韓国コスメブームから始まり、いま美容通たちが最も注目する「アジアンコスメ」。パッケージのかわいさと品質のよさ、お手頃感が人気の秘訣だ。その中でも、コロナ禍と相まって評判となった「タイコスメ」が、韓国コスメをしのぐほどのブームになる予感──。
アジアンコスメがブームに
韓国語で「美少女」を意味する「オルチャン」メイクが、10代の女の子を中心に大流行したのがおよそ6年前。韓国への旅行客から火がついた「韓国コスメ」はすっかり日本のコスメ市場に定着し、世界でも「K-Beauty」と呼ばれて、K-POPや韓流ドラマとともにブームとなっている。
この韓国コスメブームを追いかけるように、昨年から人気が過熱しているのが「中国コスメ」だ。中国系の美女をイメージした「チャイボーグ」と呼ばれるメイクを、ユーチューバーや国内の美容雑誌がこぞって取り上げている。韓国の「オルチャン」はナチュラルなかわいらしさが特徴だったのに対し、「チャイボーグ」はサイボーグのように作りこまれた美しさが特徴となっている。化粧品そのものも、中国コスメはとことんゴージャスで宝箱のようなパッケージが持ち味だ。
◆タイ発「シーチャン」に注目集まる
そうした韓国や中国の化粧品が中心となり、日本ではいま空前の「アジアンコスメ」ブームが起こっている。
昨年9月に全国のロフトで開催された「コスメフェスティバル」でも、アジアンコスメコーナーは大盛況。その中でも、ひときわ注目されたのが、タイ発の「シーチャン」というコスメブランドだ。シーチャンの輸入販売を行う「日本機能性コスメ研究所」広報・上田愛香さんが話す。
「昨年6月に上陸したばかりですが、9月までに年間売上目標を220%達成するという大反響でした。シーチャンは1948年に創業された老舗ブランドで、看板商品であるフェイスパウダーはタイ本国でも年間150万個以上売れている大人気アイテムです。タイ旅行で見かけたかたもいるでしょう」
タイコスメはどこがいいのか?
タイコスメが日本でこれほど大ヒットしたきっかけは、タイへ旅行に行く女性の増加やSNSの影響が大きい。それを、コロナ禍による“新しい生活様式”が後押しした。海外コスメの輸入販売も行っているコスメショップFAYONを手がける美容ライターの空山菜摘さんが言う。
◆日本のコスメとの違い
「タイへ行ったとき、日本にいるときと同じ化粧品でメイクしていたら、高温多湿の環境でドロドロに崩れてしまった経験があるのですが、現地のコスメは安いのにとても崩れにくくて驚きました。
タイコスメはカラーバリエーションが豊富で、ラメが華やかなものや、まつげがバサバサになるマスカラなどメイクアップ系のアイテムが多く、仕上がりは日本のプチプラコスメよりきれいな印象です。日本で買えるコスメはナチュラル志向なものが多いため、派手なメイクを試したい人はタイコスメがおすすめです。
一方、パウダーは素肌感があり、粒子が細かくて皮脂をしっかりおさえてくれるので、マスクで蒸れてもメイクが崩れないところがコロナ禍のいまはうれしいですね」
◆ナチュラルな成分でつくられる化粧品がほとんど
海外の化粧品は成分が不安だからと、敬遠している人も少なくないだろう。しかし、日差しが強く、刺激の強い料理を食べる習慣があるタイでは肌荒れに悩む人が多く、さらに伝統医学であるアーユルヴェーダの理念が根づいていることから、合成香料などを使用せずナチュラルな成分でつくられている化粧品がほとんどだ。実際、空山さんもタイコスメを使って肌荒れしたことはないという。
前出の上田さんが話す。
「『質がいいのに安い』を実現できる背景には、タイが化粧品の原料の産地であることも大きい。また、タイの平均月収は約11万円と日本の3分の1程度です。クオリティーが高く、かつ値段は安くしなければ売れないという事情もあります。現在、日本で正規に販売されているタイコスメは2ブランドのみですが、2021年は新しい大型ブランドも加わり、市場が拡大する予定です」
老若男女がメイクに気を配る国民性
今年7月、同性間でのパートナーシップ法が成立し、台湾に次いでアジアで2国目の同性婚承認国になったタイにはニューハーフの男性も多い。整形が日本とは違ってオープンなので、「整形大国」とも呼ばれる。
◆タイと韓国は美意識の高さが似ている
「タイと韓国は美意識の高さが似ている」と話すのは、タイの文化を日本に発信するタイ音楽ブロガー「タイ人になりたいよしだ」さんだ。
「米タイム誌の『今年の人』候補にも選ばれているK–POPグループ、BLACKPINKのリサはタイ出身で、地元のスーパースターです。若者たちが彼女をリスペクトしていることもあり、韓国の音楽やファッションは日本以上に人気がある。タイの人々が考える“美”の基準は、韓国がベースになっているといっても大げさではありません」(よしださん・以下同)
それを表すように、タイの首都バンコクでは韓国の繁華街に匹敵するほど化粧品が豊富に売られている。
「コンビニの広さはタイも日本も変わりませんが、化粧品コーナーはタイの方が2倍以上広い。100円程度でさまざまな種類のお試し用化粧品が売られていて、美容マニアではない私も、ついあれこれ試してしまいます。汗をかいてもサラサラだし、肌にも優しいし、タイコスメに慣れると日本のコスメの方がケミカルに感じてしまいます」
◆コロナの影響で海外ブランドが次々に流入
普段から質のいい化粧品に慣れ親しんでいるタイ人には、高級なデパートコスメだから喜ぶといった発想があまりないといわれる。日本より貧富の差が大きいという社会的な側面もあり、メイクアップしているのは中間層以上の人たちに多く、化粧をしない人ももちろんいるが、美容好きな人たちの知識やこだわりは、日本の美容好きな人たちよりレベルが高い。
歯列矯正をして、歯を美しく整えている人が日本より圧倒的に多いところも特徴の1つだ。若い人も年配者も、男性も女性もきれいになるためにメイクをし、外見に気を使う。そういった国民性もタイコスメが進化した理由の1つかもしれない。
「海外のコスメは、旅行した人のSNSを通じて注目されることが多かったのですが、いまはコロナで海外へ行けない。そのため、国内に新しい海外ブランドが次々に流入していて、通販サイトもすごく増えています。来年以降、タイコスメブームも加速するのではないでしょうか」(空山さん)
気になったあなたは一度使ってみては。
おすすめのタイコスメ3種
そんなタイコスメからおすすめの3種類を紹介しよう。
◆シーチャン トランスルーセントパウダー(4.5g)
タイでいちばん売れているフェイスパウダー。細かい粒子がしっかり皮脂を吸着しながら、肌の透明感を引き出してくれる。990円/コスメラボ
◆シーチャン グローイングパウダー(5g)
細かなラメやパールでツヤのある肌に。デコルテやボディーにも使える。1980円(12月6日より予約開始。1000個限定)/コスメラボ
◆ビューティーコテージ ビクトリアン ロマンス メモリーオブラブ ミニ オードパルファン
パッケージも魅力的な香水。1980円/コスメラボ
※女性セブン2020年12月17日号
https://josei7.com/
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