
更年期に差しかかる頃から女性を悩ませる骨粗しょう症。骨の新陳代謝を正常に維持するうえで重要な役割を果たしている女性ホルモンが減少すると、骨密度が低下し、「骨やせ」がどんどん進行してしまう。そうならないために骨を強化する「骨活」の方法を教えます!
運動量が減って筋肉が硬くなる冬は「骨やせ」が加速しやすい
日本整形外科学会の調査では、10~3月の秋〜冬の期間は、4~9月に比べて「大腿骨付近の骨折」が約2割増加することがわかっている(下グラフ参照)。

その理由を「雪印メグミルク 骨太な未来プロジェクト」アドバイザーで整形外科専門医の矢吹有里さんが説明する。
「冬は日照時間が短いうえ、寒いからと外出を控えるために運動量が減り、体を動かさないので筋肉が硬くなります。さらに、路面の凍結や積雪などによる転倒事故や、こたつ布団や暖房器具のコード類などで転倒するリスクも高くなる。冬特有の室内環境が骨折リスクを高めてしまうのです。高齢者の転倒による骨折の割合は高く、骨粗しょう症が進み、わずかな衝撃でも折れてしまうほど骨がもろくなっていることが考えられます」

また、日本骨粗鬆症学会認定医の中山久德さんは、「冬は骨代謝に欠かせないビタミンDを体内で生成する量が減るため、『骨やせ』が加速しやすい」と語る。
「骨も新陳代謝をしているのですが、外出の機会が減るのに加え、外出しても防寒具で体を覆うなどして日光を浴びる時間が減ると、ビタミンDが作り出せなくなります。その結果、骨の新陳代謝のバランスが崩れ、骨密度の低下=骨やせが体全身に現れるのです。
骨密度の低下は女性であれば閉経後に、男性であれば50才を過ぎてから拍車がかかります。大腿骨骨折から寝たきりになり、認知症が進むケースもありますから、充分な注意と対策が必要です」(中山さん)
1本の骨が新しく入れ替わるには約3〜4か月かかる。骨やせを加速させないためにも、骨活を始めよう。
家でもできる!骨粗しょう症セルフチェック
骨やせが進む60代になると、背骨の圧迫骨折のリスクが増える。
「これは『いつの間にか骨折』とも呼ばれ、痛みを感じないことが多いのが特徴。レントゲンを撮って初めて指摘される人も多いのです。簡単にチェックするなら、壁に背中をつけて立ってみること。背中が曲がり、後頭部が壁につかない人は危険信号です」(中山さん・以下同)
若い頃に比べて身長が2cm以上低くなっている場合も圧迫骨折の可能性が高く、気がつかないうちに骨やせが進行している恐れがある。
「50才を過ぎたら自治体による骨粗しょう症検診や整形外科・内科・婦人科・代謝内分泌内科などを受診して、自分の骨の状態を把握するといいですね」
骨密度の低下は、すべての骨にまんべんなく起こる。
「顔にも骨やせは起こります。顔の骨はほかの部位よりも薄く、全身の骨の中でいちばん先に減り始めることがわかっています。骨やせして顔の筋肉を支えるじん帯が緩むと、表面の皮膚のたるみが目立つようになったり、眼球の入っているくぼみの骨(眼窩)が広がって目がくぼんだり、鼻腔が拡大してほうれい線が目立つようになるなど、見た目に変化が表れます(下イラスト参照)。なんとなく顔のたるみが気になるというときには、全身の骨密度が低下している可能性もあります」(矢吹さん)

後頭部が壁につかない
猫背などの姿勢の問題だけでなく、骨粗しょう症による脊椎圧迫骨折により、背骨が曲がっている可能性がある。
身長が2cm以上低くなった
痛みがなくても骨密度の低下により、背骨の圧迫骨折=いつの間にか骨折を発症している可能性が高い。

いますぐできる!骨を強くする!「骨やせ」対策
骨がスカスカになる骨やせを予防し、骨を強く丈夫にするにはどうすればよいのか。具体的な方法を教えます。
【生活】日光浴でビタミンDを生成

「骨を強くしたいなら、適度に日光を浴び、皮膚に紫外線を照射することが大切」と中山さんは言う。
「骨=カルシウムと考えがちですが、カルシウムに加え、骨を作るうえでカルシウムの吸収を促すビタミンDも大切です。これは日光(紫外線)を浴びることによって体内で生成される栄養素。食事から摂ることもできますが、皮膚からの方がより効率的に摂取できるといわれています」(中山さん・以下同)
紫外線が強い夏は、日焼け止めクリームを塗るなどの紫外線対策をしたうえで、手のひらを15分ほど日光に当てるだけで充分だが、日照時間が短く、紫外線も弱い冬は意識して日光を浴びる必要がある。
「冬の場合は1時間程度の日光浴が推奨されます。寒さ対策のために肌の露出をしたくなかったり、忙しくて時間がとれない場合は、起床後の数分間でいいのでベランダに出たり、手のひらを日光に当てましょう」
【運動】刺激を与えて骨を強化
骨を強くするには、運動も不可欠だ。
「骨は衝撃を与えられることで骨細胞が活性化され、強い骨に生まれ変わります。
私のイチオシは、軽いジャンプを繰り返す『なわとび運動』です。縄を使わないエアなわとびでもOK。そのほか、つま先立ちでかかとを上げた後にドスンと床に落とす『かかと落とし』や、軽いスクワットもおすすめです。いずれも全身の骨刺激に効果があるので、顔の骨やせ対策にもなります」(矢吹さん)
日々の生活の中では、階段の上り下りで骨を強化することができる。
「ドンドンと音を立てて、かかとから階段を下りるのも立派な運動です。見た目はあまりよくありませんが、階段以外でも音を立てて歩くようにすると骨を強化できます」(中山さん)
日常の動作でも骨は強化できる。無理のない範囲で続けることが重要だ。
かかと落とし

体がふらつく場合は、壁に手をついたり、椅子の背もたれなどを持つといい。座ったままでもOK。
【食事】たんぱく質+αでしっかり骨活
食事で骨活をする場合、カルシウムばかりを重点的に摂るだけでは不充分。骨作りに役立つ栄養をバランスよく摂ることが必要だ。
「丈夫な骨を作るためには、カルシウムとともに骨の土台となるたんぱく質の摂取が必須です。さらに、ビタミンDとマグネシウムにはカルシウムの吸収を助ける働き、ビタミンKはカルシウムを骨に沈着させる働きがあります。これらをバランスよく摂り、骨の健康へ先行投資する『骨投資』が大切です」(矢吹さん)
骨の再生や若返りのカギを握るとして、たんぱく質の「DEL-1」がいま世界中から注目されている。新潟大学大学院医歯学総合研究科研究教授の前川知樹さんが解説する。
「DEL-1は体内で作られますが、加齢によって減少し、70代以降はほぼゼロになります。近年の研究で、DEL-1が減少すると骨がもろくなり、折れやすくなることがわかってきました。1週間に5回、1時間のウオーキングでDEL-1が1.5倍に増えますが、アマニ油を毎日大さじ1杯摂ることでも同じような効果が得られることがわかっています。上で紹介している骨作りに役立つ5つの栄養素にアマニ油をプラスすることで、骨再生の効果アップが期待できます」
骨活に必須の5つの栄養素と主な食品
カルシウム:牛乳、ヨーグルト、小魚、豆腐など
ビタミンD:鮭、さんま、きのこ類など
たんぱく質:肉、魚、卵、大豆製品など
ビタミンK:納豆、小松菜、ほうれん草など
マグネシウム:海藻、アーモンド、ほうれん草など
5つの栄養素がすべて摂れる「卵ふわふわ味噌ミルクスープ」

「すべての細胞のもとになるたんぱく質が足りないと、強い骨は作れません。毎食ごとに15〜20gを目安にたんぱく質を摂ってください。植物性と動物性のたんぱく質を同時に摂るのも◎。卵ふわふわ味噌ミルクスープがイチオシです」(矢吹さん)
≪作り方≫
カルシウムたっぷりの厚揚げ、ビタミンDを含むまいたけ、ビタミンKとマグネシウムを含む小松菜をバターで炒め、牛乳とだしで煮て、みそで調味し、溶き卵を加える。
+クエン酸でカルシウムの吸収率アップ「さばの水煮 レモンおろし和え」

カルシウムは吸収率が悪い栄養素。その中で吸収率がいいとされる牛乳でも、含有量の半分ほどしか吸収できない。
「クエン酸はカルシウムのイオン化を促して吸収しやすくする作用を持っています。カルシウム食材にレモン果汁を加えると骨活料理になります」(中山さん)。
≪作り方≫
さばの水煮缶を汁ごと器にあけて粗くほぐし、大根おろし、しょうゆ、レモン果汁と和える。
+ビタミンKで骨の形成を促進「なんでもスプラウト添え」

ビタミンKには骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用がある。緑黄色野菜(特にブロッコリースプラウトなどの発芽直後の植物の新芽に多く含まれる)や納豆などに豊富。さまざまな料理に薬味としてトッピングしてみよう。
+オメガ3で骨の再生をサポート「納豆×卵×アマニ油」

卵には、ビタミンD以外の骨作りに必要な栄養素が豊富に含まれる。
「いつもの食事に生卵をプラスするだけでビタミンDと動物性たんぱく質が補完できます。さらにオメガ3を多く含むアマニ油を加えれば、骨の再生をサポートする注目のたんぱく質『DEL-1』を体内で増やせます」(前川さん)。
ガムを噛むことで顔の骨密度が上昇
「ガムを噛むことがあごの骨に与える影響」を調べた韓国の研究(※J Korea Dent Sci.2014,7(1):16-24)で、1日1時間ガム6gを左右の奥歯で均等に噛む実験を3か月続けたところ、あごがやや細くなり、咀嚼力が増加、上下のあごの骨密度が増加していることが明らかになっている。
◆整形外科医・矢吹有里さん
女性のための整形外科「ゆりクリニック」(東京都港区)院長。骨粗しょう症予防を美容医療の視点で考える骨美容®を提唱。雪印メグミルクによる「骨太な未来プロジェクト」アドバイザーも務める。
◆内科医・中山久德さん
そしがや大蔵クリニック(東京都世田谷区)院長。日本骨鬆症学会認定医。リウマチ内科医として、関節リウマチ・膠原病・骨粗しょう症の診療に従事。全身疾患の臨床経験を生かし体全般についても診察している。
◆歯学博士・前川知樹さん
新潟大学大学院医歯学総合研究科研究教授。日本歯周病学会認定医。専門は免疫学、骨代謝学で、DEL-1研究の先駆者。歯周病で溶けた骨の再生を目指し、原因菌の解析、治療法開発を行っている。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2026年2月5日号