短期集中対談「シーラホールディングス杉本宏之会長が女性トップランナーに聞く『未来の作り方』」第2回・後編
地方銀行として初の女性頭取に就任した高知銀行の河合祐子さんと、民事再生という危機を経験しながらも、経営者として再び立ち上がり、いまや企業を成功へと導いているシーラホールディングス代表取締役会長・杉本宏之さん。今回は杉本さんを聞き役として、経営トップとしての視点から、これからの地方創生や資産運用について語り合った。(前編から続く)
「人口減少」を悲観しない
杉本:日本全体が少子高齢化という大きな壁に直面し、東京一極集中が進み、地方では人口減少が深刻な問題になっています。河合さんが頭取を務める高知銀行が、高知を代表する銀行としてこれからの戦略をどうお考えなのかをお聞かせください。
河合:人口が減ると生活が不便になりがちであるという課題があることは間違いないんですが、「人口減少が地方の息の根を止めるほどの深刻な課題か」と問われると私はそうは思ってないんですね。要は、人口減少をどう解釈するかであって、その点において私の視点は一般的な見方と少し違うかもしれません。
杉本:大変興味深いですね。どんな視点かぜひうかがいたいです。
河合:例えばOECD加盟国の中で、1人あたりのGDPでトップにくるのはルクセンブルグです。ルクセンブルグはドイツ、フランス、ベルギーに隣接する内陸国ですが、人口は約65万人で実は高知県とほぼ同じなんです。そのことに気づいて世界銀行のデータで1人あたりのGDPランキングを作ってみたところ、アメリカは10位くらい。トップ10の残りはすべて人口が1000万人以下で、そのほとんどが欧州の国でした。
杉本:つまり「人口が多い」=「豊か」ではないということですね。確かに人口が減るからといって、経済成長できないとはならない。
河合:そうなんです。人口が少ないからといってこの世が終わるわけではないし、“小さい都市の強み”を生かすことができれば、人口が少なくても幸せになれます。海外駐在をしていたときに1人あたりGDPの高いルクセンブルグやアイルランドに実際に行って話を聞いて、人口が少ないことのメリットを自分なりに考えてみました。その経験が地方で働くきっかけになりましたね。日本の地方都市では、人口が少ないコミュニティーならではの良さを生かせる気がしたんです。
杉本:ご自身の足で稼がれて得た知見から選んだ道だったわけですね。高知という地に足を踏み入れたときのことは覚えていますか?
河合:もちろんです。私が10年ほど前に日銀の高知支店長に着任して高知に来たとき、心の底から“この土地の人々は、なんて豊かな暮らしをしているんだろう”と感じました。それと同時に、マスコミや世間の論調とのギャップに違和感を持ちました。人口が減少する地方都市を、ただ“消滅の危機”“限界集落”と煽っている。人口増加モデルで考える経済成長から意識を転換して、今後は人口減少モデルに合わせてビジネスやコミュニティーの形を変えていけばいいと考えています。
杉本:なるほど。日本でも「ルクセンブルグ型」の都市を目指せば、幸せに暮らせるということですね。
河合:人口は減少していても、江戸時代の人口まで減っているわけではありません。それに、江戸時代にも町や村があって、人々は幸せに暮らしていた。明治時代以降は都市化を前提とした成長モデルだったと思いますが、人口が少ないコミュニティーならではの良さは必ずあります。ルクセンブルグの国家戦略をそのまま真似するということではなく、小規模社会の良さを生かすヒントを得て、高知での実践を設計したいという感じです。
