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鈴木京香の怪演が話題 『御手洗家、炎上する』で見せた姿はどこが「とんでもなくすごい」のか?

「大人の女性俳優」たちの主演作が見たい

本作『御手洗家、炎上する』は、多くのものを奪われた女性(杏子)の復讐劇である一方、多くのものを手にして新たな人生を歩もうとする女性(真希子)の物語だともいえます。

Netflixシリーズ「御手洗家、炎上する」場面写真
Netflixシリーズ「御手洗家、炎上する」独占配信中
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筆者はこの作品に触れてみて、鈴木さんが体現する真希子像に心を惹かれました。褒められるような人間ではないとはいえ、自分の人生というものを自ら生み出そうとしているからです。いくつになったって自分の人生を歩んでいい。このような人物に筆者は惹かれますし、このような人物の物語がもっと見たい。ひるがえってこれは、自分の人生を歩む女性主人公の物語が見たい、ということでもあります。

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現在の日本の映画やドラマでは、鈴木さん世代のかたが主役を演じる作品があまりにも少ない。たとえば大企業を舞台にしたものや時代劇など、男性俳優が主役の作品は数多くありますが、女性俳優が主役の作品はとても限られています。これは実社会において、いまだ女性の活躍の場が限られていることの反映であり、証明だともいえるでしょう。

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10代や20代の女性俳優には主役を演じる機会が多くありますが、年齢を重ねていくうちに主人公の「お母さん」や「妻」などのような特定の役割を担うポジションばかりが増え、“自分の人生を歩む女性主人公の物語”は減少していく。

鈴木さんと近い世代の女性俳優でアクティブな活動を展開しているかたは数多くいます。『御手洗家、炎上する』関連でいえば、主人公・杏子の母を演じる吉瀬美智子さん(彼女は比較的、主役級の役どころを演じる機会の多いかただと思いますが)や、「みたらい病院」の看護師長を演じる濱田マリさん、真希子の義姉の一人を演じる片岡礼子さんなど、あらゆる作品を支えることに貢献し続けている人々です。

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バイプレーヤーである彼女たちがより主体性を持った役どころを務める作品が、その姿が、もっと見たい。需要があればその機会は増えるはずですし、そもそもいまのこの時代に需要がないはずはないでしょう。これは常日頃から思っていたことですが、鈴木さんの怪演によって誕生した御手洗真希子と出会い、よりいっそう思いが強くなったのです。

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◆文筆家・折田侑駿

文筆家・折田侑駿さん
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1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。https://twitter.com/yshun

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