
日本でもっとも有名なプロ野球選手であり、レジェンドと称えられた長嶋茂雄さん(享年89)が6月3日、旅立った。引退試合での「巨人軍は永久に不滅です」の言葉通り、読売ジャイアンツ一筋だった野球人生では首位打者6回、ホームラン王2回、打点王5回といくつもの功績を残し、最優秀選手にも5回輝くなど「プレーでファンを魅了する」野球を体現。同時に、その親しみやすい人柄が多くの人に愛された。そこで人生を通じて、ミスターが愛し、素顔を見せた名店を紹介する。
長嶋さんが生まれ育った街で食した「そば」をピックアップ。長嶋さんが高校卒業まで過ごしたのが千葉県佐倉市。同級生との親交を大切に足しげく通ったという、青春時代の忘れられない味を辿る。
創業当時から変わらないかつおぶし香るつゆに、細めの手打ちそばが美味
いつもバットを担いで勝手口からこっそりと
千葉県佐倉市にある「川瀬屋」は天保元年創業で、約200年続く老舗。7代目店主である鈴木昌子さんの姉が、長嶋さんと中学校時代の同期生だった。

「姉の卒業アルバムには、長嶋さんからの『そばのように大きく伸びれ』というメッセージが書いてあったことを覚えています。“長嶋語録”は当時から健在でしたね(笑い)。
高校時代の長嶋さんはとにかくいつでもバットを持っていて、店に来るときも担いでいました。先生の目を気にしながら寄り道していたのか、勝手口からこっそり入って、そばを食べてまた勝手口から出ていってましたね。だいたいせいろか、かけを食べていました。大きな体とおおらかな性格で、みんなが長嶋さんのことを大好きでした」(昌子さん)。
「川瀬屋」のせいろ(620円)。鍋が見えなくなるほどたっぷりのかつおぶしを入れて作る濃いめのつけつゆは創業当時から変わらぬ味。
細めの手打ちそばはほどよい歯ごたえとつるりとしたのどごしで、えびと野菜がたっぷりのかき揚げはお土産で持ち帰る人も多いという人気メニュー。

店内にはミスターの写真やサインが貴重な学生時代の筆跡も!

「“ゆかりの店に置いてもらった方が、たくさんの人の目に触れるから”とお客さんや同級生のかたが寄贈してくれるんです」(昌子さん)


そばを食べながら、お客さんたちがそれぞれに長嶋さんの思い出話に花を咲かせているという。

「川瀬屋」
住所:千葉県佐倉市新町126
営業時間:平日11~14時、17~19時半、土日祝11~15時、17~19時半
定休日:月曜定休
旨みと甘みのバランスが絶妙なつゆはこだわりのかつおぶしを使った門外不出の味
ユーモラスな人柄がみんなから愛された
千葉県佐倉市にある「二番町 房州屋」は創業80年で、現在は3代目店主の村瀬照幸さんが切り盛りする。

「2代目だった父の照夫が長嶋さんと中学時代の同級生でした。互いを『シゲ』『テル』と呼び合って部活後には、高崎川を泳いだり、いも畑のいもを“拝借”したりわんぱくだったようです。一緒に過ごす仲で、店にそばを食べに来るというよりは、自宅に遊びに来たときに父が食べさせていたんじゃないかな。クラスにひとりはいる、茶目っ気があって憎めない、明るくユーモラスな性格だったそうです」(女将・村瀬真由美さん)
「二番町 房州屋」のかけそば(600円)には、まろやかな味わいのつゆがたっぷり注がれる。

「味は企業秘密です」(真由美さん)という自慢のつゆは、決め手となるかつおぶしを、千葉県の名勝・仁右衛門島の側にある問屋から欠かさず仕入れ、「つゆの味は変えてはいけない」という代々の教えを守っている。
もり(600円)も。昔よりもそば粉の割合を増やし、味わい豊かに。

夏季限定のうな重でスタミナチャージ
うな重 (2450円)は、ふっくらとした大きなうなぎが2枚のる。「お味見」として付く、そば碗のサービスがうれしい。

「わんぱく少年」だった当時の写真には面影も
店内には、あどけない表情が愛らしい中学生の頃の貴重な写真が。茶目っ気たっぷりな性格だったという。




「二番町 房州屋」
住所:千葉県佐倉市新町202
営業時間:平日11~14時半、17~19時、土日祝11~15時、17~19時
定休日:月曜定休
※女性セブン2025年8月14日号