
「青春18きっぷ」を聞いたことはあるけれど、使ったことはないというかたが多いのでは? 旅行ジャーナリストの村田和子さんによると、「宿泊旅行はもちろん、日帰りでも楽しめて、春の旅にはぴったり」とのこと。今回は、青春18きっぷについて村田さんにうかがいます。春旅の参考にしてみては?
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「青春18きっぷは、何歳でも利用OK」と知りつつ、なかなか使う機会がなかった私。昨夏に思い立ち50歳を過ぎて初めて利用してみました。結果、お得なばかりか、旅の楽しみも広がり「もっと早く使えばよかった!」と後悔したほど。
ただ、大人が青春18きっぷを利用する際には、注意点もあります。今回は関西発着の岡山・高松の旅を通して、青春18きっぷの魅力と気を付けるべきポイントを紹介します。
まずはおさらい。「青春18きっぷ」のキホン
最初に青春18きっぷの基本をおさらいしておきましょう。簡単にいうと、JRの普通・快速列車の普通車自由席に1日あたり2410円で5回乗れるお得なチケット(期間限定)。2023年の春用は、2023年3月1日(水)~4月10日(月)の期間に乗車ができます(発売は3月31日(金)まで)。
以下主なルールをまとめておきますが、細かなルールもあるので、JR各社のページで詳細を確認してからご利用ください。
・JR各社が発売し、価格は5回分で1万2050円
・1回で1日、全国のJR線の普通・快速列車の普通車自由席及びBRT(バス高速輸送システム)、JR西日本宮島フェリーに自由に乗り降り自由(細則は省略)
・特急券を買っても新幹線や特急には乗車できない(北海道新幹線の一部を除く)
・5回分は、ひとりで5日利用してもいいし、5人で1日利用するなどもOK
・発売は春・夏・冬の3シーズン
「青春18きっぷ」買い方は?どれくらいお得?
私は、関西発着の岡山&香川3泊4日の旅で、行きと帰りに青春18きっぷを利用しました(途中の岡山から香川へは、フェリーで瀬戸内海を渡りました)。
行きは自宅最寄りのJR神戸線の駅から乗車し、まずは岡山へ。帰りは高松駅から乗車し、出発駅に戻るという行程です。

青春18きっぷはJRの駅の券売機で買えて、利用期間内なら購入当日から利用できます。どれくらいお得かといえば、例えば今回の旅を新大阪駅起点で考えると、岡山駅までは新幹線なら6140円(所要:約45分)、青春18きっぷなら2410円(所要:約3時間)。
帰りの高松駅から新大阪までは、新幹線なら7780円(所要:約2時間)、青春18きっぷなら2410円(所要:約3時間40分)。往復で考えると、新幹線や特急を利用すると1万3920円かかるところが、青春18きっぷなら4820円で行けちゃいます。ただし時間は往復で4時間近く多くかかります。利用したいかどうかは、それぞれの好みや価値観によるところが大きいでしょう。

青春18きっぷはどんな人が向いている?注意点は?
普通列車は、特急や新幹線と比較すると速度ものんびりしており、車窓の景色もじっくり楽しめます。特に今回のルートは車窓から海がきれいに見えて、天気もよかったので、写真を撮る手が止まりませんでした。加えて車内は日常利用の地元の人が多く、移動しながらその地ならではの生活が感じられ、眺めるだけで楽しく、私は長い時間の移動は気になりませんでした。

一方で普通列車なのでシートは固く、新幹線や特急のように快適ではありません。向かい合わせのBOXシートではなくロングシートの車両も多く、時間によっては混みあうことも。今回は、ほとんど座れたのでよかったのですが、立って移動というリスクもあります。
以上を考えると、青春18きっぷが向いているかたは
・自由気ままに住むように旅をしたい
・移動も旅の一部として楽しめる
・体力にはある程度自信がある
他方、以下のかたは避けたほうがよいでしょう。
・移動は快適さ重視
・体力的に長時間の座位はつらい(腰痛など)
・旅先での滞在時間を多く確保したい
少しでも快適に利用するためには、以下も心がけるといいですよ。
・荷物はできるだけ少なく身軽に(キャスターは階段を上り下りできる重さまで)
・通勤・通学などの時間帯は混みあうので避ける
・長い距離の際は、始発駅から乗るなど、座席を確保できる行程にする
・お気に入りの音楽や本を持っていく
手軽に利用するなら、ちょっと遠出の日帰り旅行!
私は宿泊旅行で利用しましたが、まずは遠出の日帰り旅行から始めるのもいいでしょう。1日で往復するので、2410円÷2=1205円(片道)より遠くへ行くなら元が取れ、途中下車をして寄り道をしたり、少し足を延ばしてみたり。気ままにルート変更ができる自由さがあります。
例えば、東京駅から小田原駅、大阪駅から姫路駅などは狙い目。片道1時間半程度で無理なく行くことができ、乗車料金は片道1520円、往復で3040円。青春18きっぷなら往復で630円安く行くことができます。


同行者がいる場合の注意点。合流場所を考えよう
青春18きっぷは、1枚で発券され、日付のスタンプが5回押せるようになっています。初めて改札を入る際に、日付入りのスタンプを押してもらうことで利用スタートとなります。あとは改札でスタンプの日付を見せればJR全線が乗り降り自由になります。

冒頭のルールにある通り、5回は複数人で利用してもOKですが、きっぷは1枚しかありません。車内での待ち合わせはできず、改札外で合流し、一緒に改札を通る必要があります。合流地点までJRを利用する場合も、きっぷを持っていない人は料金が別途かかりますので注意しましょう。
今回の旅では、京都に住む息子が一緒でした。まず京都駅で息子がきっぷを購入し、1つスタンプを押してもらい乗車。私が乗車する駅で一旦下車し、改札外で待ち合わせ。改札で私の分のスタンプをもう一つ押してもらい目的地へ2人で向かいました。帰りも私が下車するときには息子は一度下車して改札を出る必要があります。必ず改札はきっぷと一緒でなくてはいけないと覚えておきましょう。
5回分を使いきれない場合、払い戻しはありません。我が家は今回の旅で2名が往復したので4回分を利用。残り1回は、息子が京都から名古屋までの日帰り旅行で使いました。
今回は春の期間途中での掲載になりましたが、設定期間の早めに購入しておくと、使い残しのリスクも減り、どこへ行こうかというワクワク感も楽しめます。
■青春18きっぷ│トクトクきっぷ:JRおでかけネット (jr-odekake.net)
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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