
今あるお墓を撤去し、更地にして寺や霊園などの墓地管理者に区画を返す「墓じまい」。墓守や墓参りの負担を減らしたり、無縁墓を避けたりする目的で、近年利用者が増えています。年始で親族が集まる機会は家族で話し合うチャンス。節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、墓じまいのメリットやかかる費用、補助金などについて教えてもらいました。
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近年増えている墓じまい
墓じまいとは、先祖代々のお墓を撤去して、寺や霊園など墓地の管理者に使用権を返し、遺骨を別の形で供養することです。親族が皆、お墓の遠方に住んでいたり、山奥など交通の便が悪い場所にお墓があったりして、墓守や墓参りが難しいといったケースで利用されます。
特に近年は、少子高齢化や核家族化などを背景に、墓じまいを検討する人が増えています。
墓じまいのメリット
墓守や墓参りが不要になるため、お墓の維持・管理にかかる負担が減るほか、墓地管理費の支払いもなくなるため、金銭的に負担を減らすことができます。また、お墓の承継者がいない無縁墓となってしまうことを防ぐこともできます。

墓じまいをするときは親族と相談を
墓じまいをするときは、事前に家族や親戚ときちんと相談するようにしましょう。墓守をしているのが自分だけだからといって、一人で墓じまいを進めてしまうと、後になってトラブルに発展することがあります。年始で親族で集まる機会があればぜひ話し合っておきましょう。

墓じまいの方法
墓じまいをする時は、寺院や霊園といった墓地の管理者に墓じまいの意思を伝え、墓石から魂を抜くという閉眼供養を行います。その後、石材店などに依頼し、お墓の撤去を行います。
その際、墓じまい、改葬の手続きに必要な書類として納骨されていた寺院の墓地管理者から「埋蔵証明書」にサインをもらう必要があります。お墓がお寺にある場合はそのお寺の檀家となっていることもあるので、その場合は離檀も必要です。
新しい納骨先を決める(改葬)
墓じまい後に遺骨を、永代供養墓、外墓、納骨壇など新しい納骨先に移動させることを改葬といいます。新しい納骨先と契約を完了後、「受入証明書」を発行してもらいます。改葬する場合、納骨先のある自治体の役所で改葬許可の申請時にこの「受入証明書」を提出する必要があります。

これまで納骨していた墓地の管理者が発行する埋蔵証明書や、新たに納骨する墓地の管理者が発行する受入証明書の提出が必要になることもありますので、新しい墓地や墓石の準備も進めておくとスムーズです。
墓じまいの金額
今後の管理負担や金銭的な負担を軽減できる墓じまいですが、墓じまい自体にも費用は発生します。お墓を更地にして返す際の工事のコストは1平方メートルあたり10~15万円程度。離檀する場合はさらに数万~数十万円の費用がかかります(https://www.osohshiki.jp/column/article/266/)。
また、改葬許可申請書や埋葬証明書などの書類取得は自身でも行えますが、行政書士などに依頼する場合は10~20万円ほどの費用が発生します。
自治体によっては補助金がある(お墓があるところの自治体)
一方で、それほど多くはありませんが、墓じまいのための補助金制度を導入している自治体もあります。お墓のあるところの自治体が補助金制度を導入しているかどうかはスマート補助金(https://www.smart-hojokin.jp/)などの補助金ポータルサイトで検索可能です。

合葬式墓地が使用可能な自治体も
一例として、墓じまいの補助金制度を導入している千葉県浦安市では、墓石撤去費用などの返還区画の原状回復に要した費用について、最大15万円の補助金を出しています。さらに、改葬先として合葬式墓地を使用でき、改葬先の使用料を負担することなく、墓じまいをすることが可能になっています。
◆教えてくれたのは:節約アドバイザー・丸山晴美さん

節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/
構成/新藤まつり