
雨の日は部屋に湿気がこもりやすく、じめっとした不快感も。そんなときに役立つのが、エアコンの除湿機能や除湿機です。相次ぐ値上げで電気代も抑えたいこのご時世、どのような除湿方法がもっともコスパがよいのでしょうか。家電ライターの田中真紀子さんに教えてもらいました。
エアコンと除湿器の除湿の仕組みはほぼ同じ
まず、除湿できる家電には、エアコンの冷房機能と除湿機能、そして除湿機(衣類乾燥除湿機)があります。その違いとは――?
エアコンは「弱冷房除湿」より「再熱除湿」のほうが電気代が高い
エアコンの冷房と弱冷房除湿、再熱除湿、どれが電気代が安いのでしょうか。仕組みの違いもあわせて教えてもらいました。
「エアコンで除湿する仕組みは、冷房とほぼ同じです。空気は温度を下げると、空気中に含むことができる水分量(飽和水蒸気量)が少なくなるため、含みきれなくなった水分は、水滴となって室外機の外に追い出されます。エアコンの除湿機能では、この仕組みを利用して除湿しているのです。除湿運転の場合、冷房運転に比べてごく弱く冷房しており、『弱冷房除湿』といいます。
ただし、この除湿方法だと室温も下がるため、時期によっては寒く感じることも。そこで近年の上位機種のエアコンでは、一度冷やして除湿した空気を再び温める『再熱除湿』方式を用意しています。この方法は、冷やした空気を再び温めるため電気代がかかります」(田中さん・以下同)
電気代を抑えられるのは、弱冷房除湿→冷房→再熱除湿の順になるそうです。
除湿機で電気代が安いのはどの方式?
次に、除湿機の電気代は、除湿方式によって異なります。
「除湿機には大きく分けて、コンプレッサー式、デシカント式、ハイブリッド式の3つの除湿方式があります。コンプレッサー式は、エアコンの除湿同様、空気を冷やして結露水を取り出す仕組み。ヒーターを使用しないため電気代は少ないです。夏など室内の気温が高いほど多くの湿気を取り除けますが、冬など気温が低いときは除湿性能が落ちます。
デシカント式は、ゼオライトとよばれる乾燥剤に湿気を吸着させたのち、ヒーターで温めて水分を蒸発させて取り出します。気温に関係なく使えるのが魅力ですが、ヒーターを使うため室温が上がりやすく、夏の使用には不向き。また電気代もかかります。
そしてコンプレッサー式とデシカント式の両機能を搭載し、状況に応じて適した機能を自動で使い分けるのが、ハイブリッド式です。効率的に除湿することで電気代は抑えられますが、本体価格が高いというデメリットがあります」
つまり、除湿機の電気代を抑えられるのは、順にコンプレッサー式→ハイブリッド式→デシカント式となります。
電気代で比較すると、除湿機のほうがエアコンより安い傾向に
では、エアコンの除湿と除湿機を比べると、どちらのほうが電気代がかかりやすいのでしょうか?

「かつて東京電力が発表した調査によると、一定条件でのエアコン冷房の電気代は11円/1時間、弱冷房除湿時は4.1円/1時間でエアコン冷房の半分以下(約37%)。再熱除湿は14.9円で、エアコン冷房の1.35倍になります。
これを当てはめると、シャープのエアコン(AY-R40X2・木造14畳)の冷房時の電気代は約29円/1時間(消費電力940W・目安単価31円で計算)であることから、弱冷房除湿時の消費電力は約11円/1時間程度となります。一方、再熱除湿時の電気代は約39円/1時間と高くなります。
同程度の部屋を除湿できるシャープ・ハイブリッド除湿機(CV-RH140・木造14畳)の電気代は、約8.5円ですから、除湿機を使用したほうが電気代は安く済みます。特に衣類乾燥も行いたい場合は、やはり除湿機を用意したほうが電気代は抑えられます」
以上をまとめると、電気代の安い順に、除湿機→エアコンの弱冷房除湿→エアコンの冷房→エアコンの再熱除湿となります。
エアコンや除湿機を使いながら電気代を安くするには
いずれも、電気代を抑える方法はあります。
サーキュレーターなどとの併用で除湿効率を高める
「エアコン除湿に関しては、肌寒さを感じないなら、弱冷房除湿を使用するのが基本。肌寒いと感じる人は、不在にしている部屋で弱冷房除湿運転するなど使用するタイミングを工夫しましょう。
また除湿全般でいえば、できるだけ素早く効率的に除湿することで、除湿にかかる消費電力、すなわち電気代を抑えることができます。その方法として、例えば扇風機やサーキュレーターを併用し、室内空気を循環すること。サーキュレーターなどの風が湿気溜まりを吹き飛ばし、効率的に除湿できます。さらに、定期的に窓を開けて換気し、湿気を追い出すといいでしょう」
定期的なフィルター掃除も必須
また、エアコン、除湿機ともに、フィルター掃除もお忘れなく。

「フィルターにホコリが溜まると効率が落ちます」
除湿機を選ぶなら、効率的に除湿して消費電力を抑えられる衣類乾燥除湿機を
部屋干しする場合は、衣類乾燥除湿機がおすすめ。
「衣類乾燥除湿機には送風機能が搭載されているので、衣類の湿気を風で飛ばしながら効率的に乾燥でき、除湿機能の使用時間を短縮できます」
最後に、電気代の観点からコスパがいい除湿機を田中さんに選んでもらいました。どちらも、濡れた洗濯物を素早く乾かすことで消費電力を抑えられるハイパフォーマンス製品です。
【1】三菱電機『衣類乾燥除湿機 部屋干しおまかせムーブアイ搭載タイプ MJ-M120VX』

センサーが洗濯物の濡れている部分を見つけて効率的に乾かす
「衣類乾燥除湿性能では、三菱独自のセンサー機能『部屋干しおまかせムーブアイ』が大活躍。センサーが洗濯物の濡れているところを見つけて風を当てるので、効率的に衣類が乾燥できます。乾いているところには送風しないのでムダもなし。除湿機能でも、湿気がたまりがちな場所を『部屋干しおまかせムーブアイ』が見つけて、ドライな風を送ります」
【2】シャープ『衣類乾燥除湿機 CV‐RH140』

高濃度イオン「プラズマクラスター25000」で空気を浄化しながら部屋を除湿

「1年中使えるハイブリッドタイプ。シャープ独自の高濃度イオン『プラズマクラスター25000』を放出することで、衣類の生乾き臭を抑えながら、パワフルに乾燥させます。また室内のカビ対策にも活躍。『エコ自動』モード運転では大風量で室内の空気を動かしながら除湿し、適正な湿度のときはプラズマクラスターで空気を浄化しながら除湿します。湿度が高いときは自動的に除湿運転を始め、カビが増殖しにくい環境を保ちます」
雑菌やカビの繁殖防止の面でも、部屋の湿度は素早く抑えたいもの。サーキュレーターや扇風機、あるいは上記のようなパワフルかつ効率的に湿気を抑える製品も取り入れながら、梅雨の除湿シーズンを乗り切りましょう。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電や美容家電を中心に家電に詳しいライター。雑誌やウェブなど多数のメディアで、新製品などをレビューしている。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
●結局、扇風機は部屋のどこに置くのがベストなのか? 条件によって変わってくる“置く場所”を家電ライターが解説