韓国の熾烈な受験競争
韓国の受験競争は激しい。毎年11~12月頃は韓国の大学入試シーズンだ。日本でも、韓国の受験生の後輩たちが会場前に並んで応援をする姿や、遅刻しそうな受験生がパトカーに乗って会場入りする様子が、ニュースで紹介されることがある。
ヘイのクラスメイトのチョ・スア(カン・ナオン)は、塾に通っていないのに成績が良いヘイが気に入らない。スアの母親・スヒ(キム・ソニョン)は、チヨルが講師を務める塾「ザ・プライド学院」の母親コミュニティ掲示板「SKYママ」のボス的存在。ザ・プライド学院の院長に意見を言って、授業の時期を変えさせることもできる発言力を持った母親だ。
「SKYママ」と聞いて思い出すのは、受験戦争にのめり込む母親たちの姿を描いた大ヒットドラマのタイトル、『SKYキャッスル〜上級者の妻たち〜』(2018年)だ。これまでも、『グリーン・マザーズ・クラブ』や『シュルプ』(ともに2022年)などで、韓国の学歴競争社会が描かれてきた。ときにはこどもを自殺や犯罪に追い込んでしまうこともある競争社会は、韓国にとって社会問題のひとつなのだ。
食事シーンのあたたかさ
「弁当」が重要なアイテムになっているこのドラマでは、弁当の他にも食事シーンが多数登場する。
ヘンソンの家では、猛獣好きのジェウがヘンソンとヘイを巻き込んで夜に映画を見る。映画といっても、猛獣のドキュメンタリー作品で、同じ作品を何度も見ているようだ。そのときにチキンの出前をとる決まりから、その日を「チキンデー」と呼んでいる。また、良いことがあった日には家族でお祝いパーティをする。おいしい豚足やピザの出前を囲み、お酒やジュースで乾杯をする。テーブルいっぱいに広げられた出前料理を見ると、いますぐ韓国に行ってチキンや豚足を食べたい! という衝動に駆られる。
チヨルはヘンソンの店の弁当以外の食べ物が食べられないのだが、チキンデーやパーティに徐々に参加するようになる。食べられなくても、みんなで食卓を囲み、みんなで嬉しいことをお祝いする。心があたたかくなるシーンだ。
主人公はヘンソンとチヨルだが、ヘイと同級生のイ・ソンジェ(イ・チェミン)、チャン・ダンジ(リュ・ダイン)の仲良し三人組の関係も可愛らしい。ソンジェはヘイのことが好きなようだ。
同じく同級生のソ・ゴヌ(イ・ミンジェ)は、アイスホッケーの選手だった。しかし、その道を諦めることになり、ヘイに勉強を教えてくれと頼んでくる。ヘイに近づこうとするゴヌの登場で、ソンジェの嫉妬心が燃えはじめる。ゴヌがヘイを選んだ理由は何なのかも気になるところだ。
第1話の冒頭で起こったある事件と、登場する「黒いフードの男」は誰なのかというスリラー的要素もありながら、大人たち、学生たち、それぞれの恋模様も楽しめる。登場人物全員が、どうにか幸せになりますように、と願いながら見てしまうドラマだ。
Netflixオリジナルシリーズ『イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜』
監督:ユ・ジェウォン
脚本:ヤン・ヒスン
出演:チョン・ドヨン、チョン・ギョンホ、イ・ボンリョン、オ・ウィシク、シン・ジェハ、ノ・ユンソ、チャン・ヨンナム、キム・ソニョン、ファン・ボラ、ホ・チョント、イ・チェミン
制作:tvN、スタジオドラゴン
◆ライター・むらたえりか
ライター・編集者。ドラマ・映画レビュー、インタビュー記事、エッセイなどを執筆。宮城県出身、1年間の韓国在住経験あり。https://twitter.com/eripico___
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