
強力粉やバターなどの材料を入れてボタンを押せば、自動でパンを焼き上げてくれるホームベーカリー。最近では、しっとりした、きめ細かくやわらかい「生食パン」をはじめ、こだわりを追求した食パンが作れる機種も登場しています。ひと昔前に比べ、作れるパンの種類や使い勝手はどれほど進化しているのでしょうか。ホームベーカリーの最新事情を家電ライターの田中真紀子さんに解説してもらいます。
コロナ禍以降、ホームベーカリーの人気が再燃
まず、ホームベーカリーができることは何か、改めて教えてもらいました。
「ホームベーカリーは、1987年に日本で誕生してから何度となくブームを繰り返してきました。直近では2010年頃に最大の第四次ブームを迎え、その後徐々に下火になりつつありましたが、コロナ禍による外出自粛の影響も受け、再び注目を集めています。
最大の魅力は、材料を入れてボタンを押すだけで、誰でもおいしい食パンを焼くことができること。主な材料は、強力粉、スキムミルク、ドライイースト、無塩バター、砂糖、塩など、スーパーマーケットで手にはいるものばかりです。
さらにホームベーカリーで生地を作ったあと、伸ばして巻いたり丸めたりしてオーブンで焼けば、ロールパンや丸パンなど、多彩なパンが作れます」(田中さん・以下同)
しばらくすると使わなくなる理由は…
手軽においしい食パンが焼けるため、使いはじめるとハマりやすいホームベーカリー。ただ、しばらくすると使わなくなる人も…。
「その理由は、まず、各材料を細かく計量しなければならない点。特に数g単位で測らなければいけないものもあり、徐々に面倒になってしまいます。
また食パンを焼く工程には練ったり発酵させたりと、一定の時間がかかります。焼き上がるまでの時間も、通常4時間以上かかる食パンがほとんど。食べたいときにすぐに食べられないのも、使い勝手が悪く感じるポイントのようです。
とはいえ、今は手間や時間を大幅にカットした商品も出ています。例えば、ホームベーカリー用の食パンミックスは、強力粉や塩、砂糖などがはいっており、それを入れればあとは水を注ぎ、付属のドライイーストを入れるだけでパンが焼けます。
また、炊飯器の早炊きコースのように、2時間以内でパンが焼けるコースもあります。こうした時短商品や機能をうまく使いこなせば長く楽しめるかもしれません」
「生食パン」「高加水パン」「低糖質パン」などメーカーごとにこだわりのパンを追求
さらに近年のホームベーカリーは、その時々のブームにあわせてメーカーごとに独自の進化を続けています。

「例えばパナソニックは、近年の高級食パンブームを受け、“生食パン”とよばれるしっとり甘い食パンが焼けますし、シロカもやはり近年トレンドとなっている高加水パン(水分量が多いパン)のメニューを搭載しています。また低糖質パンのレシピを搭載しているモデルも複数あります。自分好みのおいしいパンが焼けることで、ホームベーカリーを継続して使う人も増えてきているようです」
機能も進化し、ニーズに合わせてより選びやすくなった
どのホームベーカリーも魅力的に見えますが、選び方に迷ったら何を基準にしたらよいのでしょうか。

「やはり上記の“使わなくなる理由”から検討することが大事です。例えば、4時間以上時間がかかるのは日常的に使いづらいなら、予約しやすい機種か、60分程度で焼けるコースも搭載している機種を選ぶといいでしょう。
寝る前に予約し、朝焼きたてを食べたい人は、静音性のチェックが必要です。明け方に練り工程にはいると、ガタガタ揺れる場合がありますので。
予約する場合、気温が高いと運転前にイースト菌が発酵し始めてしまう場合も。気になる人はイースト菌の後入れ機能があるモデルを選ぶと安心です」
中でも田中さんが今注目している最新モデルは、次の通り。どちらも、各種パンメニューに応じた食パンミックス粉があり、1回(1斤)分の材料が個包装でセット販売されています(パンメニューによっては非販売)。このミックス粉を使えば、あとは水と付属のドライイーストを入れるだけで、ふわっとおいしいパンができあがります。
【1】パナソニック『ホームベーカリー ビストロ SD-MDX4』

1年を通して安定的においしいパンを、さらに本格的なパンを自宅で味わいたい人におすすめなのがこちら。
プロの技術が集約された極上のパンを自宅で
「1987年に世界で初めてホームベーカリーを作り(※)、ホームベーカリー市場を牽引し続けるパナソニック。初代モデルから、イースト自動投入機能を搭載しています。
最新モデルは、プロの技法を取り入れた『3D匠ねり』と、室温の変化によってイーストの混ぜこみタイミングやプログラムを自動で調整する『Wセンシング発酵』を搭載。1年を通して安定的においしく焼けます。どのパンも味は間違いないですが、特に人気高級食パンの『乃が美』監修による『生』食パン風レシピが好評。本格パンを失敗なく焼きたい人におすすめです」

パナソニックは、既存の食パンミックス粉に加え、『低糖質パンミックス』(1斤×5袋入りで2480円)も新たに販売。自宅に各種ミックス粉を揃えておき、その日の気分で焼きたいパンを選ぶのも楽しいでしょう。
※同時期に船井電機もホームベーカリーを発売
【2】シロカ『おうちベーカリー ベーシック プラスSB-2D151』

リーズナブルな価格で多彩なパンを味わいたい人におすすめなのがこちら。
1時間以内で焼き上げるメニューも搭載

「1万円台の価格ながら、ベーシックな食パンからトレンドを意識したパンまで、多彩なレシピを搭載。特に業界で初めて(同社調べ)、しっとりした味わいの『高加水パン』メニューを搭載しています。低糖質パン、58分で焼ける超早焼きパンに加え、ユニークなのが、無添加の『あこ天然培養酵母・即日活性種』を使った『天然酵母生種起こし』による天然酵母パン。手早くパンを焼きたい人、こだわりのパンを焼きたい人にもってこいです」

超早焼きパンは、ミックス粉も販売されている(1斤×4袋入りで1098円)ため、思い立ったらすぐ焼けるのもうれしいですね。
計量や各種材料をそろえる手間を省きながら、本格的な焼き立てパンを味わえるのが今の時代。新年度、あわただしい生活に備えて検討してみてもいいでしょう。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電や美容家電を中心に家電に詳しいライター。雑誌やウェブなど多数のメディア
で、新製品などをレビューしている。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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