
血管や骨の若々しさを維持し、肌の潤いを保つなど、美にも心身の健康にも大きな影響を与える「女性ホルモン」。しかし、加齢による減少や乱れは心身の不調を招く。
女性ホルモンが減少すると、筋肉量の減少や骨密度低下のリスクが高まる。「それを補うには、運動と食習慣の見直しが大切です」と語るのは、セラピストの鈴木まりさんだ。「女性ホルモンのゆらぎに悩む女性は、不調やストレスをがまんするあまり、無意識に体にグッと力が入り、こわばっていることが多い。ホルモンバランスを整えるには、激しい運動より、リラックスできて体もほぐれるストレッチがおすすめです」(鈴木さん)。毎日の簡単なストレッチで、健やかな未来を叶えよう。
ストレッチ
女性ホルモンの分泌を促し、女性ホルモン減少による体の不調を改善する「ジョホレッチ」でしなやかな体をつくろう。
*床に座る運動は、椅子に座っても、立って行ってもOKです。
肩こり・冷えに効く、風門(ふうもん)ジョホレッチ
「肩こりがつらい人は、血行が悪く、体が冷えやすい。冷えは体調不良の原因となります。このジョホレッチは『風邪(病気のもと)』が侵入する『風門』というツボを開閉し、体を温めます。朝一番で行うと体が動きやすくなります」(鈴木さん・以下同)

風門は背中の上部、肩甲骨の間にあるツボ。冷えを強く感じるときは、風門にドライヤーの熱を10秒ほど当てたり(体に近づけすぎない)、入浴時に42℃程度のシャワーを当てると効果的。
1:鼻から息を吸いながら肩甲骨を寄せ、胸を開く

楽な姿勢で座り、両腕を曲げ、手のひらを前に向けて開く。この姿勢で息をゆっくりと吸いながら肩甲骨をぐっと寄せて胸を開く。「肩や腕に力を入れず、肩甲骨だけを動かす意識で」。
2:息を吐きながら両腕を閉じ、背中を小さく丸める

おへそをのぞき込むように、背中を丸めていく。1〜2を自分の心地いいペースでゆったりと行い、1分以上繰り返す。
だるさ・むくみに効く、足の経絡(けいらく)押し
「体のだるさやむくみの原因は水分の代謝が低下するため。ふくらはぎの中心ラインを貫く『経絡(気や血、水分の通り道)』を刺激すると、下半身の冷えやむくみの解消に。足のつけ根から足首まで、中心部を押します」
開脚し、伸ばした足の太ももを両手でつかみ、足首まで加圧して流すイメージで押していく

左足を斜め前に伸ばし、右足裏を左足の太ももにつけるように曲げる。両手で足をつかんだら、つけ根から足首に向け、表も裏も均等にギューッと流すように押していく。1分以上行ったら反対の足も同様に行う。ひざは軽く曲がってもOK。
親指で足の表側を、残り4本の指で足の裏側をしっかりつかむ。
ぽっこりお腹に効く、足回し
「やせている人でも、体幹が弱いと内臓が下垂し、ぽっこりお腹の原因に。腹筋を鍛えると体幹が安定し内臓も活性化します。便秘のかたにもおすすめ。呼吸を止めず、肩の力を抜いて行いましょう」
1:仰向けに寝て下腹部の上に両手を置き、足を曲げて鼻から息を吸う

足先はクロスさせ、曲げた足をできるだけ胸に近づけるように引き寄せると、腹筋を鍛える効果が高まる。
2:お腹に力を入れ、口から息を吐きながらゆっくりと足を右方向に大きく一周回す

顔と上体を動かさず、下腹部に置いた手を固定し、腹筋を使って足を右に回していく。ゆっくり行うほど効果が上がる。右回し、左回しを3回ずつ行う。

少々キツいが、足が下に来たら床から浮かせて伸ばすと効果抜群! 2が難しい人は、1の「胸に太ももを近づける」状態を、数秒維持することから始めよう。
イライラ・うつうつに効く、肝経(かんけい)伸ばし
「足裏から足の内側を通り、生殖器を経て脇に至る『肝経』は、自律神経にかかわる経絡。負の感情がたまりやすい人は脇が詰まって痛くなることが多いので、伸ばしてスッキリさせましょう」
手を真上に伸ばし、口から息を吐きながら上体を左側に傾けて右脇を伸ばし、深呼吸。

1分以上行ったら反対側も同様に(伸ばし続けても、何回か繰り返してもどちらでもOK)。
冒頭で触れた通り、女性ホルモンを整える近道は「リラックス」と鈴木さんは説明する。
「ホルモン分泌が乱れていると内臓の働きが悪くなり、自律神経も乱れて凝りやむくみ、ストレス過多の『交感神経優位』の状態に傾いていきます。
ホルモンバランスを整えるために運動は大切ですが、この状態で筋トレやキツい運動に励んでも、かえってストレスがたまるだけ。優先すべきは交感神経を鎮め、副交感神経を優位にすることです」(鈴木さん・以下同)
ジョホレッチは、東洋医学の考え方を取り入れ、ホルモンバランスや自律神経を整えるもの。
「東洋医学では、気(生命エネルギー)、血(血液や栄養)、水(体液)が滞りなく体を巡ることが健康とされます。凝りやむくみを取り、気血水の通りをよくすることでホルモンの分泌も整い、心身も安定するのです」
「ながら時間」でこまめに行い、不調をため込まないクセをつけよう。
眠りの浅さ・不眠に効く、クールダウンのお尻ゆらし
「ただお尻をゆらすだけの運動で、全身の力を抜くことができます。何も考えず、ただ〝ゆれ〟に意識を置くと『こんなに力が入っていたんだな』と気づくはず。就寝前に行えば、そのまま心地よい眠りに導いてくれるでしょう」
うつ伏せの状態で、お尻だけを左右にゆらゆらとゆらす

上半身、下半身とも完全にリラックスし、お尻だけに意識を向けてゆっくりと1分以上、または「力が抜けた〜」と感じるまでゆらす。
女性ホルモンの活性化には“潤い”がマスト!フェムケア実践でお顔も潤う!
「エストロゲンが減少すると肌の乾燥が進みます。水分摂取や保湿を心がけている人は多くても、忘れがちなのがデリケートゾーンの『フェムケア』です。
女性ホルモンが減少すると膣内外の潤いも失われ、萎縮や炎症が起こります。『もう関係ないわ』と思うなかれ。フェムケアを行っているシニアとそうでないシニアを比べると、お肌の瑞々しさが各段に違います。お風呂上がりのボディーケアのついでに、外陰部への保湿も忘れずに。専用クリームもありますし、ワセリンでもOK」(鈴木さん)
90分に1回は脱力する習慣を

「忙しくてストレッチもできない」というときは、立って少し脱力するだけでもリラックス効果はあるという。
「更年期世代で頑張っている多くの女性は、首、肩、背中がガチガチに凝り固まり、呼吸が浅い。姿勢を正そうとますます肩に力が入っている人も。
座っている時間が長いときは、トイレやお茶をいれるついでに『肩をギューッと上げてストンと落とす』(写真上)緊張と緩和の動きや、『上半身を軸に、でんでん太鼓のように腕を揺らす』(写真下)動きで体をゆるめましょう。このとき、顔の力もゆるめながら息をふーっと吐くと、より脱力できます」
◆教えてくれたのは:ジョホレッチスタジオ主宰・鈴木まりさん

セラピスト、心理カウンセラー、女性ホルモンを整えるストレッチ「ジョホレッチ」開発者。アーユルヴェーダや中医学にも精通し、心身両面でのケアを行う。著書に『更年期で人生を好転させる 体と心のセルフマネジメント』(Gakken)ほか。
取材・文/佐藤有栄、山下和恵 撮影/浅野剛
※女性セブン2026年11月12・19日号