夏に注意喚起される熱中症。これは体内の水分や塩分の不足、体温の上昇などにより、体温調節機能の不調により起こる症状の総称です。しかし、春にも熱中症になる人は少なくありません。春に熱中症になる理由や対策を、登録者数60万人を超えるYouTubeチャンネルで人気の内科医の橋本将吉さんに解説してもらいました。
なぜ春に熱中症になるのか
暑い日に汗をかいているのにもかかわらず、うっかり水分補給を忘れて気分が悪くなる…。そんな体験をした人は多いのではないでしょうか。軽度の熱中症は倦怠感や吐き気ですみますが、重度になると意識障害やけいれん、最悪の場合は多臓器不全などを起こして死に至ります。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
「人は40℃以上の高熱が続くと細胞の働きに支障をきたすため、体温が上がりすぎると汗をかくなどをして体の外へ熱を逃がそうとします。その際に、水分や塩分が失われて脱水状態になったり、熱の産生と放散のバランスが崩れて体調を崩します。そのため、夏はこまめな水分補給や、少しでも体の異変を感じたら日陰で休むように呼びかけられているのです」(橋本さん・以下同)
更年期でのエストロゲンの減少も影響
夏ほど気温の上がらない春にも熱中症リスクがあるのは、春特有の気候も関係しているといいます。
「一番の理由は、“春だから”と油断していることです。冬を抜けたばかりの春先でも、昼間は一気に気温が上がります。少々汗ばんでいても、“それほど暑くない”と水分補給を怠りがちです。また“水を飲むと体が冷えてしまう”と、意図的に飲まない人もいます。
また、冬は寒いため運動不足になりがちです。すると、筋肉の衰えや基礎代謝の低下で、発汗しにくい体質になっています。汗をかかないと体温調整がうまくいかず、熱中症のリスクが上がります。
元々女性は男性に比べて筋肉量が少ないことに加え、50代以降は更年期に女性ホルモンであるエストロゲンが減少して、体温調節がうまくいかなくなってきます。意識的に運動をして筋肉量を増やし、水分補給をすると安心です」
「喉が渇いた」と体に要求される前に、こまめな水分補給を心掛けたいものです。体の冷えが心配な場合は白湯を飲むといいでしょう。
熱中症予防のさまざまな対策
熱中症の対策は、水分補給と体温調整が軸になります。
「汗をかいた時には、水分だけではなくミネラルも失われています。ミネラルが足りなくなると低ナトリウム血症を引き起こし、頭痛やしびれを感じることがあります。熱中症予防の水分補給として、日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の塩分を推奨しています。スポーツ飲料や、水と塩飴を組み合わせると手軽に補給することができます」