エンタメ・韓流

ダークヒロインを演じる綾瀬はるか、「拳銃を構える姿」はなぜ見る人を惹きつけるのか?

小曾根百合は綾瀬はるかのキャリアが感じられる役どころ

綾瀬さんといえば、2001年に俳優デビューを果たして早々に頭角を現し、それ以来つねにエンタメ界のトップを走り続けてきた人物でしょう。

2004年にドラマ版『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)でその存在を広く知らしめて以降、『あいくるしい』(2005年/TBS系)や『白夜行』(2006年/TBS系)、『たったひとつの恋』(2006年/日本テレビ系)などのドラマ作品でメインキャストに起用されヒットに貢献。いまから10年前の2013年には大河ドラマ『八重の桜』(NHK総合)で主演を務めていました。

映画でもそう。『ギャラクシー街道』(2015年)、『海賊とよばれた男』(2016年)、『今夜、ロマンス劇場で』(2018年)、『レジェンド&バタフライ』(2023年)など、“主役級”の役どころを担い続ける稀有な存在です。

『リボルバー・リリー』場面写真
(c) 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ
写真17枚

特筆すべき点は、彼女が高い身体能力を持った俳優だということ。それは『僕の彼女はサイボーグ』(2008年)や、劇場版も公開された『奥様は、取り扱い注意』(2017年/日本テレビ系)などに見出だせることでしょう。そういった意味で、アクションに全力を注いでいる『リボルバー・リリー』の小曾根百合役は、これまでのキャリアが活きた集大成的な役どころに思えるのです。

拳銃を構えるに相応しい表情

ヒューマンドラマ、コメディ、サスペンス、アクション、ミステリーなどなど、あらゆるジャンルの作品に適応してみせ、さまざまな役を演じ分けてきた綾瀬さんですが、バラエティ番組などで見せるキャラクターから、天然な性格の持ち主なのだと認識しているかたは少なくないでしょう。そんなこともあってか、役への変身のその深度にいつも驚かされるのです。

『リボルバー・リリー』場面写真
(c) 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ
写真17枚

今作で特に注目すべきは、綾瀬さん演じる百合が拳銃の使い手だということ。リボルバーを構える彼女の表情が何度も何度もスクリーンに大きく映し出されます。人間ドラマのパートも丁寧に作られていますが、タイトルに冠されていることもあり、やはりもっとも大切にされているのはリボルバーを握りしめる瞬間。手にした凶器を誰かに向けるというのは、そこに強烈な敵意があるから。

『リボルバー・リリー』場面写真
(c) 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ
写真17枚

拳銃を構えればシーンが成立するわけではありません。拳銃を構えるだけの心の動きというものがなければ、そのシーンは成立しない。ひるがえってこれは、拳銃を構える際の“綾瀬はるか=百合”の中に大きな心の動きがあることを示しています。そしてそれは連動するように、表情に表れる。拳銃を構えるに相応しい表情です。ここにもまた、これまでハードな役どころを演じ続けてきたキャリアが活きているように思うのです。

小曾根百合の時代から約100年

本作が描かれているのは、いまから約100年前の時代。9月1日に起きた関東大震災まで、あともう少しでちょうど100年です。あの当時は流言飛語が飛び交い、本当に多くの困難があったといいます。私たちの生きる現代は、あれからどれくらい成長したのでしょうか。

小曾根百合は“ダークヒロイン”ともいえるカッコイイ存在ですが、時代に翻弄され、悲しみを背負って生きる人物でもあります。彼女の生きる時代と現代とを照らし合わせてみることも、本作の味わい方の1つかもしれません。

◆文筆家・折田侑駿

文筆家・折田侑駿さん
文筆家・折田侑駿さん
写真17枚

1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。https://twitter.com/yshun

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