気象病になると頭痛や関節痛、イライラ、意欲低下などさまざまな不調を招き、日常生活に支障が出ることがある。「冬に気象病が起こる原因には、気温や気圧が低くなること以外に、日照時間の短さが関係しています」と話すのは医師の木村眞樹子さん。冬の気象病の原因や対策方法を教えてもらった。
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冬の気象病の原因
気象病とは、気圧や温度、湿度の変化により、頭痛、腰痛、めまい、だるさ、血圧低下、自律神経失調、精神症状など、さまざまな不調が起こることをいいます。関節リウマチや気管支喘息などの持病がある場合、症状が悪化することもあります。
気象病の主な原因は、自律神経の乱れです。冬は寒気による気圧や気温の低下や、暖房の使用による室外と室内の気温差などの原因により、自律神経が乱れやすくなります。
また、日光を浴びることで分泌が促進されるホルモンで、自律神経を整える効果のあるセロトニンが低下することも冬の気象病に関係しています。冬は日照時間が短くなるためセロトニンの分泌量が減少しやすく、自律神経の乱れにつながります。
冬の気象病の対策方法
冬の気象病対策としては、自律神経を整える生活習慣を実践することが有効です。また、天候と体調の関係を記録することで、体調管理がしやすくなるでしょう。
生活習慣を見直す
生活習慣全般を見直し規則正しい生活を心がけることで、自律神経を整えることにつながります。
まず、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促し、交感神経と副交感神経の切り替えを促すことが大切です。メラトニンは睡眠と覚醒のサイクルを調整するホルモンです。
スマートフォンやパソコンから発せられるブルーライトや照明の強い光は、交感神経を刺激して脳を興奮状態にし、メラトニンの分泌量を低下させます。スマートフォンなどの就寝前の使用は避け、寝室は間接照明などを活用しましょう。
メラトニンはセロトニンを材料に作られるため、起床後はカーテンを開けて日光を十分に浴びることで、セロトニンの分泌を促すことができます。冬は晴れた日に外出したり、日差しの入りやすい明るい部屋で過ごしたりして、日中も積極的に日光を浴びましょう。
また、適度な運動習慣を取り入れることも有効です。運動で筋肉を動かせば血流が促進され、自律神経が整いやすくなります。
おすすめは、ウォーキングやジョギング、水泳、ヨガなどの有酸素運動です。ウォーキングやジョギングの場合は、1日20分、週3回以上が目安です(e-ヘルスネット「運動処方」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-014.html)。あまり運動習慣がない場合は、無理せずにできる範囲で行い、慣れてきたら少しずつ時間を増やしていきましょう。
天候と体調の関係を記録する
頭痛やめまいなどの不調が起こったら、どのような天候のときに、どのような不調が起こったかを記録しましょう。天気だけではなく、気圧変化や運動の有無、睡眠の状況なども記録します。
手帳やカレンダーアプリなどに継続して記録することで、だんだんと自分の体のリズムを把握できるようになってくるでしょう。雨や雪の日は肩こりがひどくなる、寒い外から温かい屋内に移動すると頭痛が悪化するなど、自分の気象病の傾向がわかれば、不調が起こる可能性があるタイミングを事前に把握しやすくなります。
また、不調が起こった際にとった対策も記録すると、効果があった対策を見つけやすくなります。これらの記録をもとに、自分にあった対策を行ったり、予定を調整、変更したりするなどの対策を行えます。
冬の気象病対策に取り入れたい食材
自律神経を整えるセロトニンをつくるには、トリプトファンを積極的に摂ることが有効です。
トリプトファンはたんぱく質を構成するアミノ酸の一種で、豚ロースなどの肉類、木綿豆腐や豆乳などの大豆製品などに多く含まれています。冬に旬を迎えるものでは、さばやまぐろなどもトリプトファンを多く含む食材です。
トリプトファンは熱に弱いため、生で食べるか、食材を加熱する場合はさっと焼く、軽く茹でるなどの短時間加熱での調理がおすすめです。マグロの刺身や豆腐の味噌汁などを日々の生活に取り入れましょう。