韓国と日本に関わる2つのポイント
ファン・ジョンミンが演じた日本ヤクザ・織田に加えて、もうひとり日本に関わる人物が出てくる。ジェヨンが学校のディベートで「10万ウォン札ができたら誰を肖像にするか」を話し合う。その話題の中で名前が挙がった「論介(ノンゲ)」という女性だ。
論介は、李氏朝鮮時代に文禄の役で夫を亡くした。その恨みから、日本の武将を道連れにして川に身投げしたという。日本では馴染みがないが、韓国では国民的なヒロインとして知られている。
映画全体を通して描かれる母と子の関係だが、その中に2つも日本に関わるポイントが出てきた。ボクスンは織田に、娘のジェヨンから「公平性」について教わったことを話す。ジェヨンは論介について「女の人殺しってすごい」と言い、ボクスンを驚かせる。
織田は刀について「女にはわからない」と言っていた。ボクスンが彼の日本刀をどのように扱ったか、最後まで注目したい。
ボクスンと仕事、ボクスンと娘の関係がどこにたどり着くのか。そして、ジェヨンの生き方にどう影響していくのか。エンドロールが流れはじめても、もう少しだけ二人のその後を待ってみてほしい。
Netflix映画『キル・ボクスン』
脚本・監督:ビョン・ソンヒョン
出演:チョン・ドヨン、ソル・ギョング、イ・ソム、ク・ギョファン、キム・シア、イ・ヨン、ファン・ジョンミン
◆ライター・むらたえりか
ライター・編集者。ドラマ・映画レビュー、インタビュー記事、エッセイなどを執筆。宮城県出身、1年間の韓国在住経験あり。https://twitter.com/eripico
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