
「窓口で読み取れなかった」「持ち歩くリスクが怖い」「発行方法がわからない」──。12月2日に健康保険証の発行がついに終了。マイナ保険証への本格移行が進むなか、病院窓口で混乱が起きるなど、マイナ保険証への賛否の声や戸惑い、手続きを急ぐ人々で“マイナ保険証パニック”状態が続いている。そこで、登録方法から気になる疑問まで、“失敗しない方法”を伝える。
病院窓口は大混乱
健康保険証の新規発行廃止、マイナ保険証への本格的な切り替えが進み、「健康保険証は使えなくなるの?」「マイナンバーカードに保険証をひもづけしたかどうか覚えていない」「暗証番号を忘れた」など、市区町村には問い合わせが殺到している。現在の健康保険証が使えなくなるわけではないものの、マイナ保険証が社会に浸透しているとはまだまだ言い難い。
苦慮しているのは利用者のみならず、医療機関も同様だ。都内で内科と歯科を併設しているクリニックでは、マイナ保険証を読み取る顔認証付きカードリーダーを2023年に設置したが、登録がなかなか進まないという。院長が話す。

「『マイナンバーカードの写真が表になるように入れてください』とお願いしても、うちは中高年の患者さんが多いため、『マイナンバーカードは無闇に持ち歩くもんじゃない』『こういうところから情報漏えいするんじゃないか』など、とにかく疑心暗鬼になっている人が多くて、納得してもらうのに時間がかかっています。せっかく導入したカードリーダーですが、あまり利活用できていません」
トラブルで10割負担に
病院側の負担は、患者への説明や対応だけではない。
「顔認証付きカードリーダーは、2023年4月から医療機関や薬局での設置が義務化されました。うちも3分の2は補助金を活用してカードリーダー導入と回線工事を終えましたが、内科と歯科で光ファイバーを別々に引く必要があるので出費がかさんでしまって。さらに、国からは高額なレセプト(診療報酬明細書)コンピューターの導入をすすめられますが、費用が数百万円と高額で導入困難なのが実情です」(前出・院長)
一方、カードリーダーの不具合によるトラブルも後を絶たない。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが説明する。
「読み取りエラーでマイナ保険証が使えなかった患者が、いったん10割負担で支払うことになったケースがありました。本来は必要書類の提出で代替できることが充分に周知されていない印象があります」(風呂内さん、以下同)
カードリーダーの不具合では、通信やシステム障害、停電のほか、「はしごだか(髙)」などの異体字が黒丸で表示されるトラブルも報告され、病院窓口の混乱に拍車をかける。
マイナ保険証時代を上手に乗り切るために疑問を解決しよう。
マイナ保険証の利用登録はどうする?
マイナ保険証の保有率は2024年10月時点で60%を超えたが、利用率はいまだ低い。そもそも、「どのように使うかよくわからない」という人も多いだろう。

「病院や薬局など医療機関窓口に設置されている読み取り機に保険証機能を付けたマイナンバーカードをかざし、暗証番号を入力するか、顔認証することで利用できます。暗証番号がわからない、忘れてしまったことで混乱されるかたもいるので、確認しておくようにしましょう。
忘れないようにとマイナンバーカードにメモを貼っているかたもいますが、それはキャッシュカードに暗証番号を書いておくようなもの。紛失の際に危険なのでやめてください」
マイナ保険証の利用登録は、インターネットやスマホから申請できるほか、医療機関・薬局の窓口、セブン銀行ATMからでも可能だ。
「マイナンバーカードを持ち歩きたくない、個人情報が流出するのではと不信感を持つ人が少なくありませんが、『過去の受診歴や薬の服用情報が共有されることで、より正確な医療を受けられる』『高額療養費や医療費控除の申請が簡単にできる』など、マイナ保険証によるメリットもあります。現行の保険証も、まだしばらくは使えますので、じっくり情報を精査して申請を」
今後はマイナ保険証の機能がスマホにも搭載される予定なので、マイナンバーカードを持ち歩く必要がなくなる可能性も高い。
マイナ保険証、気になる8大疑問
移行が進んでもまだまだ疑問点も多いマイナ保険証。気になる疑問にファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに答えてもらった。
【Q1】紙の保険証はもう使えないの?

現行の保険証の新規発行は2024年12月2日で終了したものの、現時点で手元にある有効な健康保険証は、記載の有効期限まで、もしくは最長2025年12月1日まで使用できる。
「まだ猶予があるので、あわてる必要はなく、マイナ保険証の対応はじっくり検討できます。マイナ保険証を発行しても、紙の保険証の期限が残っている場合、どちらも使用可能です」。
【Q2】マイナ保険証には「マイナカード」が必要?
「マイナ保険証」というカードがあるわけではなく、マイナンバーカードに保険証機能が付く。
「マイナ保険証を発行するには、まずマイナンバーカードを作成する必要があります。『個人番号カード交付申請書』(※)を使用した郵便による申請や、オンライン申請、証明写真機による申請が可能です」
※マイナンバーが送られてきた際に同封されているもの。もしくは自治体の役所窓口で即日発行可能。
【Q3】マイナ保険証には何が記録される?
「カード自体にデータが記録されるわけではありませんが、利用者が同意することで過去の受診履歴や薬の処方履歴、注射歴、健診結果などの情報が連携できるようになります。緊急搬送時に有効なほか、どんな薬をのんでいるかなどを、医師や薬剤師と正確に共有することが目的です」
ただし、自分自身で服薬状況を把握しておくためにも、システム障害や災害発生時の備えとしても「お薬手帳」は大切。いまあるものも併用した方がいい。
裏面のICチップには氏名や住所などの情報が記録されている。電子証明書を利用すれば医療情報との連携も可能だ。

【Q4】病院窓口などで読み取りエラーになったらどうする?
現在、マイナ保険証の読み取り端末は9割以上の医療機関・薬局に設置済み。「対応が遅れている医療機関や、読み取りの不具合が生じた場合に備えて、『資格情報のお知らせ』を携帯しておきましょう。この書類は健康保険組合や役所(国民健康保険加入の場合)から送られてくるもので、マイナ保険証と併せて提示することで、読み取り不良のときに対応できます。マイナポータルからのダウンロードも可能です」。
【Q5】高齢の両親に代わって登録することはできる?
高齢の親がマイナンバーカードを持っていて、暗証番号がわかれば、実子など身内のスマホから親の「マイナポータル」にログインして、マイナ保険証の利用登録ができる。本人が操作できない場合は、家族が一緒に画面を見ながら操作をサポートすることも可能だ。
「そもそも親がマイナンバーカードを持っていない場合は、本人と代理人の本人確認書類など必要書類を役所に持参すれば、マイナンバーカードを代わりに受け取ることも可能です」

【Q6】一度登録したら、更新の必要はない?
マイナ保険証には有効期限がないものの、マイナンバーカード自体に期限が設けられている。「電子証明書としての有効期限(5年間)と、カード自体の有効期限(10年間)の2種類があります。期限が近づくと更新のお知らせが届くので、必ず更新してください。更新しないと、マイナ保険証として使用できません。マイナンバーカードを更新すれば、マイナ保険証はそのまま自動継続となるので、別途更新する必要はありません」
【Q7】紛失してしまったらどうすればいい?
24時間365日体制のマイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)に連絡すれば、利用を一時的に停止できる。「マイナ保険証は、暗証番号もしくは顔認証しなければ機能しないので、あわてなくて大丈夫。暗証番号をマイナカードにメモで書いて貼りつけているかたもいるようですが、危険なので別の場所に記録して」。再発行は、警察に届け出た被害届も持参し、住民票のある市区町村役場で手続きすれば、原則1週間で再交付される。
【Q8】どうしてもマイナ保険証を持ちたくない場合はどうすればいい?
マイナ保険証を保有していない人には、現行の保険証の有効期限が近づくと、左のような「資格確認書」が送られてくる。これをマイナ保険証の代わりに提示すれば、従来通りの保険診療を受けることができる。
「マイナ保険証を発行したものの『やっぱり解除したい』という人にも、解除後に資格確認書が送付されます。
高齢の両親やお子さんの対応が難しければ、当面、マイナ保険証を発行せず資格確認書を利用する手段はあります。
マイナ保険証を持っているものの認知症などで使用が難しい場合も、資格確認書が申請できます。資格確認書にも有効期限があるので更新は忘れずに行いましょう」

まだ間に合う!シニアにやさしい2大かんたん登録
パソコンやスマホを使って「マイナポータルアプリ」から登録する方法もあるが、“パソコン操作が苦手”という人もいるだろう。そんな人のためのラクラク登録法を紹介。

《1》医療機関・薬局の窓口で登録する
【1】医療機関や薬局の窓口にある顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置く。登録は初回のみ。その後は受診のたびに受付でマイナ保険証を提示する。

【2】本人確認を求められるので、顔認証を行うか、暗証番号(マイナンバーカード申請時に設定した4桁の数字)を入力する。
【3】過去の診療・お薬情報の提供など同意事項について確認する。
【4】マイナ保険証登録の申し込みに同意して完了。
《2》セブン銀行ATMで登録する
【1】セブン-イレブンに設置してあるATM画面の「各種お手続き」をタッチ。

【2】「マイナンバーカードの健康保険証利用の申込み」を選択し、利用規約に同意する。
【3】マイナンバーカードを入れる。
【4】本人確認のため、4桁の暗証番号を入力して申し込み完了。顔認証はできないので暗証番号は必須。また、セブン-イレブン以外のコンビニにあるATMでは登録できないので要注意。
◆教えてくれたのは:ファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さん
1978年、岡山県出身。26才のとき、貯金80万円しか持たずにマンションを衝動買い。慌ててお金の勉強を始めたことがきっかけでFPに。以来、生活者目線の情報やお金の話を発信している。
取材・文/北武司
※女性セブン2025年1月2・7日号