
目が赤くなったりかゆくなったりする結膜炎。花粉の影響でも起こりますが、花粉症シーズンをすぎても症状が改善しなければ、他の原因があるかもしれません。「放置せずに、原因に応じた適切な対処をすることが大切です」と話す管理栄養士の池田明日香さんに、結膜炎の対処法と症状の緩和や治りを早める効果が期待できる食材について教えてもらいました。
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結膜炎の症状と原因・対処法
結膜炎は、白目の表面を覆う結膜が炎症を起こす疾患です。その原因は大きく3種類に分けられます。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎とは、花粉やハウスダストなどのアレルゲンにより結膜が炎症を起こす疾患です。
花粉が原因である場合、症状は花粉が飛ぶ時期のみにあらわれ、春はスギやヒノキ、初夏はカモガヤ、秋はブタクサなどが主なアレルゲンとなります。一方、ハウスダストやダニが原因である場合、一年中症状が続きます。そのほかに、子供に多くみられ重症化しやすい春季カタルや、アトピー性角結膜炎、コンタクトレンズなど異物の刺激による巨大乳頭結膜炎も、アレルギー性結膜炎の一種です。
アレルギー性結膜炎の特徴は、強い目のかゆみです。加えて、目の充血や異物感、目やに、涙目、まぶた裏の粘膜に白いブツブツができるといった症状があらわれることがあります。

治療には、アレルギー反応を抑える抗アレルギー点眼薬を用いるのが一般的ですが、症状が強い場合はステロイド点眼薬を使用することもあります。
アレルギー性結膜炎の対策として、まずはできるだけアレルゲンに触れないことが大切です。花粉対策のために外出時はマスクや帽子、眼鏡を着用し、帰宅時は外で服についた花粉を払い落としてから家の中に入りましょう。また、ハウスダスト対策にはこまめな掃除をし、ハウスダスト除去機能のある空気清浄機を使うことなどが有効です。

ウイルス性結膜炎
ウイルスに感染することで起こるのがウイルス性結膜炎です。流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎の3種類が挙げられ、感染力が強く人にうつりやすいものは「はやり目」とも呼ばれます。
流行性角結膜炎と咽頭結膜熱は、アデノウイルスによって起こる結膜炎です。流行性角結膜炎は急に白目が真っ赤になり大量の目やにが出るのが特徴で、まぶたやリンパ節の腫れが生じます。さらに、重症化すると角膜びらんを伴い目の痛みが出ることもあります。

咽頭結膜熱は、結膜炎だけでなく喉の痛みや発熱、場合によっては吐き気や下痢といったお腹の症状も伴います。
急性出血性結膜炎は、エンテロウイルスまたはコクサッキーによるものです。症状はアデノウイルスによる結膜炎と似ていて、初期は目がゴロゴロするのが特徴です。
また、はやり目以外には、単純ヘルペスウイルスや帯状ヘルペスウイルスによるものがあります。
ウイルス性結膜炎には特効薬がなく、炎症の抑制や細菌の混合感染を予防するための点眼薬を使用します。家族や周りの人にうつさないために、手洗いの徹底やタオルを共有しないといった注意が必要です。
細菌性結膜炎
細菌性結膜炎は、インフルエンザ菌や肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などの細菌が原因となって起こります。子供や高齢者に多く、インフルエンザや風邪に伴って感染しやすくなります。
黄色ブドウ球菌は常在菌として健康な人にも存在しているものですが、体の抵抗力が落ちたり目にけがをしたときには結膜炎の原因となることがあります。細菌性結膜炎は黄色い粘り気のある目やにが出るのが特徴で、目の痛みやゴロゴロとした違和感を伴うこともあります。

治療は、抗菌点眼薬の使用が一般的です。ウイルス性結膜炎と同じく、こまめな手洗いやタオルを共有しないなどの対策が大切です。
結膜炎を早く治すのにおすすめの栄養素&食材
結膜炎の症状を鎮めるのに役立つ栄養素と食材をご紹介します。あくまでも栄養素のバランスが整った食事を摂ることが基本ですが、下記の栄養素を意識して取り入れることで、結膜炎の回復が早めることが期待できます。
ビタミンA(β-カロテン)
ビタミンAは、皮膚や目の粘膜を健康に保つのに欠かせない栄養素です。ビタミンAは、涙を目の表面に留めるために必要な物質を産生する働きがあります。また、角膜の上皮細胞を修復するヒアルロン酸の産生を促進します。そのため、目の潤いを保って乾燥から守り、傷ついた目の回復を助ける効果が期待できます。

ビタミンAは、レバーやうなぎ、ほたるいかなどに多く含まれています。注意点として、ビタミンAは体内に蓄積しやすく、過剰に摂取すると体に害を及ぼす可能性があるため、食べ過ぎないようにすることが大切です。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、18歳以上の男女ともに2,700μgRAE(レチノール活性当量)の耐用上限量が設けられています。豚レバーなら20g程度、うなぎなら100g程度を目安にしてくださいね。
また、色の濃い植物性の食品に含まれるβ-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。β-カロテンは過剰症の心配がほとんどないため、にんじんやかぼちゃ、ほうれん草、モロヘイヤなどを取り入れてみましょう。β-カロテンは油と一緒に摂ることで吸収率が高まりますよ。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は人間の体内では作ることができない必須脂肪酸です。オメガ3脂肪酸は抗炎症作用をもつことがわかっており、アレルギー性結膜炎の症状を緩和する効果が期待できます。

オメガ3脂肪酸は、アマニ油やえごま油などのほか、魚の油にも含まれています(DHA、EPA)。とくにさばやさんま、いわしなどの青魚、さけ、まぐろなどに豊富です。ただし、オメガ3脂肪酸は酸化しやすい性質をもつため、アマニ油やえごま油は、ドレッシングなどにして加熱せずに食べるようにしましょう。魚は刺身など生で食べるのがおすすめですが、缶詰などにも含まれているので、生活に合わせて活用してください。
結膜炎に有効な漢方薬
自然由来の医薬品である漢方薬は心と体の不調を根本改善し、副作用が少ないので、結膜炎の改善にもおすすめです。

結膜炎の症状には、「炎症を抑える」「目のかゆみを抑える」「目の痛みを抑える」などの症状を緩和する生薬を含む漢方薬を選びます。また、「水分の巡りをよくして、目を潤わせて異物を排出する」「免疫力を高めてウイルスやアレルギーの繁殖を抑える」「血流を改善し、酸素や栄養を全身にいきわたらせることで体質を改善する」ことなどを目的とした漢方薬を複合的に選びます。
結膜炎でお悩みの人におすすめの漢方薬2つ
・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
体の「水」(すい・血液以外の水分)をコントロールし、余分な水分を排出して水分代謝を正常にしつつ、体を温める作用があります。花粉症などアレルギー性の症状にもよく用いられています。
・葛根湯(かっこんとう)
首から上の熱を発散させることにより、急性の炎症を鎮める漢方薬です。風邪や肩こりなどによく用いられますが、結膜炎にも効果があります。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:管理栄養士・池田明日香さん

いけだ・あすか。管理栄養士。大学卒業後、管理栄養士として治験コーディネーター業務に携わった後、食品メーカーにて料理教室運営や商品・メニュー開発などに従事する。食事を楽しむことと健康的な食生活の大切さを感じ、現在は食と健康関連のコラム執筆、オンラインでのダイエットサポートなどで活動中。さらに、今までの経験をいかし 、「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/ )などで情報発信している。