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安藤優子さんが明かす、久米宏さんから学んだ「言葉以外の表現方法」 あえて語らない空間をつくることが視聴者とのコミュニケーションにつながる 

久米宏さんにかけられた言葉を語る安藤優子さん
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「面構えだぞ」。今年の元日に亡くなった久米宏さん(享年81)にかけられた言葉を、キャスター・ジャーナリストの安藤優子さん(67才)はいまも覚えている。 

「ニュースを伝えるには面構えが大事なんだと、事あるごとに言われました。一生忘れられない言葉です」(安藤さん・以下同) 

 久米さんの看板番組『ニュースステーション』(テレビ朝日系)に出演するようになった安藤さん。敬愛する久米さんは「ザ・生放送」の人だったと振り返る。 

「のちに出会った逸見政孝さん(享年48)が超真面目な『ザ・アナウンサー』だったのに対し、久米さんは予定調和が大嫌いで、豪放磊落(ごうほうらいらく)。何が起きるかわからない生放送で、入ってくる情報を的確に仕分けるのは至難の業ですが、久米さんは混乱すら情報の一部として包み隠さず見せるテクニックを持っていた。アナウンサーという枠組みを超越したかたでした」 

 キャスターには正しい言葉遣いが求められるが、安藤さんは門前の小僧として、久米さんから「言葉以外の表現方法」を学んだ。 

『ニュースステーション』の取材で、久米さんとともに米・アトランタのCNNのスタジオを訪れたことも(安藤さんのインスタグラムより)
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「久米さんは何か変だと思うことがあると、『え?』とか『ん?』と間を取って、“それ本当?”という雰囲気を醸し出します。それを見た視聴者は、久米さんが何に引っかかっているのかを知りたくて画面に引き込まれていく。いまのキャスターはニュースの間合いに気を配っていないように感じますが、久米さんは必ず前のニュースから1秒〜1.5秒ほど空けて次のニュースに移りました。その間があるだけで見ている方の気持ちの整理がつきます。 

 情報を伝えるときは言葉や事実をただ羅列するのではなく、あえて語らない空間をつくることが視聴者とコミュニケーションするうえでどれほど大事かを私は久米さんに教わりました」 

 現場に出て人と会い、話を聞くことが大好きな安藤さん。だが、「現場第一」だけではまだ足りないとも久米さんに教えられた。 

「久米さんと出会って、いくら現場に出て取材しても、それが視聴者に伝わらないとゼロなんだと考えるようになりました。心血を注いで取材した情報を伝えることに腐心するのも、取材と並ぶ大事な仕事だと思うようになり、仕事への取り組み方が変わりました」 

 テレビに出る人間には「陽」と「陰」があるが、伝え手は絶対に「陽」でないといけない——これも久米さんから学んだ教訓だ。 

「陰の人間が自分の中に閉じこもってすべてを排除するのに対し、陽の人間は何も拒絶しません。世の中には暗いニュースがあふれていますが、伝え手はそれらを拒絶してはいけないんです。ただニコニコ笑うのではなく、人間の業や欲、嫌らしさや汚さにいたるまで、愛嬌を持って人を愛するのが陽の人間です。 

 実際には陰の人間だったとしても、内心がどれほどつらくても、テレビに出る人間である限り陽の人間でなくてはダメなんだと、久米さんに耳にタコができるまで言われました。だから私もテレビの中では陽であることを心がけるようになりました。 

 まだまだ久米さんには遠く及ばないのが、悔しくも励みでもあります」 

※女性セブン2026年4月16・23日号

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