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安藤サクラは今や国民的俳優! 映画『怪物』で見せた“凄み”「母親のリアル」を体現

『怪物』場面写真
安藤サクラの演技が光る(C)2023「怪物」製作委員会
写真8枚

安藤サクラさん(37歳)や永山瑛太さん(40歳)が出演した映画『怪物』が6月2日より公開中です。『万引き家族』(2018年)が国内外で高く評価された監督・是枝裕和さんと、大ヒット作『花束みたいな恋をした』(2021年)の脚本家・坂元裕二さんが初タッグを組んだ本作は、さまざまな視点から現代社会の姿を見つめたヒューマンドラマ。重く受け止めるべき問題の数々が収められた、良質な映画作品に仕上がっています。本作の見どころや安藤さんらの演技について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。

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カンヌで「脚本賞」と「クィア・パルム賞」を受賞

本作は、世界三大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭にて、『万引き家族』が最高賞であるパルム・ドールに輝いた是枝監督の最新作。これまでは自身で脚本を書いてきた監督が、『東京ラブストーリー』(フジテレビ系・1991年)で注目を集め、『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年/カンテレ・フジテレビ系)や『初恋の悪魔』(2022年/日本テレビ系)などの人気ドラマだけでなく、ロングランヒットをした映画『花束みたいな恋をした』の脚本家である坂元さんと初めてタッグを組んだ作品です。

『怪物』ポスタービジュアル
(C)2023「怪物」製作委員会
写真8枚

今年開催された第76回カンヌ国際映画祭では、脚本賞と、LGBTやクィア(自らの性が旧来的な特定の性属性に当てはまらない存在)を扱った映画に贈られるクィア・パルム賞を受賞。さまざまな角度から社会の様相を描き出し、いまもっとも話題の映画の一つになっています。音楽を手がけているのは故・坂本龍一氏。数々の名画の音楽を担当してきた彼が、本作をより高い次元へと押し上げています。

脚本、映像、音楽、そして俳優陣の演技が見事に溶け合い一つになった、そんな作品なのです。

それぞれの思惑が交錯する群像劇

物語の舞台は大きな湖のある郊外の町。シングルマザーの麦野早織(安藤)は愛する小学5年生の息子・湊とともに、自宅のベランダから近くの雑居ビルで起きた火事を見ていました。

そこで湊が奇妙な言葉を口にします。それ以降、早織は彼の異変が気がかりに。小学校で何かが起きているのではないかと疑うのです。

『怪物』場面写真
(C)2023「怪物」製作委員会
写真8枚

それから早織は担任の保利(永山)や校長たちと対峙するものの、みんなどこか気もそぞろで何かがおかしい。それどころか保利は不服そうな態度です。

大人たちの主張は食い違い、やがてある嵐の朝、湊ら子どもたちは姿を消すのです――。

一人ひとりの好演に拍手

本作は、“小学校”というコミュニティを中心とする人間関係を見つめた群像劇です。先述したあらすじだけで判断すると、母・早織視点の物語のようにも思えますが、この視点は次々にほかのキャラクターのものへと移っていきます。

物語の中心に立つ湊を黒田想矢さんが、湊のクラスメイトである星川依里を柊木陽太さんが瑞々しく好演。子役の演出に定評のある是枝監督のもと、本作の持つメッセージを体現し、観る者に疑問を投げかけます。湊や依里にかつての自分の姿を重ねる方も少なくないのではないかと思います。

『怪物』場面写真
(C)2023「怪物」製作委員会
写真8枚

担任の保利先生を演じる永山瑛太さんは、難役に挑んでいます。先述しているように本作は早織の視点からのみ描かれるものではありません。保利先生の視点からも学校の様子や子どもたち、早織の姿が描かれます。そしてこの異なる視点の間には、大きな溝がある。シチュエーションに合わせて演技のトーンを巧みに変化させる永山さんに魅せられることでしょう。

『怪物』場面写真
(C)2023「怪物」製作委員会
写真8枚

さらに、校長役として田中裕子さんが厳かな演技を展開し緊張感を生み出しているほか、保利の恋人役に高畑充希さん、小学校の教頭役に角田晃広さん、依里の父親役に中村獅童さんが配されています。

役どころが違えば出番の数も違いますが、それぞれのキャラクターが本作のテーマを背負っています。一人ひとりの好演に拍手を送りたいというもの。

そんな演技巧者たちの中心に立つのが、話題作への出演が絶えない安藤サクラさんです。

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