【やってはいけない日焼け対策】「SPFの強い日焼け止めを毎日使う」「日焼け後にアロエでケア」「去年の日焼け止めを使う」 医師が“焼かない”ための注意点を解説
「色の白いは七難隠す」とばかりにコスメやグッズを駆使して紫外線対策をしても、シミ、しわ、たるみ…と、年々「難」が増えていく―それはあなたの長年の「日焼けケア」が老化を進める間違いだらけの方法だから。いまこそ正しいケアにアップデートしよう。
間違えた日焼け対策が老化を進ませる原因に
「肌の老化の原因の8割は紫外線」といわれるように、日焼けによる弊害は、肌の赤みやシミ、しわだけではなく、たるみや白髪、さらには白内障などの病気と多岐にわたる。恵比寿こもれびクリニック院長の西嶌暁生さんが言う。
「紫外線は体内でビタミンDをつくるもとになるなど、体にとって不可欠である一方、浴びすぎれば全身に大きなダメージを与えます。例えば、髪の毛が日焼けして表面のキューティクルが傷つくと、パサつきや縮れ毛、浮き毛が目立つようになるほか、フケや抜け毛が増えることも。
目にも大きな影響があり、紫外線のような強い光が目の奥に到達すると活性酸素を発生させて神経や細胞に悪影響を与え、白内障や加齢性黄斑変性症、翼状片などのリスクを上げるのです」
つまり日焼け対策は頭皮から目まで、360度全方位を守る必要があるということ。だがその方法を間違えると、やればやるほど老化が進む。紫外線最強シーズンのいまこそ、「やってはいけない日焼け対策」を知ってほしい。
日焼け止めは「SPF」より「量」!
紫外線対策の必須アイテムの「日焼け止め」は近年、クリームやローション以外にも、ジェルやスプレー、スティック、パウダーと、さまざまなタイプが販売されている。だが、正しく選んで使うことができている人は意外にも少ない。あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんはこう話す。
「ジェルやスティック、スプレー、パウダータイプは手軽さで人気を集めていますが、特殊な形状のためにどうしても肌への刺激が強い添加物が多く、品質のよくないものも多い。また、スプレータイプはムラになりやすく、きちんと紫外線をカットできる適量を塗るのが難しい。ほとんどの場合圧倒的に量が足りず、日焼け止めとしての意味をなしていません。
最低限の品質は必要ですが、いちばん重要なのは、必要な量をたっぷり塗ることです。充分な量をつけようと思うとスプレータイプは凍傷になる恐れがあり、パウダータイプはたくさんつけると粉まみれになって白浮きする。こうした商品はあくまでも“補助“と考えてほしい」
パッケージに記載されている「SPF」「PA」といった表記についても、正しい知識を持っている人は少ない。菜のはなインナーケアクリニック院長の小村菜緒さんが説明する。
「SPFは、皮膚を赤くしたりシミやそばかすをつくる『UV-B』を防ぐ効果の持続時間を表しています。一方PAは、しわやたるみを引き起こす『UV-A』を防ぐ指標。一般にSPFが高いものは効果の持続時間も長いとされています」
だが、どちらも強ければ強いほどいいというのは間違いだ。
「紫外線カット効果が高い日焼け止めほど添加物が多く、肌への負担が大きい商品もあるため、『SPF50 PA++++』は日常生活には強すぎる。一日中外にいるのでもなければ、『SPF30 PA+++』ほどで充分です。ただし、紫外線感度は個人差があるため、日焼けしやすい人はやや強めのものを選ぶなど、体質に合わせて臨機応変に。安価すぎない最低限の品質のものかどうかの確認も忘れないでください」(柴さん)
「SPF」「PA」とともに、主成分も確認すべきだ。日焼け止めの紫外線カット効果はオキシベンゾンなどの「紫外線吸収剤」、または酸化チタン、酸化亜鉛などの「紫外線散乱剤」によるもの。前者は肌への刺激になりやすいので、できれば「紫外線散乱剤」だけが使われているものを選ぼう。
「散乱剤はその名の通り、紫外線を反射して肌に入るのを防ぐもの。吸収剤より刺激が弱く、石けんやボディーソープで簡単に落とせるものが多いのが特徴です」(西嶌さん)
塗る部位ごとに使い分ける工夫も必要だ。「顔用」「からだ用」には明確な基準は設けられていないが、体は顔よりも皮膚が厚いため、体には問題なく使える商品でも、顔に使うことで肌荒れを招く恐れもあるため、肌の弱い人は注意が必要だ。顔にはSPF効果をうたった化粧下地やファンデーションで済ませるのではなく、その下にしっかりと日焼け止めを塗っておこう。
「パッケージに記載してある量を基準に、やや多めに塗りましょう。特に夏は汗で日焼け止めが流れ落ちるので汗に強いタイプを、屋外にいるなら最低でも2~3時間おきに塗り直しをしたい」(柴さん・以下同)
去年の日焼け止めを使うのはNG
たとえ去年の日焼け止めが残っていても、もったいないから…と、今年も使うのは厳禁。日焼け止めの使用期限は基本的に、開封後1年程度とされている。
「開封した瞬間から水分やアルコールの蒸発が始まって成分が酸化することで劣化し、肌へのダメージが増える恐れもあります。そもそも、紫外線対策は毎日しなければいけないもの。1年前の日焼け止めを使い切れていない時点で、対策ができていない証拠です」
肌以外の日焼け対策も、間違った方法で行うと逆効果になる。最近は髪専用をうたったスプレータイプの日焼け止めも売られているがやはり添加物が多く、使い続けると髪を傷める可能性がある。
「髪の紫外線対策には、髪をまとめて帽子をかぶり、できるだけ日光に当たる面積を減らしてください。アームカバーはUV加工をうたっている薄手のものより、厚みがあり色の濃いものの方が効果的ですが、熱中症になりやすいため、注意して使ってほしい。加えて目の紫外線対策にはサングラスを。UVカットのコンタクトレンズもありますが、効果は“ないよりはマシ”程度なので、過信しすぎないように」
「保湿」より先に「冷たいシャワー」を
どれだけ気を使っても、うっかり日焼けしてしまうことはある。それでも、正しいアフターケアを知れば、リカバリーは充分に可能だ。
「もっとも大切なのは、冷却と保湿。日焼けによる炎症はやけどと同じです。うっかり日焼けしてしまったらすぐに冷たいタオルやシャワーで冷やし、炎症がそれ以上広がるのを防ぐのが先決です。ただし、皮膚に直接貼るタイプの冷却シートは、弱った肌にさらなる刺激を与えるため、絶対に使わないでください」(西嶌さん)
冷感タイプの化粧水やスプレーも、日焼け直後は使用すべきではない。クールダウンできるどころか、そうした商品にはアルコールや刺激のある添加物が使われていることが多く、これが肌の炎症を悪化させる。
かといって“天然由来”のケアはもはや時代遅れ。よく「日焼けを落ち着かせるにはアロエが効く」などといわれるが、これは薬や化粧品が手に入りにくかった頃の“応急処置”に過ぎないと、柴さんは言う。
「接触性皮膚炎やアレルギーの原因になるので、日焼け後の肌に植物や食べ物をつけるのは絶対にやめてください。特に生のアロエには肉眼では見えないトゲがたくさんあるので、皮膚を傷つけることになります。“敏感肌用化粧品”“オーガニック化粧品”も、成分によってはかえって肌のダメージを悪化させる恐れがある。
日焼けしたからといって新しい化粧品を買うようなことはせず、ひどければ皮膚科を受診し、薬以外は何も塗らないのがいちばんのケアになります」(柴さん)
今年こそ焼かない! 「効果的な日焼け止め」チェックリスト
□信頼のおけるメーカーのもので、安価すぎない
□スプレー、ジェル、スティック、パウダータイプではない
□石けんで落とせる
□紫外線吸収剤は不使用で、紫外線散乱剤を使っている
□SPF30、PA+++程度
レバーや赤身肉、魚介類を食事に取り入れる
日焼けから数日経つと炎症が治まり、皮膚が乾燥し始めるので、その段階で入念に保湿しよう。日焼けによる老化を予防するには、ビタミンC、トラネキサム酸、フラーレンが入った化粧品が効果的だ。ただし界面活性剤や添加物の多いもの、濃度の高すぎるものは肌の炎症を悪化させる。
「特にビタミンC配合の化粧品は刺激が強い。皮がむけているところには無理に塗らないでください。ビタミンCは塗るのもいいですが、まずは食べ物や飲み物、サプリメントで毎日摂取してほしい。サプリを摂るなら、メラニンの生成を抑える『グルタチオン』も効果的です」(小村さん)
柴さんは「日頃からきちんと栄養を摂れていれば、紫外線による活性酸素は多少は代謝できる」と話す。
「近年話題の“のむ日焼け止め”は、中身は単なる抗酸化サプリで、1か月間のみ続けても『SPF2』にも満たないというデータもあるほど。それなら、高い抗酸化作用のあるβ-カロテンやビタミンEを食べ物から摂る方がいい。
また、もっとも日焼け対策になる栄養素はヘム鉄とビタミンA・C・Eで、これはシミの原因となる活性酸素から肌を守ります。カラフルな野菜のほか、肌の再生・修復にも役立つレバーや赤身肉、魚介類などを積極的に食事に取り入れてください」(柴さん)
老化を加速させる「間違い日焼けケア」まとめ
× SPF、PAの強い日焼け止めを毎日使う
× 日焼け止めの塗り直しをしない
× 日傘・帽子だけを使って、日焼け止めは塗らない。またはその逆
× 「のむ日焼け止め」を過信している
× 日焼けした後に冷感タイプの化粧品でクールダウンする
× 日焼けを落ち着かせるために肌にアロエをつける
× 日焼け後にすぐビタミンC入りの化粧品を使ってシミを予防する
× 日焼け後の肌のために、敏感肌用やオーガニック化粧品を買い足す
◆教えてくれたのは:
恵比寿こもれびクリニック院長・西嶌暁生さん
あいこ皮フ科クリニック院長・柴亜伊子さん
※女性セブン2024年6月6日号