東京消防局が2016年に質問したアンケートによると、『石油ストーブ』と答えた人が80.1%であるのに対し、『電気ストーブ』と答えたのはわずか4.2%。ところが実態はというと、電気ストーブによる火災が76%であるのに対し、石油ストーブは11%と、大半が電気ストーブだったのです。
主に遠赤外線ヒーターを使う電気ストーブはヒーター部が露出しているため、布がかかると燃焼する可能性があります。実際、電気ストーブによる火災の多くが、布団や洗濯物など可燃物の近くにあり、そこから着火して燃え広がるというもの。また、電気ストーブを背にして暖を取っていた男性の服が長時間の加熱で燃え上がり、やけどを負った事例も報告されています。
石油ストーブは危険なものであるという意識があるため、つけっぱなしで目を離すことは少ないと思いますが、電気ストーブはつい油断して目を離したり、そのまま就寝してしまう人も少なくありません。目を離すときや寝る前には必ず消し、ストーブの近くに衣類や燃えやすいものを置かないなどの注意が必要です。
就寝中に使いたい場合は、オイルヒーターなどを選びましょう。オイルヒーターはオイルを温めることで熱を出しており、ヒーター部も露出していません。そのため火事のリスクが少なく睡眠中の使用も可能なのです」(田中さん・以下同)
漏電、トラッキング現象による火災も
漏電が原因となる火災にもご注意を。漏電とは、電気を覆う被膜が古くなったり傷ついたりして、電気機器や電気コードなど電気が本来通るべきルートを外れて流れ出ること。
「冬は、ヒーターなど消費電力の大きい暖房家電を使う機会が増えますが、電気機器や配線の劣化、結露による湿気から漏電が起き、発火する可能性が高まるのです。さらに電源プラグなどにたまったほこりが空気中の湿気を吸収することで漏電するトラッキング現象も、乾燥する時期のほうが火事につながりやすくなります。
漏電を予防するためには、古い暖房家電はコードが断線していないか確認し、不安があったら使用を中止しましょう。結露しやすい場所での使用を避けることも大事です」
ブレーカーが落ちたときは要注意!
それでも漏電していたら…? 実は、漏電に気づくタイミングがあるそうです。それは、ブレーカーが落ちた瞬間。
ブレーカーには、使用電流(単位=アンペア)が電力会社との契約値を超えたときに自動的に電気を止める「アンペアブレーカー」、配線や家電に漏電が見受けられたときに自動的に電気を止める「漏電ブレーカー」、使用電気機器の合算電力が配線の規定値を超えたときに配線(回路)単位で自動的に電気を止める「安全ブレーカー」の3種類があります。この中で、「漏電ブレーカー」が落ちたときは要注意。
漏電ブレーカーが落ちたらやるべきこと
「漏電ブレーカーが落ちたときは、家庭内のどこかで漏電が起きています。その状態で放置すると、感電や火災が起きる原因に。まずは漏電している回路を見つけるために、3種類すべてのブレーカーを切りましょう。
次に、アンペアブレーカーと漏電ブレーカーを『入』にし、安全ブレーカーを1つずつ『入』にします。すると、どこかで漏電ブレーカーが落ちるはずなので、そこで『入』にした回路が漏電した場所と特定できます。その部屋の中から、電源コードが傷ついた家電など、さらに漏電家電を探します。見つけたら、安全ブレーカーを切った状態でその家電のプラグを抜きましょう。もちろん、漏電していた家電は修理や買い替えの検討を」
外気温が大きく下がるとエアコンの暖房が止まるのはなぜ?
ほか、厳冬期には外気温が大きく下がることで、エアコンの暖房が停止することも。
「あまりにたびたび止まると、『エアコンが壊れたのでは』と不安に思う人も多いようですが、実はこれは通常運転時に起こる現象。エアコンは暖房時、室外機が空気の熱を奪うため、室外機が冷えて霜がついてしまいます。そのため一時的に室内に送っていた熱を止め、霜を溶かすために使うのです。これを『霜取り運転』と言います」
霜取り運転が始まったら?
霜取り運転が始まると寒く感じるため、運転を止めたいと思う人もいるかもしれませんが、次のような操作はNGだと、田中さん。
「霜取り運転に入らないよう、室外機にお湯をかけたらいいのでは、という声を聞きます。ですが、水やお湯をかけても凍結する可能性もあるうえ、故障にもつながりかねませんので、やめましょう。霜は、設定温度と外気温の差が大きければ大きいほどつきやすくなりますので、可能な範囲で設定温度を下げると霜がつきにくくなります。必要に応じてサポート暖房を使うのもいいでしょう。
なお寒冷地仕様のエアコンの中には、独自の工夫により、霜取り運転中も暖房運転が止まらないものもあります」
さて、こうしたリスクに対応した厳冬期おすすめの家電製品は、次の通り。