日々節約に励んでいるつもりなのに、一向に余裕ができない。それはなぜなのか。『攻めの節約』(WAVE出版)の著者で生活コスト削減コンサルタントの生方正(うぶかた・ただし)さんに分析してもらいます。
生方さんは、高校卒業後に海上自衛隊に入隊。節約をしながら株式投資や不動産投資などを行い、40代で退職した際には2億円もの資産を築き上げていました。そんな“資産構築のプロ”が指南する節約術とは?
家の中に不要品があることで出費が増える?
生方さんは、家の中にある不要なものを処分することで節約がうまくいくと言います。なぜでしょうか。詳しく話をうかがいました。まず、家の中に不要品はどれほど眠っているのでしょうか。
「ある研究所の調査によると、1世帯あたりの『部屋の中にある不要品を処分すると28万円になる』というデータがあります。中古で売って28万円ということは、元の買い値は最低でも数倍から10倍以上。つまり、ざっくりと300万円を浪費してきたことになります」(生方さん・以下同)
“無駄のスパイラル”が発生することも
これほどの大金を浪費してきたのだと思うとゾッとしますね。さらに、不要品が家の中にあるだけで、どんどんお金が飛んでいくと言います。
「住む家の規模にもよりますが、不要品に囲まれていると、部屋がどんどん圧迫され、生活しづらくなります。やがて部屋の収納スペースが足りなくなり、新たに数千円、あるいは数万円をかけて収納グッズを買ったり、場合によっては月数万円ものレンタル倉庫を契約したり、より広い家へと引っ越しするかたもいます」
収納グッズの出費が一時的に増えるだけでなく、毎月の固定費まで数万円飛ぶとは、不要品はまさに家の中の金食い虫。さらに、時間までむさぼり食います。
「家の中にものがあふれていると、何がどこにいったか分からなくなり、探す時間も増えます。揚げ句の果てには、すでに所有しているものを再び購入するという無駄のスパイラルまで発生させます」
整理整頓することで無駄遣いのループが断ち切れる
そこで、生方さんは、整理整頓を行い不要品を処分することをすすめています。
「一度徹底的に整理整頓をすると、部屋をきれいにすることの大変さに気づき、無駄なものを増やすことに抵抗感が生まれます。すると、自然と無駄遣いが減ります。
こうしてお金の使い方に気を配れるようになると、毎月の貯蓄額にも目が向けられるようになります。支出にも敏感になり、やりくりに頭が回るようになります。そして、『これを買ったら収納場所がなくなるからやめておこう』『収納グッズを買う前に、不要品を減らせばいい』『そうだ、中古売買アプリで売ろう』など、無駄遣い防止の好循環が生まれます」
「捨てる」ことで家事効率化などのメリットも
探し物の時間が減ることも、大きなメリットです。
「不要なものを捨て、すっきりと片付いた空間で生活すると家事の効率が高まるうえ、探し物によるイライラや、家族への小言も減ります。さらには、ストレス解消の無駄遣いがなくなります。ものを探す時間が減れば、自由に使える時間が増え、その時間でお金の勉強をしたり家計を見直したりすることもできます。まさにいいこと尽くしです」
「時間とお金を節約できる」かどうかで所有するものを選ぶ
資産2億円を築いた生方さんの場合、ミニマリストまではいかなくとも、できる限り不要品を手放してシンプルライフを送っているといいます。
「とはいえ、多くのミニマリストのようにお部屋をすっきりさせることを優先しているわけではなく、自分の時間やお金を節約することを基準に、所有するものを選んでいます。例えば、小銭、文房具、切手、便箋、レターパックなど、それがないことで作業が滞るものは常に在庫を切らさないようにしています。
また、歯ブラシ、せっけん、マスク、食器洗剤、トイレットペーパーなど、生活必需品は1~2年分ストックしておき、在庫が1年分を切ったら、セールの時に1年分以上を買い足します。大量の在庫は、トイレや廊下などのデッドスペースに設置した突っ張り棚に、使用ローテーションを配慮して保管しています」
災害時やコロナ禍などにも対応できる
不要なものを増やさない代わりに、必ず使う生活必需品は、供給がストップしても困らないよう、一定量のストックを持っておくこともポイント。
この考え方は、長期間、生活必需品や食料を補充できない南極で仕事をしたことで身についたそう。
「災害時やコロナ禍では、感染リスクがあってもトイレットペーパーや食品を求める人がお店に殺到します。在庫僅少のときは、割引価格ではなく定価や高い価格で買うことになるので、時間とお金を失うことになります」
時は金なり。時間の節約まで考えてものを買うことが、億万長者への第一歩のようです。
◆教えてくれたのは:生活コスト削減コンサルタント・生方正さん
明治大学サービス創新研究所研究員。高校卒業後に海上自衛隊に入隊。勤務の傍ら節約術を駆使しながら、国内株式、金の現物買い、在日米軍に対する不動産投資などを行い、40代で自衛隊を退職した際には2億円もの資産を築いていた。現在は生活コスト削減コンサルタントとして、メディアで活躍中。著書に、『高卒自衛官が実現した40代で資産2億円をつくる方法』(あさ出版)、『攻めの節約』(WAVE出版)など。